入学式パーティー2
「公爵令嬢であるメレディス様が、男爵令嬢、しかも庶子である貴女を馬鹿にして何か問題があるのかと言っているのです」
「何言ってるんですか、シルバーン様。メレディス様はこのあたしを蔑ろに扱ってるんですよ!」
「ですから、それに何の問題があるのですか?」
「問題ありまくりじゃないですか!」
「はあ、話が通じませんね。とりあえず、ここは高位貴族・王族用の休憩スペースです。下位貴族の貴女が来るべき場所ではありませんよ」
「そんな、皆で楽しく食事をしましょうよ」
「そうですね、皆様で楽しく食事をするのはいい事ですね」
「そうですよね!」
「ただし、その中に貴女は含まれていませんよ」
「なっ、どうしてそんな事を言うんですか。確かに、序盤だしお互いの事を知らないかもしれないけど、だからこそ、知っていくにはいい機会じゃないですか」
「王族や公爵子息のわたし達が、男爵令嬢でしかない貴女とお互いに知り合ってなにか得がありますか?」
「あたしなら、皆様の心を救ってあげることが出来ます!」
「意味が分かりませんね。とにかく、これ以上騒ぐようなら警備員に突き出しますよ」
「は!? 警備員って何? そんなものゲームには無かったのに」
「話の内容がちっともわかりませんが、高位貴族や王族が通う学園ですよ。警備員がいて当然でしょう」
「そんなの知らない。……ちょっと! どうして教えてくれなかったのよ」
マリアナ様は体を回転させると、ものすごい顔でわたくしに詰め寄って来ます。
「校則にきちんと記載がありますわよ? 噂では同室の方が、口酸っぱく校則や寮則について語っていらっしゃるとか。ご自身で聞き漏らしているのではありませんか?」
「うっさいわね! とにかく丁度いいわ、あたしをあの人達にちゃんと紹介しなさいよ」
「お断りしますわ」
「なんですって?」
「どうして親しくもないマリアナ様を紹介しなければいけませんの?」
「それがあんたの役目でしょ!」
「そのような役目を担った覚えはございませんわ」
「どこまでいってもバグ女ね!」
マリアナ様は声を抑えるという、貴族の最低限のマナーも知らないのだろうか?
背後に聞こえていないのかと思っているかもしれないが、そんな大きな声で言っていたらこの距離なのだから、当たり前のように聞こえている。
「ちょっと、メレディスに対してなんて口の利き方をしてくれてるの? たかが男爵令嬢の分際で」
「え、ナティコト様」
「君、何度もぼくの読書の邪魔をしたり、絵を描くのを邪魔して来た子だよね。正式に苦情を出しているのに、まだ懲りてないんだね」
「ダンバート様、あたし、邪魔なんてしてないですっ」
「誰かと思えば、私の周りをうろついていた娘か。男爵令嬢など利用価値もない女が、メレディスに食って掛かるとはな。身の程を余程知らないらしい」
「ゼシュティア様、利用価値ってそんな、あたしならゼシュティア様の心を解きほぐすことが出来るんです!」
「ははは、どこのマナーのなっていない令嬢が騒いでいるのかと思えば、君だったのか。それにしてもメレディスに対してその口の利き方はないのではないか?」
「アルフォンス様、そんなつもりじゃ……」
「メレディスに文句を言うならこの場から立ち去れ」
「ベリランブル様、文句なんて言ってません。ただ、本当にメレディス様があたしに対して酷い事をするんです!」
「話になりませんね。仮に本当にメレディス様が貴女に酷い事をしたからといってなんだというのですか? 男爵令嬢が公爵令嬢に無礼を働く以上に都合の悪いことがありますか?」
「え、シルバーン様何を言って?」
会話を聞いていて、フルボッコという単語が頭の中に浮かんでくる。
確かに乙女ゲームの設定上攻略対象との初期好感度は最低値ではあるが、これは最低値どころかマイナスになっているのではないだろうか?
お助けキャラであるわたくしを介さないで攻略対象との出会いをこなして仲良くしようなんて、身分的に無理があるのだからしかたがないのかもしれないが、これは見ていて面白い。
「み、皆様はメレディス様に騙されてるんです! この人は本当にあたしに対して酷い事をする悪人で、役に立たない人なんですよ!」
「婚約者として、メレディスの事をそんな風に言われるのは許しがたいのだけど?」
「ちょっと、なに顔だけの脇役がしゃしゃり出て来てるのよ!」
「ミッシェル様の事を脇役なんて、たかが男爵令嬢の分際で随分な口をききますわね。本気で警備員に突き出されたくなければ、今すぐにこの場から立ち去っていただけますか?」
「はあ? なんであたしがあんたに命令されなくちゃいけないわけ?」
「わたくしが公爵令嬢で、貴女が男爵令嬢だからですけれど、それがなにか?」
「っ! 聞きましたか? この人は自分の身分をたてにあたしの事を陥れようとするんです!」
「身分制度のしっかりしているこの学園で、それが何かおかしいのか?」
「ゼシュティア様、だって、えっと……確かに身分制度はありますけど、学生ですよ。そんなもの気にしないで楽しく過ごしたいじゃないですか!」
「そんなに仲良しごっこがしたいんだったら、平民も通う学園に転校したら?」
「ナティコト様そんな、あたしは皆様と仲良くなりたくてっ」
「それって、高位の身分の人間と仲良くしたいって事? その割にはメレディスを蔑ろに扱っているし、行動が意味不明だね」
「それは……、そっそうだダンバート様! あたしならダンバート様のお体を治す方法を」
「君、その口をいい加減閉じた方が身のためだよ。ここに居るのは皆メレディスの味方なんだから、そんなメレディスを陥れるような発言をしている君を受け入れる人なんていないよ」
「アルフォンス様、何言ってるんですか、確かにお会いしたばっかりだけど、あたしなら確実に皆様と仲良くなれるんです」
「うるさいな。我にとってお前など見るに値する価値もない。早く立ち去れ」
「ベリランブル様、ちゃんとお話をすればあたしの事をわかってもらえます!」
必死なマリアナ様を見ているのにもそろそろ飽きてしまった。
はっきり言えば、この学園の上位者達が集まっているので、自然と視線が集まっているし、聞き耳もたてられている。
マリアナ様、どんどん自分で墓穴を掘っていっているな。




