そろそろ決着?
「こんなところに居たのね!」
「あら、マリアナ様。反省室から出てくることが出来ましたのね」
「それよ! よくもこのあたしをあんなところに入れたわね! どういうつもりなの!」
「わたくしが入れたわけではありませんわよ」
昼食時、食後のお茶を楽しんでいると、マリアナ様がいきなり来て騒ぎだす。
はあ、マリアナ様が反省室にいる間は平和そのものだったのに、もう出てくるなんて残念でならない。
うるさくしてくる対象が居なかったおかげで、テスト勉強も問題なくでき、成績も上位五位に入ることが出来た。
何気に驚いたのは、ナティコト様が首位だったという事だ。
確かに成績がいいという設定にはしていたが、まさか首位を取るとは思わなかった。
本人に聞いたところ、無駄に勉強した結果だと言っていたが、無駄にとはどういう意味だろうか?
ちなみに二年の首位はシルバーン様、三年の首位はゼシュティア様だった。
シルバーン様は元々が成績トップという設定があるのだが、ゼシュティア様に関しては他人を信用できないと言う欠点から、ペアで挑むテストで成績が低いと言うことで首位にはなれないはずなのだが、他の科目で挽回したという事なのだろうか?
ともあれ、わたくしが知っている乙女ゲームの設定とは少しずつ変わってきている。
いい事だ。
「とりあえず、男爵令嬢如きがわたくし達が居るような上座の席に気軽に来ないでいただいてもよろしいですか? 品位に関わってきますわ」
「今は悪役令嬢とかどうでもいいのよ! せっかくのイベントも台無しにしてくれて、どういうつもりかって聞いてるの! この役立たず女!」
はあ、相手をするのも面倒だな。
様子見で学園から追い出すことはしないでおいてあげているけど、このまま絡まれ続けるのでは、わたくしの精神的疲労が心配だ。
貴族として、今後意味の分からない嫌味を言われてしまう事もあるだろうが、マリアナ様の場合ベクトルが違うから余計に疲れてしまう。
「マリアナ様がおっしゃっていることは、あいにくわたくしは少しも理解できませんが、わたくしに何かしらの責任を押し付けたいのでしたら、ちゃんと覚悟はできておりますのよね?」
「はあ?」
「悪役令嬢、でしたか? 字面だけを見ると、主人公に敵対する役柄のようですが、わたくしはマリアナ様に敵対しているのですか? ただの男爵令嬢如きに、このわたくしが?」
「なによ」
「馬鹿らしい、と言っておりますの。わたくしが本気を出せば、マリアナ様をこの学園から追い出す事等造作も無い事だとお判りにはなりませんの?」
「ヒロインであるあたしに対してそんなことが出来ると思ってるの!?」
「出来るに決まっていますでしょう。わたくしは公爵令嬢、対してマリアナ様は問題行動ばかり起こすような男爵令嬢なのですもの。処分する事等簡単ですのよ」
「なんですって!」
「それをしないのは、わたくしの恩情だといいますのに……。あまりにもわたくしに対して今のような態度が続くようなら、本当に退学処分にさせますわよ」
「ヒロインであるあたしを脅す気? 役立たずのお助けキャラの分際で!」
「脅し? これは脅しではなくて忠告でしてよ?」
「このっ」
わたくしにつかみかかろうとしてきたマリアナ様の手が、わたくしに届く直前で掴まれて動きを止める。
「君、いい加減にしてくれるかな」
「雑魚はひっこんでなさいよ!」
「婚約者であるメレディスに手を出されかけて黙っているような、そんな軟弱ものじゃないのでね。君は貴族になりたてという事を考えても、あまりにも酷すぎる。僕の方からも学園に訴えてもいいんだよ」
「はあ? 雑魚が何ほざいてるわけ?」
「メレディスの家より序列は下がるとはいえ、僕だって公爵子息、男爵令嬢の一人を闇に葬るぐらいいつだってできるんだよ」
「なによ、あんたまで脅す気? ほんっとにクソね!」
マリアナ様は掴まれていた腕を振りほどくと、腰に手を当てて胸を張る。
「いい、あたしがその気になったらあんた達なんてリセットなのよ」
「リセット?」
「そうよ。消えたくなかったらあたしの機嫌を損ねないことね」
いや、元の乙女ゲームもそんな機能はないが?
アプリ開始当初にリセマラもなかったし、本当にマリアナ様は何を言っているのだろうか。
意味が分からなさ過ぎて黙ったわたくし達に気をよくしたのか、マリアナ様は「わかればいいのよ」と言う。
いや、何一つわからないのだが、どうしようか。
「何一つわかりませんが、これ以上今の行いが続くようでしたら、また反省室に入っていただくようになりますわよ」
「だから、あんた如きがあたしを脅すなって言ってるの!」
マリアナ様がそう大きく声を上げた瞬間、マリアナ様の背後に立った人物がマリアナ様の肩を押して床に叩きつけた。
「なにすんのって、ゼシュティア様!?」
「食堂で騒ぐな、煩わしい。それに、公爵令嬢であるメレディスに対して、その態度は許しがたいものがある。私からも正式に学園に改めて抗議をさせてもらう」
「な、なにを言ってるんですか。えっと、あたしはその、そう、メレディス様に虐めを受けてたんです!」
「ほう?」
「あたしは何もしてないのに、悪口を言いまくって、あたしを反省室に入れたんですよ! 濡れ衣もいいところですよね」
マリアナ様の言葉にゼシュティア様はため息を吐き出すと、すっと片腕を上げる。
そうすると、どこからともなく警備員が現れ、すぐさまマリアナ様を拘束していく。
「ちょっと、なにすんのよ! ゼシュティア様、助けてください!」
「私の目の前から居なくなってもらおうか」
パチン、とゼシュティア様が指を鳴らすと、警備員はマリアナ様を食堂から連れ出して行ってしまう。
「面倒なものにまとわりつかれているようだな」
「そうですわね、助けてくださってありがとうございます」
「メレディスの為ならこのぐらいどうということはないが、あの娘、本当に退学にさせなくていいのか?」
「そうですわねえ、それも候補の一つに入れるべきなのかもしれませんわね」
「その時は声をかけろ、協力は惜しまない」
「ありがとうございます」
「私も周囲をウロチョロされて、いい加減鬱陶しいと思っている所だからな」
「そうですか」
他の攻略対象にも同じように思われていそうだな。




