精霊との出会い3
学園に帰ったわたくし達は、とりあえずわたくしの扇子の状態とわたくしの状態を確認するために、召喚魔法の講師の所に出向く。
講師はわたくしを見て、軽く目を見開くと、わたくしが差し出した扇子を見て大きく目を開いてから、「はあ」と深くため息を吐き出した。
「メレディス様に、フェニックスと湖の乙女が憑いている」
「……憑いているのですか」
せめて寄り添っているとか、そういう表現にしてもらいたかったが、そうか、憑いて、いるのか。
「これは、召喚魔法の契約書になっているな。メレディス様はまだ召喚魔法を習っていないし、下手に召喚するのは危険だろう」
「そうですわね」
「夏季休暇後のカリキュラムには少々早いが召喚魔法の講義を受けるようにしたほうがいいな」
「そういたしますわ」
返してもらった扇子の模様を撫でて「ふぅ」と息を吐き出すと、扇子がふわりと光り、その光がふよふよと漂って二つの塊を作り出した。
「せ、先生?」
「正式な召喚魔法を発動したわけではないようだが、これは……」
全員で警戒しながら見つめていると、光は人型を形成していく。
じっと見つめていると、幼い子供のようなサイズになり、じわじわと光が収まっていき、その中から裸の少女が二人現れる。
「まぁ!」
咄嗟に布を空間圧縮魔法から取り出して二人の体に巻き付ける。
『ん? おお、すまぬなぬしどの。今すぐに衣類を纏うぞ』
『もうしわけありません、あるじさま。わたくしもすぐに衣類を用意いたしますわ』
二人はそう言うと再び光に包まれ、その光が消えたころには七歳ほどの女の子と十歳ほどの女の子がそれぞれ茜色と藍色のメイド服に体を包んでいた。
「茜色の服の子がフェニックス、藍色の服の子が湖の乙女、だろうな」
『いかにも。私はフェニックスが一羽、フュリーじゃ』
『わたしは湖の乙女が一人、ヴィリアですわ』
「それが正式な姿ではないだろうが、中途半端な契約……と言うわけではなさそうだし、なぜその姿に?」
『鳥の姿でもよいが、それだとぬしどのの傍にいて世話を焼くのに不便じゃろ』
『そうですわね、ただ、完璧な姿で現れてしまいますと周囲を混乱させてしまいますので、このような姿にしましたわ』
「世話って、わたくしのお世話ですか? その、お二人にはメイドの仕事のようなことが出来るのですか?」
わたくしの質問に、「もちろん」と二人は自慢気に答えてくる。
高位の精霊なのに人の世話が出来るって、ものすごく違和感がしてしまうが、本人達は自信満々と言うか、当たり前と言うような顔をしている。
しかし、本当にできると言うのなら、わたくし的にはとても助かる。
「先生、一応お聞きしますが、メイドの随行が禁止されていますが、精霊がメイドに扮することは禁止されているのでしょうか?」
「いや、そんな事はない、というか、前例がなくて考えられたことがない。学園長に一応報告しておこう」
召喚魔法の講師はそう言ってパチンと指を鳴らすと、鳥を召喚してその口に飴玉のようなものを咥えさせると、窓を開けて飛び立たせた。
今のが正しい召喚魔法なのだろう。
「それにしても、まさか入学早々にこんな高位の精霊を二体も捕まえる生徒が出るとは思わなかったな。精霊との契約ではなく、召喚獣としての契約だからな、メレディス様には個別に講義した方がいいのだろうか?」
「一応、夏季休暇後からカリキュラムには入れるつもりですが、そうですわね、時間を見て講義を受けるのはいいかもしれませんわね」
普通は精霊との契約は常時傍に居て力を貸してくれると言うような契約らしいのだが、わたくしの契約は召喚獣としてのものに近いらしく、ちゃんと学ばずに召喚したら大変なことになってしまうかもしれない。
ただでさえ、息一つでこんな形で顕現させてしまったのだし、今後も注意が必要だろう。
寮の方にも精霊であることを教えておかなければいけないし、何かと面倒なことになったな。
『ぬしどの、私達が邪魔なのであれば、大人しく姿を隠しておくぞ』
『そうですね、あるじさまにご迷惑をかけることは、契約を結んだ召喚獣としてよくありませんわ』
「いえ、大丈夫ですわ、……多分」
少々不安ではあるが、まあ、なんとかなるだろう。
人間のメイドを連れ込むわけではないのだし、校則を破ると言うわけでもあるまい。
最終的には学園長の判断を仰ぐことになるだろうが、それまでは少なくとも、誰かに何かを言われることもあるまい。
そのまま召喚魔法の講師の所でお茶をして学園長の返事を待っていると、先ほどとは違うものを咥えた鳥が帰って来た。
講師がそれを受け取って内容を確認してから、わたくしの方を見ると、「問題はないそうだ」とだけ言ってくる。
それにしても、まさかわたくしが活動初日からこんなことになるとは思わなかった。
この日はそのまま寮に帰り、寮長のフリッカ様に学園長の許可が出ていることと、今後わたくしの部屋に住まわせることを伝えておいた。
驚いたようなフリッカ様だったが、学園長の許可が出ているのならと頷いてくれた。
部屋に戻ると、二人は早速部屋の中を物色し始め、わたくしに使い方や、使ってもいいものなどを尋ねてくる。
夕食までそれを続けていると、不意にフュリーが『夕食の時間じゃ』と言ったので、二人を連れて食堂に行く。
食堂に居る全員が二人を見て驚いたような顔をしたが、フリッカ様がこの二人がわたくしと契約した精霊だと説明してくれた。
「そんなの反則じゃない! 何シナリオにない事してんのよ!」
一部批判はあったが、学園長も認めているという事から、一部を除き受け入れられた。
わたくしが授業を受けている間などは、召喚されない限り部屋の掃除などをしてくれているらしい。
夕食が終わって部屋に戻って、部屋着に着替えると、ヴィリアがお茶を淹れてくれる。
お茶なんて淹れることが出来るのかと感心して飲むと、思いのほか美味しく、今後はずっとお願いしようかと思ってしまったほどだ。
感心しながらお茶を飲んでいると、ドンドンとドアが叩かれて、思わず眉間にしわが寄ってしまう。
こんなことをする礼儀知らずは間違いなくマリアナ様だろう。




