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入学式パーティー10(ベリランブル視点)

 何の面白みもない入学式パーティーを抜け出して、庭園に行くと、そこにはミッシェルとメレディスが居た。

 メレディスは庭園のような花が咲く場所が好きだから、ミッシェルがここに連れてきてもおかしくはないだろう。

 目の前でいちゃついているのを見るのは気に入らないし、ミッシェルから飛ばされてくる殺気も面倒くさい。

 別に、ミッシェルからメレディスを取ろうなんて思ってないし、そんな無駄な事をしてメレディスに嫌われたくない。

 庭園からそっと出て行って、寮に戻る為に歩いていると、我の周りをウロチョロしている男爵令嬢が見えた。


「あ、ベリランブル様!」


 我を見つけて嬉しそうに駆け寄って来て、グイっと手を引こうとするからそれを避ける。


「なに」

「何で避けるんですか? 一緒に庭園に行きましょうよ」

「なんで?」

「ベリランブル様、庭園お好きでしょう? よくいますよね」

「そうでもない」

「またまた、知ってるんですからね」

「あっそ」


 確かに庭園にはよく行く。

 でもそれはメレディスが居るからだ。

 単独で居れば一緒に居ることが出来るし、ミッシェルが居たら大人しく引き返せばいい。

 今はミッシェルと一緒に居るから、庭園に引き返すつもりはない。


「お前と庭園に行くつもりはない」


 そう言って男爵令嬢の横を通り過ぎようとしたら、ガシっと腕を掴まれたので、思わず反射的に掴んできた腕をひねりあげてしまう。


「いたっいたい!」

「……ああ、お前か」

「何するんですか! こんなことしていいと思ってるんですか!?」

「手を出してきたお前が悪い」


 捻りあげていた手を離して、そのままその場を立ち去る。

 背後で喚く声が聞こえたが、我には関係がないだろう。

 そのまま寮の自室に戻ると、制服の上着を脱いでソファーの上に放り投げると、その反対側のソファーに座る。


「はあ、くっだらない」


 メレディスが学園に通うことになるからって、結構期待していたのに、蓋を開けてみればあの婚約者にべったりじゃないか。


「せっかくメレディスの為に、肌にいいっていう香油を作ったのに、結局まだ渡せてないし……」


 あの婚約者の前で渡したところで、拒否されるのは想像できる。

 メレディスはあの婚約者の事を、本当に大切にしているからな。

 どこがいいんだか。


「はあ」


 ため息が止まらない。

 メレディスの周りにはあの婚約者がいるし、わけのわからない男爵令嬢には絡まれるし、予想していたものとは違ってるな。

 それにしても、さっきの男爵令嬢は何がしたいんだろう?

 我の事を理解できるとか、自分も母親を亡くしたばかりだとか、我とは関係ない。

 身内から刺客をさし向けられての事故なんて、あの男爵令嬢にはわからない感覚だろう。

 この国に来て、メレディスの変わらなさを見て、どれだけ我が救われたのか、メレディスにはわかっていないだろう。

 アルフォンスにとってもメレディスは特別な存在のようだが、兄弟で一人の女を奪い合う気力なんてない。

 そもそも、メレディスは手に入らない女だ。


「はあ……」


 メレディスに、あの婚約者は、ミッシェルは危険だといつ伝えたらいいのだろう。

 あれは狂気を含んでいる。

 敏いメレディスが気が付いていないとは思いたくないが、恋は盲目とも言いうし、もし知らないようなら教えておくのが血縁としての優しさだろう。

 今は何ともないが、何をきっかけに狂気が爆発するかわかったものじゃない。

 もしその狂気がメレディスに向いてしまったら、我はメレディスに憎まれてもあの婚約者を始末する。

 うん、泣かれてもメレディスを失うぐらいならそっちの方がいい。

 この国に来て、メレディスにもう一度会えて嬉しいし、失いたくないと思ってる。

 我の物にはどうなってもならないし、なって失うのは嫌だからしたくない。

 メレディスに対して恋愛感情を抱いているのかと聞かれれば、答えは否だ。

 アルフォンスもそうだが、この国の王子の誰一人として、メレディスにそう言う感情は持っていないだろう。

 しかし、大切な存在だ。

 そこの所をメレディスはきちんと線引きしていると思う。

 なんでその才能を生かして、もっとこの国の為に動こうとしないんだろう?

 あの婚約者に全てを捧げているなんていう馬鹿げたことを言われそうで聞く気もないけど、メレディスを嫁に行かせないで国政に関わらせた方が余程メリットがありそうだ。

 まあ、この国にはこの国の考えがあるんだろうし、隣国の王子でしかない我が口を出す事じゃないだろう。

 さて、夕食までまだ時間があるし、何をしたものだろうな。

 予習をしてもいいが、我の方が成績が上だと知るとアルフォンスがうるさいだろうし、適当に手を抜かなければいけないと言うのも億劫だ。

 我を御輿に担いで王座を狙わせようとしている派閥がある事は知っているが、我自身には王座を狙う気はさらさらない。

 アルフォンスもその事には気が付いているだろうが、我の背後が気になると言った所か。

 確かに、アルフォンスに何度も刺客を差し向けるような家だ、気にならない方がおかしい。

 昔、「母親に守られてばかりのくせに」、とアルフォンスに言われたが、全くその通りだったな。

 一部では、我の母上が邪魔で、アルフォンス勢力が刺客を差し向けたように見せかけて、本当はこちらの身内が暗殺を企てたのではないかと言う話も出ている。

 どいつもこいつも、面倒くさい事が好きなようで結構だが、我を巻き込まないで欲しいものだ。


「そういえば、あの男爵令嬢は何をもってして我の心を癒せると言っているのだろうな」


 同じ母親を亡くしたもの同士、傷の舐め合いでもしろと言うのだろうか?

 そうだとしたら、ぞっとするな。

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