入学式パーティー11(マリアナ視点)
「だから、あたしの邪魔をしないでって言ってるでしょ!」
「私は同室として、貴女の暴走に巻き込まれてるの。これ以上迷惑をかけないで欲しいだけよ」
「同室だっていうなら、少しはあたしの役に立ちなさいよ。ただのモブキャラが生意気なのよ!」
「本当に、貴女のその考え方はどうにかならないの? 物語に夢見る少女の年齢じゃないでしょう。いきなり貴族になって浮かれてるのかもしれないけど、身分ってものをわきまえなさいよ、私達は所詮男爵令嬢なのよ」
「ふんっ、あんたはそうかもしれないけど、あたしはヒロインなのよ。出来が違うの」
「貴女がそんな考えだから、私まで他の令嬢に避けられるんじゃないの」
入学式パーティー会場を出たところで同室のモブ女につかまって、廊下の隅に連れ込まれてぐちぐち文句を言われている。
ったく、折角ハマってる『デュオスカーラ・アンダーワールド』の世界に転生出来たっていうのに、ことごとくうまくいかないじゃない。
そもそも学園が身分制度でがんじがらめになってるってなによ、そこからしてシナリオと違うじゃないの。
あたしは攻略Wikiも読みこんで、キャラの好感度上げの選択肢も、ミニゲームのコツもしっかりつかんでるっていうのに、これじゃ話が違い過ぎるじゃない。
同室相手もあのお助けキャラじゃないし、そのせいでプロローグ編はうまくいかなかったし、碌な目に合ってないわ。
選択肢が出て正解の答えを言っても拒絶されるし、どうなってるのよ。
何もかも、あたしの思い通りに動かないあのお助けキャラが悪いんだわ、あたしが折角部屋まで行ってやったっていうのに、中に入れないし、声をかけてもそっけない態度を取ってくるし、挙句の果てにはあたしを差し置いて攻略対象と仲良くしてるし、どういうことなのよ。
あのお助けキャラは、婚約者を二の次にしてあたしの為に尽くすはずなのに、どうなってるのよ。
入学式前にお茶会をするなんてイベントなかったし、なに勝手にイベント作ってるわけ?
しかもあたしのことを誘わないなんて、本当に役に立たないわね。
身分制度だか何だか知らないけど、ヒロインのあたしが目立たないなんて、おかしいでしょう。
何のための乙女ゲームだと思ってるわけ?
いったいあたしがどれだけのお金を『デュオスカーラ・アンダーワールド』につぎ込んだと思ってるの?
親のカード使って大金つぎ込んだんだから、転生してもちょっとは還元しなさいよ。
まあ、カードの使い込みが親にばれて取り上げられちゃったけど、番号は控えてたから問題なかったのよね。
それなのにこんな状況とか、まじないわ……。
なにが身分制度よ、そんなものがあったら乙女ゲームの邪魔にしかならないじゃない。
攻略対象の態度も乙女ゲームとは比べ物にならないぐらいに塩だし、これじゃ、転生した意味がないじゃない。
「とにかく、もうこれ以上問題を起こすんだったら、部屋替えを寮長に申し込むわよ!」
「勝手にすればいいじゃない。こっちだって役立たずの同室なんて要らないのよ」
「……あっそ、じゃあ早速言ってくるわ」
そういって離れて行くモブ女の背中を見送って、あたしは舌打ちをする。
どいつもこいつも、役に立たない。
ヒロインであるあたしの為に、むしろ土下座をしてお手伝いさせてくださいっていうのが普通でしょ。
「男爵令嬢がそこでなにをしているのかしら?」
「あんただれよ」
「三年生よ。伯爵家の娘だから貴女と顔を合わせるのは初めてだけれど、噂は聞いているわ。貴女、有名人ですもの」
「え、あたしって有名人なの?」
「もちろん悪い意味で、ですわよ」
「は?」
「メレディス様への無礼な態度だけではなく、上級生への敬意のない態度、挙句の果てにほとんどの寮生が貴女より序列が上だというのに、まるで自分の方が偉いと言うような態度、有名にならない方がおかしいですわ」
「あら、なにをして……、って、貴女、まだ入学式パーティーに参加していらっしゃったの? 警備員に連行されて行ったのではなかったでした?」
「またモブ女が増えたの? いい加減にして欲しいわ」
「モブ? 貴女は何様のつもりなのかしら?」
「お二人とも、その人はご自分の身分をわかっていないのですわよ。平民から貴族になれたことで舞い上がっているんじゃないのかしら?」
「なんなんですか、上級生、よね? 下級生を虐めて楽しんでるの? 性格悪すぎ」
「あら、そのように思われるのですか。それでしたら私達はご遠慮しましょう」
「そうですわね。何を騒がれるかわかったものではありませんものね」
「私達は会場に戻りましょう。今日はアルフォンス様とゼシュティア様、シルバーン様がまだ会場に残っているようですし、ダンスのお相手をしていただけるかもしれませんもの」
そう言って離れて行くモブ女達にあたしは舌打ちをする。
今の、利用したらよかったわ。
メレディスがお助けキャラとして役に立たないなら、あたしなりのシナリオを作り上げればいいのよ。
『デュオスカーラ・アンダーワールド』にはライバルや悪役令嬢は登場しないけど、作り出すのは簡単よね。
大丈夫よ、正義はヒロインであるあたしにあるんだから、もう失敗なんてしないわ。
そうよね、あたしが異世界転生なんてしちゃってるぐらいだし、ちょっと乙女ゲームと設定が変わってるのかもしれないわ。
だったら、あたしがあたしの思うように設定を付け加えてもいいわよね。
あたしは優しいから、役立たずなあのお助けキャラにも、活躍の場面を用意してあげるわ。
お助けキャラ改め悪役令嬢。
いいじゃない、ふふ、なんだか楽しくなってきちゃった。




