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入学式パーティー3

「いい加減にしていただけますか、マリアナ様。ここにあなたが居ることが迷惑だと皆様思っていらっしゃいますのよ。その事も察することが出来ないなんて、本当に平民も通う学園に転校なさった方がよろしいのではありませんか? そのほうが学費も低くなるのではありません? 伯爵家の方ならともかく、男爵家のレッドバージャ家が裕福だとは聞いたことがありませんもの」

「なっ、馬鹿にしてるの!?」

「何か間違ったことを言いましたかしら?」

「このあたしを馬鹿にして、ただのお助けキャラの分際でっ!」

「そもそも、このわたくしがどうしてマリアナ様のお助けキャラとやらにならないといけませんの? 身の程をわきまえたらどうです?」

「うるさいわね! とにかくあんたはあたしのお助けキャラなのよ!」

「話になりませんわね」


 わたくしがそう言ってため息を吐き出したところで、ちょうどシルバーン様が手配した警備員が駆け付けました。


「は、え? なによ」


 警備員に無言で腕を掴まれたマリアナ様は状況がわかっていないのか、目を大きく見開いている。


「連行してください」


 シルバーン様が無情にもそう告げると、警備員が無言でマリアナ様をわたくし達の前から強制的に離していく。


「ちょっと! あたしはまだ用事があるのよ! 離してよ! っああもうっ! お願いします、皆様助けてくださいっ」


 マリアナ様がそう叫ぶけれども、攻略対象の皆様はもうマリアナ様のことなど忘れたような顔をしている。

 切り替えが早いのはいい事だ。

 その調子で心の中にある『死』に対する考えも切り替えて欲しいものなのだが、まあ、無理だろう。


「メレディス、パーティーは楽しんでいるか?」

「ええ、素晴らしいパーティーですわね」

「新入生が初めてこの学園に本格的に関わる重要な式典です、学園側も力が入るのでしょう」

「それにしても、相変わらずメレディスはミッシェルと一緒かぁ。いいなぁ、羨ましいなぁ」

「ミッシェル様は差し上げませんわよ?」

「いらな~い」


 ナティコト様はそう言って空いている席に座ると手にしていたお皿の中身を食べ始める。

 他の方々も同じようにつかず離れずの場所に座って食事を始めている。

 まあ、お互いの関係性を考えると、今ここに全員で来たことに驚いた方がいいのかもしれない。


「……ナティコト様」

「ん? な~に?」

「そのケーキの山、見ているだけで胸やけがしそうなので、早く食べきってくださいませ」

「えぇ、このぐらい普通だよ。まあ、ボクは皆みたいに普通の軽食っていうわけじゃないけどさぁ、折角用意されてるんだから、食べてあげなかったら、ケーキが可哀想でしょ」

「相変わらずの超理論ですわね」

「なになに、メレディスも食べたいの? 分けてあげようか?」

「いりませんわ」

「ちぇっ」


 わたくしの言葉にナティコト様は口をとがらせるが、すぐに皿に盛られたケーキを食べる事に熱中し始める。

 良くも悪くもわかりやすい。

 そんなナティコト様からだいぶ離れた位置にポツンと座るダンバート様のお皿の上には、野菜系が控えめに盛られている。

 ダンバート様も小食というか、あまり食べると具合が悪くなるタイプなので仕方がないが、なんだかもしょもしょと野菜を食べている姿はウサギのようで可愛らしい。

 わたくしの視線に気が付いたのか、ダンバート様が此方を見て首を傾げてくるので、思わずあざとい、と心の中で思ってしまった。


「メレディス、食べないのかい?」

「いえ、ちゃんといただきますわ、ミッシェル様」


 とりあえず、周囲に攻略対象が集まっているという謎現象をひとまず置いておくことにしたわたくしは、ミッシェル様と一緒に仲良く食事をする事にした。


「こちらのローストビーフはソースがとても美味しゅうございますよ」

「このサンドイッチも美味しいね」

「ふふ、流石は食べ盛りの男の子ですわね。そんなにお皿に盛って、食べきれますの?」

「このぐらい軽いものだよ」

「まあ、羨ましいですこと」


 クスクスと話しながら食事をしていると視線を感じたのでそちらを見てみると、ベリランブル様がこちらを見ていた。

 何か用事があるのだろうかと、視線を合わせて首を傾げてみると、目をパチリと瞬かせた後、なんでもないと言うように首を振って持っている皿に視線を戻した。

 なんだったのだろうか?

 そんな事を思っていると、横から四つ切にされたミニトマトが口元に差し出されたので見てみると、ミッシェル様がわたくしに食べさせようとしているようだ。

 わたくしは素直にそれを口に含むと、程よい酸味と十分な甘みが口の中に広がっていく。

 良質なフルーツトマトのようだ。


「美味しゅうございます」

「ならよかった」


 にっこりと微笑むミッシェル様を見て、わたくしもにっこりと微笑む。


「メレディス」

「はい、なんでしょうかゼシュティア様」


 名前を呼ばれたのでそちらを向くと、ゼシュティア様が自分の皿の中の赤い実、ザクロの粒を指さしている。


「これはお前の好物だろう。食べるといい」

「あら、ご自分で召し上がる為に取っていらしたのでしょう? わたくしは自分の分は自分で」

「食べなさい」

「……それでは、いただきますけれど」


 わたくしがそう言うとゼシュティア様が満足そうに頷き、近くにいる給仕に新しい小皿を持ってこさせるとそれにザクロの実を移して、わたくしの方に持ってこさせる。


「ありがとうございます」

「遠慮なく食べるといい」


 小皿を受け取ってその中で赤く輝くザクロの実を一粒掴んで口に入れて噛むと、口の中に甘酸っぱい美味しさが広がっていき、思わず頬が緩んでしまう。

 そうしてザクロを味わっていると、アルフォンス様が近寄って来て、小皿の中にブルーベリーを落としていく。


「メレディスはそれも好きだろう。遠慮なく食べてくれ」

「あら、アルフォンス様もブルーベリーはお好きでしょう? わたくしが頂いてもよろしいのですか?」

「ああ」

「そうですか、では遠慮なく」


 ブルーベリーを一つ手に取って口に入れて齧ると、甘い味わいが広がっていってやはり頬が緩んでしまう。

 わたくしの様子に満足したように頷いてから、元の席に戻っていくアルフォンス様の姿を見送って、小皿の中を空にすると、本来のわたくしの持っている皿の中身を食べる事に戻る。

 ミッシェル様と料理の感想を言い合いながら楽しく食事をしていると、マカロンを小皿に乗せたシルバーン様が席に座り直して、マカロンを口に運んで思わずと言った感じに目元を緩ませている。

 シルバーン様の好物は乙女ゲームの設定ではオレンジジュースだったのだが、わたくしの熱いデザート推しによりいつの間にか好物がマカロンに変わっていた。

 甘い物は息を抜くのに丁度いい、と力説したころが懐かしく思えてしまう。

 そういえば、マリアナ様は寮の夕食で毎回レアのお肉を注文しているけれど、攻略対象の中には『死』のトラウマから肉嫌いもしくはしっかり焼いた肉でないと受け付けない人もいるのだが、その事についてはどう思っているのだろうか?

 言わなければバレないとか?

 ありえそうなところが情けない。

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