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こんなに変わっているのに

「あたし、ピーマン嫌いなのよ。抜いてもらえる?」

「かしこまりました」

「あと、肉はレアよ」

「かしこまりました」

「肉の量はもちろん大盛で」

「かしこまりました」

「脂身なんか残ってたら許さないからね」

「かしこまりました」


 注文を聞いているキッチンメイドとの会話がここまで聞こえてくる。


「噂でしか聞いたことはありませんが、彼女はついこの間まで平民だったはずですわよね?」

「私もそう噂で聞いています」

「それにしては随分と横柄な態度を取りますわね」

「そうですね」

「まあ、わたくしと関わる事も無いと思いますが、あまり目に余る行動を続ければ、入寮からの反省室行きの最速記録を更新するかもしれませんわね」

「……そうなるかもしれませんね」


 わたくしがにっこりと微笑んで言えば、フリッカ様は慎重に頷く。

 恐らくわたくしの言葉の裏を考えたのだろう。

 言葉の裏を読み取るのも、貴族にとっては重要なスキルになってくる。

 それ以降はマリアナ様の声が聞こえても、特に反応することなく食事を終え、部屋に戻ろうとしたところで名前を呼ばれたので振り返った。


「あんたが役立たずのせいでプロローグがうまくいかなかったじゃない! 責任を取りなさいよ!」

「マリアナ様でしたわね。お食事はもうお済なのですか?」

「まだよ、でも食事は後で出来るけど、あんたはもう部屋に戻るんでしょ、また談話室で話をなんて面倒な事言われるぐらいなら今ここで言った方が早いわ」

「わたくしには特にお話しすることはございませんわね」

「だから、攻略対象との遭遇イベントがうまくいかなかったのよ! もう一回やりなおすから今度はちゃんとしなさいよ!」

「攻略対象ですか? 何の事をおっしゃっているのか全く分かりませんわね」

「もうっ、なんでもいいから、あんたはあたしに王子達を紹介する義務があるのよ!」

「そのような義務は身に覚えがありませんわ。そのような下らない戯言を言うためにわたくしを呼び止めたのですか?」

「戯言なんかじゃないわよ。あたしのお助けキャラじゃなかったらあんたなんか無価値でしょ!」

「……無礼ですわね」

「は?」

「公爵令嬢であるこのわたくしに対して、ただの男爵令嬢である貴女がそのような口を利くなんて、入寮早々に罰せられたいのですか?」

「はあ?」

「フリッカ様、申し訳ないのですが後をお願いしてもよろしいでしょうか?」


 わたくしはマリアナ様の背後に見える、困ったように眉をしかめているフリッカ様に声をかける。


「ええ、メレディス様はどうぞお部屋にお戻りください」

「よろしくお願いしますわね」

「ちょっと、話は終わってないわよ!」


 背後から響いてくるマリアナ様の声を気にすることなく食堂を後にすると、自室に戻り着替える。

 寝る用のネグリジェとは別のゆったり過ごす用の私服だ。

 わたくしが公爵令嬢であり、寮長のフリッカ様より立場が上になるという事は、先ほどの会話を盗み聞きしていた生徒から広まるだろうし、もしかしたら食堂でフリッカ様がわたくしの立場を正式に宣言しているかもしれない。

 どちらにせよ、身分制度のしっかりしたこの学園で、男爵令嬢であるマリアナ様の行動がおかしいという事は多くの生徒が知る事となる。

 マリアナ様の同室となった生徒には同情する面もあるが、男爵令嬢だと言っていた。

 少なくとも伯爵令嬢以上でなければわたくしとの面識はないと言っていい。

 それにしても、マリアナ様はこれほどまでに状況が変わっているのに、無理にでも乙女ゲームのシナリオを戻そうとしているらしい。

 愛用の扇子をパチリパチリと開いては閉じてを繰り返して、パチン、と閉じる。

 基本的にわたくしに迷惑をかけなければそれでよいのだけれども、それも難しそうだ。

 本当に反省室行きの最速記録を更新するのではないだろうか。

 入学式までの公式イベントは乙女ゲームのプロローグにあたる出会いイベントのみだ。

 だが、この世界ではターン数や会話での好感度上げの制限はない。

 うまく知識を使えば好感度を上げるのも容易い事だろうが、マリアナ様は既に初手で躓いている。

 そもそも、乙女ゲームアプリと銘打っているにもかかわらず、本来の乙女ゲームアプリ本編も一部を除き、初期のヒロインへの攻略対象の態度はそっけないものがある。

 それが徐々に仲良くなっていくというのが売りではあったが、色々と変わってしまったこの世界においてその設定が残っている以上、マリアナ様がシナリオを元に戻そうとしても相当苦労することになるだろう。

 そう考えていると、部屋のドアをノックする音が聞こえ、座っていたソファーから立ち上がってドアスコープから相手を確認するとフリッカ様が居た。


「メレディス様、フリッカです。お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

「ええ、お入りになって」


 マリアナ様の時とは違い、すんなりとドアを開けて招き入れると、フリッカ様はほっとしたようにわたくしの顔を見ると、一礼をしてから部屋の中に入ってくる。


「お茶をお召し上がりになりますか?」

「いえ、すぐに下がらせていただきます。先ほどの食堂での結果報告と、実は……すでにメレディス様宛てに寮生からプレゼントや手紙を預かっておりまして、それをお渡しに来ました」

「あらそうですの? まあ、とりあえず立ち話もなんですし、ソファーにお座りになって?」

「はい」


 フリッカ様がソファーに座ったのを確認してわたくしもその対面のソファーに座る。

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