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精霊との出会い1

 精霊愛好会の新入生歓迎会は、購買などで食事を買って、精霊が居るであろう場所の散策を行うというものであった。

 料理部の歓迎会はまだなので、わたくしも購買で食べ物と飲み物を購入して参加している。

 到着した場所は、精霊がいるかもしれないと言うだけのことはあり、静かで神聖な空気に満ちているような感じがする。


「ここに精霊が居ますの?」

「かもしれない、というところです」

「そちらの精霊を捕まえた場所とは違うという事ですわね」

「ええ」


 説明を受けながら周囲を散策していく。

 小動物が木で休んでいたり、湖の畔で水を飲んでいたりと、なんともファンタジーチックな光景が広がっている。

 先輩が精霊にこの辺に精霊が居るかと尋ねると、『いる』という事なので、ちゃんと探せば出会えるのかもしれないが、こういった場所を知ることが出来ただけでもかなり満足してしまう。

 今年の新入部員は、わたくしを含めて三人で、それぞれ伯爵家の子息と令嬢だ。

 お茶会で何度か見かけたことがある、と言うぐらいの知り合いではあるが、全く知らない人でなくて内心安心した。

 湖の畔で水の中に手袋を外した手を差し入れれば、ひんやりとした感覚に、思わず目を瞬かせてしまった。


「素敵な所ですわね」


 そう呟いてふと頭上を見上げると、大樹と言ってもいいような木の枝に金色っぽい光が見えたので目を凝らしてみる。

 よくよく見てみるとそれは鳥で、金色の羽に尾羽に行くにつれてだんだん朱色になっていくと言う不思議な色合いをした鳥だった。


「あちらの鳥は初めて見ますわ」

「鳥ですか?」

「ええ、ほら、あそこの木の枝に」


 わたくしが指をさした方向を皆が見るけれど、なぜか首を傾げられてしまった。

 他の枝や葉が邪魔をして見えていないのだろうか。


「場所を変わりましょうか?」

「いえ、そこまっ!?」


 先輩の声が不自然な所で途切れ、目が見開かれてわたくしの頭上に視線が固定される。

 何かと思って振り返って僅かに視線を上げて、わたくしは声こそ出さなかったが、驚きで目を開いてしまう。

 そこには先ほど見た鳥が思ったよりも大きな羽を広げてわたくしを見降ろしていた。

 近くで見てみると、頭にも飾り羽が付いていて、その下にはまるで王冠のような模様がある。


「……お、どろきましたわ」

「メレディス様、危険ですっ、下がってください!」

「ええ」


 美しい外見をしているけれど、わたくしに何をしてくるかわからない以上、こんなに近距離に居ることが得策とは思えないので、金色の鳥から距離を取ろうとすると、羽を動かしていないのに、すぅっとわたくしについてくるように鳥が移動する。


「この鳥は、もしかして『精霊』でしょうか?」

「そのようです」


 先輩方が緊張したように、自分が捕まえた精霊に確認して頷いている。

 精霊となると、こちらに友好的であると限らないので、こくりと口の中の唾を飲みこんで金色の鳥を見つめる。

 よく見てみるとその瞳は金色の中に炎の揺らめきのような朱色があって、ゆらゆらと揺れているようにすら錯覚してしまう。


「わたくしに何か御用でしょうか?」


 とりあえず友好的に話しかけてみるが、反応はなく、変わらずわたくしをじっと見つめられているだけだ。

 敵対の意思はなさそうだが、精霊と言うものの実態がわたくしにはまだよくわからないので下手な事は出来ない。


「えっと、この場合どうしたらいいのでしょうか?」


 そう言って先輩を振り返ると、先輩の捕まえている精霊が、怯えていると言うか畏服しているように金色の鳥を見ている。

 どうなっているのだろうと思うと、視線の先に金色の鳥が回り込んできた。


「わたくしに何か御用でしょうか?」


 首を傾げて問いかけると、金色の鳥は大きく羽ばたいて高く飛び上がってしまった。


「なんだったのでしょう?」

「わかりませんが、メレディス様に何もなくてよかったです」

「そうですわね」

「おれ達の精霊がこんなに畏怖してるっていう事は、高位の精霊だったと思いますが、何がしたかったのかわかりませんね」

「敵対はしていなかったようですよ」

「そうですか、わたくしも視線を交わしただけですので、何をしたかったのかはわかりませんわね」


 首を傾げて、金色の鳥が飛び去って行った方を見たが、今の所は戻ってくる気配はなさそうだ。

 先輩方は自分の精霊を宥めるのに忙しそうだ。

 いきなり精霊を捕まえられるとは思っていないので、今日は本当に精霊を見ることが出来ればいいかな、ぐらいの気持ちで来ていたのだが、精霊とは思いもよらない行動をとる存在のようだ。


「とりあえず、少し休憩にしよう」


 会長の言葉にそれぞれが頷いてピクニックシートを取り出すと地面に敷いてその上に座る。


「えっと、ちょっとハプニングもあったけど、とりあえず、新人さんを歓迎して、まったりしようか」


 会長の言葉にそれぞれ飲み物や食べ物を空間圧縮魔法を操作して取り出すと、言われたようにのんびりと口にしていく。

 先輩方の精霊は何とか落ち着きを取り戻したようで、それぞれの持ち主の近くでふわふわと浮かんでいる。

 それにしても、先ほどの金色の鳥はなんだったのだろうか。

 そう考えていると、頭の上からばさばさと何かが落ちて来て、咄嗟に防御魔法を発動させようとしたが、その瞬間目の前に先ほどの金色の鳥が現れて動きが止まってしまう。


「メレディス様っ」


 愛好会のメンバーが慌てたように立ち上がって、それぞれ魔法発動の際に使用する道具をかまえるが、金色の鳥はそれを気にした様子も無く、わたくしの事をじっと見てきている。

 ばらばらと落ちてきたのはどうやら花のようで、わたくしの周辺には美しい花々が散らばっている。

 害はなさそうだけれど、どういう意図があるのだろうか?

 スカートの上にも落ちている花を一輪手に取ると、わたくしの目の前に居る金色の鳥がばさりとその大きな羽を動かす。


『契約は成立した』

「はい?」


 張り詰めた空気の中に響き渡った声とも音とも判別できないものに、思わず首を傾げてしまう。


『私はフェニックスが一羽。花を捧げた乙女を守ろう』

「はい!?」


 わたくしが驚いていると、金色の鳥がわたくしに向かって飛び込んでくるかと思い、ぶつかる、と目を閉じると、ぶつかる事はなく、ほんわかと体が温かくなって目を開くと金色の鳥の姿が消えていた。


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