表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/45

入学式パーティー8(ナティコト視点)

「メレディスが居なくてつまんないから、ボクはもうバイバーイ」


 そう言って、入学式パーティーが行われている講堂を出ていく。

 目的地なんてないけど、多分メレディスはミッシェルと一緒に、庭園かな? その辺に居るだろうし、近づくのは危険だよね。

 ミッシェルは大人しそうに見えるけど、根本的な所はボクと同じだと思っている。

 今はメレディスが居るからそれが表面化していないだけで、大切な物を失うぐらいなら、すぐに狂気に走る、そんな同類の気配がする。

 あのすました顔を崩すのはちょっと楽しいかもしれないけど、その狂気が向く対象がわからないから、下手に手出しは出来ないよね。

 メレディスに傷をつけられたら困るし。


『わたくしはミッシェル様だけを愛しておりますの。だから、ナティコト様を愛するという事はありませんわ。でも、こうして一緒に笑い合う事も、傍に居ることも出来ますわよ』


 かつて、メレディスがボクがペットを殺す現場に遭遇した時に言った言葉だ。

 メイドも侍従も、ボクがペットを殺す事に慣れてしまって何も言わなくなっていたけれど、流石にメレディスは何か言うと思ったけど、言われた言葉にボクは目を見開いて驚いてしまった。

 ボクを愛してくれない存在に価値を見出すことなんて、無駄だと思っているけど、メレディスは別だ。

 どんなことをしたって、メレディスはボクを愛してはくれないけれど、だからこそ離れて行くこともないと言ってくれる。

 へんなの、と思ったけど、慣れてしまえば、そんな距離感が心地いい。

 ボクにもメレディスのように、ボクだけをずっと愛してくれる存在が現れないかな。

 動物は、かわいいけどすぐに弱ったり死んじゃったり、逃げ出そうとするからだめだよね。

 ちょっとしたことじゃ傷つかない、そんな可愛くて面白くて、ボクの事だけを愛してくれる存在、現れてくれないかな。

 メレディスはそんな存在が欲しいと言うボクに、それは今のボクと変わるという事と同意義だと言っていた。

 どういう意味なのかな?

 そんな事を考えていると、警備員に連行されたはずの礼儀知らずの男爵令嬢の姿が見えて、ボクはそっと身を隠す。

 自分ならボクの心の闇を取り除けるとか、救ってあげることが出来るとか、そんな事を言われたような気がするけど、余計なお世話だよね。

 今のボクの何がいけないっていうのかな?

 確かに、最初の頃は侍従もメイドも、ボクがペットを殺すのを止めようとしていたけど、今ではすっかり静観している。

 メレディスだって、ボクがペットを殺すことを否定したことはない。

 ボクが愛したのに、ボクから離れて行こうとする方が悪いんだよ。

 あの男爵令嬢にはそれがわからないんだろうな。


『殺すのが好きというのなら、お付き合いを考え直しますが、そうではないのでしょう? なら、構いませんわ。わたくしには実害はありませんもの』


 そうだよね。

 ボクは別に殺す事が好きなわけじゃない。

 失うのが怖いだけだよ。

 学園に来る時、飼っていたペットを全員殺してきた。

 だって、ボクが居ない間に、ボク以外の者に懐いたら、いやじゃないか。

 ボクが一番愛してあげていたんだから、あの子達だってボクに殺されてよかったはずだ。

 ボクに気が付かずに通り過ぎていく男爵令嬢を見送って、隠れていた場所から出る。


「あの子は、違うな」


 ぼそりと無意識に呟く。

 向こうはボクを救えるだとか言っているけど、そんなもの出来るわけがないと確信できる。

 ボクだって王族だ。

 取り繕って接近してくる人間を山のように見てきている。

 見極めるぐらいの能力はある。

 あの男爵令嬢は、そういった取り繕った人間だ。

 興味があるのはボクじゃない。

 それがボクの外見なのか、それとも地位なのかは知らないけど、どちらにせよ、王位継承権争いから離れているボクに何かを期待されても困る。

 一応、まだ王太子は決定していないけど、ゼシュティア兄様がなるだろうって皆思ってるし、実際そうなると思う。

 ダンバート兄様はあの体だし、ボクはそもそも王位に興味がない。

 さらに下の弟達がどう考えているのかは知らないけど、ゼシュティア兄様に逆らわない方が身のためだろう。

 ボクを見てくる視線に含まれるものは、いつだって殺意があるような人だ。

 ゼシュティア兄様は、身内を簡単に殺そうとする。

 どれもこれも、自分の地位を確実にするための物だというのだから、すごいエネルギーだと思う。

 国王になりたいなんて、酔狂だとも思う。

 なんで自ら面倒くさい事を引き受けようとしているんだろう?

 自己顕示欲?

 でも、ゼシュティア兄様の場合、それには当てはまらないような気がする。

 ならどうして?

 そんなもの、考えたってわからないけど、わかりたいとも思わないけど、なんとなくメレディスはわかっているような気がする。

 メレディスはそういう子だ。

 ボク達から明確に線引きしているくせに、ピンポイントでボク達の心を撫でていく。

 ミッシェルの事を愛しているくせに、ボク達のことなんて全く愛していないくせに、それなのにメレディスは優しい。

 その優しさが、メレディスを傷つけなければいいと思う。

 ……あーあ、もう面倒くさいなぁ。

 部屋に帰って、昼寝をして、夕食を食べて、明日からの学生生活の事でも考えよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ