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部活動勧誘大会3

 春の暖かな陽気の中、庭園はどこかワクワクした空気を出している新入生と、そんな新入生を己の部活動に勧誘しようとしている生徒で賑わっている。

 各所にテーブルが設置され、先輩方は魔法で自分の部活紹介の映像を流したり、実際に披露したりして少しでも興味を持ってもらおうと忙しい。


「まあ! これが『精霊』ですの?」

「はい、俺の捕まえた精霊は下位のもので力も弱いのですが、この子が言うにはこの学園の周囲には高位の精霊もいるらしいので、新入生を歓迎する宴はぜひともその高位の精霊と会えればと思っています」

「素敵ですわね」


 目の前でクルクルとダンスを踊る濃い紫のような、青色の髪と目を持った薄い羽根の生えた精霊に見入っていると、精霊愛好会の先輩が気をよくしたのか、精霊に指示を出して数匹の精霊で輪になってダンスを踊らせ始める。


「なんて可愛らしいのでしょう!」


 乙女ゲームでは出てこなかった『精霊』に思わず目を輝かせてしまう。

 精霊というよりは『妖精』に近いような気もするが、これはこれで可愛らしいのでいいだろう。


「メレディス様のような魔力の持ち主は精霊に好かれると思いますよ」

「そうなのですか? 確かに魔法の訓練は幼いころからしておりますが、魔力の質については学園に入ってから学ぼうと思っておりますのよ」

「良ければ、今ここで魔力の質の測定をしますか?」

「そのようなことが出来るのですか?」

「ええ、簡易版ではありますが判定器があります」

「そうですわね、ではお願いしてみますわ」


 わたくしがそう言うと、先輩が机の下から鏡のような魔法具を取り出す。


「では、この鏡面に素手で触れてみてください」

「わかりましたわ」


 左手の手袋を外して人差し指を鏡面に触れさせると、鏡面が波打ち始める。

 ほわほわと光が零れ始めて、光の渦が出来上がっていき、虹色に鏡面が輝くと、先輩が「ほう」と感嘆の息を吐き出した。


「特に突出した属性がない、というか、バランスよく全属性に適合しているようです。この模様ですと、そうですね、中でも召喚系と相性がよさそうですね」

「召喚系ですか、伝書鳥のような変化系ではないのですね?」

「そうですね」

「まだ習ったことの無いカテゴリーですわね」

「二年生から正式に始まる授業になりますね。しかし、適性がある生徒は事前に習うことが出来ますよ」

「そうなのですか。けれども、夏季休暇前までの授業はもう組んでしまっておりますわね」

「よければ俺達が教えますよ」

「あら……」


 下心は……なさそうだ。

 これは善意からくる申し出のようだけれども、実際に召喚系の魔法を操るとなると、召喚する何かしらとの契約が必要になる為、生徒だけで教えると言うのは危険が伴うかもしれない。


「お申し出はありがたいのですが、講師がいないところで召喚魔法を習うのは流石に躊躇われてしまいますので、ご遠慮いたしますわ」

「そうですか? まあ、無理にとは言いませんよ」


 あっさりと引く態度は悪くない。

 ここにきている部員で全員と言うわけではないだろうが、愛好会の雰囲気が悪いという事も無さそうだ。

 何よりも精霊が可愛い。

 やはり可愛いは正義という事なのだろうか。


「もう一回りしてきますわね」

「はい、お戻りをお待ちしております」


 そう言って精霊愛好会のスペースの前を離れると、他の部活や同好会・愛好会のスペースを眺めていく。

 どこも趣向を凝らした勧誘をしていて、見ているだけで楽しいので、毎年行ってもいいのではないだろうか。

 こうしてみると、人気のある所と無いところの差がはっきりする。

 予算分配の事を考えるのにも役に立ちそうだし、うん、やはり来年以降も実施するよう提案してみよう。

 庭園内を回っていると、所々で黄色い悲鳴(雄叫び?)も聞こえてくるが、デモンストレーションか映像に興奮しているのかもしれない。

 一応スカウトを受けて、いいかもしれないと思った所にはチェックをつけているので、そこを中心に見て行く。

 申し訳ないが、攻略対象の所属している部活動は初めから除外しているので、そちらのスペースには近づかないでいる。

 やはり王子方が所属している所は人気があるようで、人だかりも出来ているし、そもそも入る気がないのなら近づかないでおくのが正解だろう。


「ごきげんよう」

「メレディス様! ようこそおいで下さいました!」


 チェックしていたスペースに顔を出せば、どこも手放しに歓迎してくれる。


「こちらに並べられているお菓子は料理部で作ったものなのですか?」

「はい、お召し上がりになりますか?」

「そうですわね、では一つ失礼しますわ」


 そういってメレンゲの焼き菓子を一つつまんで食べると、何か違和感を覚えて、手にした菓子をしげしげと見る。

 メレンゲ菓子の中から、王冠を模した陶器の玩具が出て来た。

 これは……フェーブ?

 しげしげと眺めていると、わたくしの動きを不思議に思ったのか、先輩がわたくしの手元にある菓子を見て、ぱぁ、と顔を明るくして笑う。


「おめでとうございます! 実は今日用意したお菓子の中にはいくつかフェーブを紛れ込ませていたんですよ」

「そうだったのですか、知らなかったので驚きましたわ」

「メレディス様にはきっといい事が訪れますよ」

「そうだといいですわね」


 ちょっとしたおまじないのようなものだけれど、やはり当たるとなると嬉しいものがある。

 料理部は料理を覚えたらミッシェル様に振舞えるのではないかと思ってチェックを入れていたが、活動内容によっては掛け持ちもいいかもしれない。


「あ、メレディス~」

「まあ、ナティコト様。どうなさいましたの?」

「見て回ってるところ。今の所、映画同好会がいいかなぁって思ってるんだけど、すぐに決めちゃうのはもったいないしね」

「そうでしたか」

「それにしても、美味しそうなもの持ってるね」

「ナティコト様もお召し上がりになって見てはいかがですか?」

「そうする~。一個貰うね」


 ナティコト様はそう言うと焼き菓子に手を伸ばして食べ始める。

 こっそりと自分のメレンゲ菓子からフェーブを取り出して制服のポケットにしまうと、わたくしも続きを食べつつ、ナティコト様の反応を見るが、最後までなんの違和感もなくぺろりと食べてしまったあたり、フェーブは入っていなかったようだ。


「ん~、おいしい。こういう美味しいお菓子を食べながらまったりするのもいいね」

「料理部はお菓子を食べる部活ではなく、作る部活でしてよ」

「あはは、それじゃあボクの専門外だねぇ」


 ナティコト様はそう言って笑うと次の所を見てくると言って行ってしまう。

 うーん、相変わらず自由な人だ。

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