部活動勧誘大会5
結局、精霊愛好会と料理部に届け出を出してそれぞれの活動メモを貰い、スケジュール調整をしていく。
精霊愛好会はまずは自分の精霊を捕まえることを目的としているのか、しばらくの間は郊外で散策をしながら精霊を探すようだ。
料理部は基本毎日誰かが学舎の調理室で料理を作っているそうなのだが、今度新人歓迎会があるそうなので、参加しなくてはいけない。
もし精霊愛好会と被ったらどうしようかと思ったが、確認した限りでは大丈夫なようだ。
寮の夕食の席では、どんな部活がよかっただの、どの部活に所属することにしたという話で盛り上がっている。
これまで同室もしくは同学年、そうでなければ親しい友人と並んで食べていた構図が、部活動が関係して来たのか、僅かに並びが変わっているのも面白い。
まあ、わたくしの場合下手に席を変えると、周囲が気を使ってしまうので変えられないのだけど。
「メレディス様は料理部と精霊愛好会に入部したのですね」
「ええ。そういえば料理をしたい場合は、寮の厨房を借りることは出来るのでしょうか?」
「そうですわね、可能だと思います」
「そうでしたか」
「けれども、料理部の方々は料理をなさる際は、学舎の調理室で行っているようですよ」
「あら、そうでしたの」
やはり、寮の厨房を借りると邪魔になってしまうからだろうか?
先輩方がそう言うスタンスを取っているのなら、わたくしが無理に厨房を借りるのも申し訳ないような気がしてしまう。
まあ、料理の授業などないのに調理室なんてものがあるのは、料理部の為だろうし、活用しないのも悪いか。
調理室を実際に見たことはないけれど、紹介映像では清潔でありながらも、調理器具や材料がこれでもかと揃っている魅力的なものだった。
前世では長い間一人暮らしだったこともあり、料理の知識がないわけではない。
ただ、スキンケアの手がおぼつかないように、前世の記憶があっても体が追いつかないという現象もある。
寮には食堂があるし、学舎にも食堂があるので、料理の勉強は入寮前にしてこなかったので、今のわたくしの料理の腕がどれほどのものなのかはわからない。
夕食を食べながら、そんな事を考えていると、下座の方が急に賑やかになった。
何事かと視線を向けると、マリアナ様が周囲の人に自慢気に何かを語っているようだ。
注意して耳を傾けていると、どうやら攻略対象の所属している部活から勧誘を受けて困ってしまって、何かあったら手伝うという約束をしているという事を自慢しているようだ。
それにしても、マリアナ様の行動は既に全校生徒に広まっていると思うのだが、彼女を勧誘などするだろうか?
わたくしならまずしないが、これも世界の強制力?
「物好きな部がありますわね」
「彼女の思い込みですよ」
「そうなのですか?」
「正確には、どの部や同好会・愛好会からも入部を拒否されて、何かあったら声をかけると口約束を何とか取り付けた、というものです」
「それが真実なのでしたら、随分と都合のいい思い込みですわね」
わたくしが発言したことを、悪役令嬢の発言、と思い込んだのと同じようなものだろうか。
そういえば、わたくしが悪役令嬢、ねえ。
マリアナ様を喜ばせるつもりはないけれど、思い込みが激しい人なのだから、わたくしが何を言っても行っても、『悪役令嬢の行動』だと言われる気がする。
それなら、逆にわたくしが進んで悪役令嬢になってみるのはどうだろうか?
家の権力を使って、マリアナ様を学園から追い出すのが手っ取り早いのだが、その場合わたくしの知らない場所でどんな世界の強制力が働くかわからないし、しばらくは経過観察を兼ねて学園に残しておくのもいいかもしれない。
それにしても悪役令嬢って、具体的には何をすればいいのだろうか。
ヒロインを虐めるのが普通だが、本当に虐めてしまえばわたくしの評価が傷ついてしまうかもしれない。
男爵令嬢を虐めた事が悪い、ではなく、男爵令嬢如きに構っているのが悪い、という悪評だ。
つまり、わたくしから絡みに行くことは得策ではない。
まあ、放っておいても向こうから絡んでくる可能性が高いだろう。
つまり、多少きつく当たっていれば、向こうが勝手に勘違いをして、勝手にわたくしの事を悪役令嬢に仕立て上げてくれるのではないだろうか?
もちろん、わたくしからは立場をわきまえない男爵令嬢に絡まれて迷惑していると適度に周囲にこぼしておかなければいけない。
ふむ、その線引きはなかなか難しい、というか面倒だが、わたくしの生活を円滑に進めるために必要ならば、やぶさかではないかもしれない。
何よりも怖いのが世界の強制力だ。
どこでどう動くかわかったものじゃないのだから、パターンがわかるまで観察をすべきだろう。
流石に、わたくしを悪役令嬢だと言いふらしたぐらいで、ミッシェル様がマリアナ様を殺すとか、攻略対象達が妙な風に歪んでマリアナ様を殺すとかは、無いと思うのだが、絶対にないとは言い切れない。
まったく、マリアナ様がせめて転生者でなければこんな厄介なことにならなかったというのに、世界はわたくしに優しくない。




