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refrain  作者: 水幸
第八章 別れ
37/75

第37話

 古びた船と潮風が、灰色の海を渡っていく。時折、鳥の群れが頭上を通り過ぎるくらいで、景色の変化はあまりない。

 それでもククは船室に下りずに、甲板で海を眺めていた。眺めたところでどうなるものでもないと分かってはいたけれど、なんとなくそうしていたかった。

 これが感傷というものなんだろうか、と頭の隅で考える。

 もしそうなら、この胸の底が痛むような感情も同じ名前のものなのだろう。


(……わたしは、この旅で何を得て)


(何を、失ったんだろう)


 目を閉じると、波の音が大きくなった。


 もう、隣で杏里の声が聞こえることはない。ライックが優しく笑ってくれることも、ディオンが呆れたように歩いてくることも。クレストとも、再び出会うことはない。

 彼らとの出会いや時間、最後に迎えた結末は、すべてが正しく美しいものではなかった。むしろ、間違いの方が多かったのかもしれない。


 ……けれど。


 ゆっくりと瞼を開ける。

 相変わらず空も海も鈍い色だ。けれど、その分厚い雲の合間を縫って、弱々しい陽光が水面をほのかに染めていた。


(みんなと一緒だった時間が、正しくても、正しくなくても)


(もう、二度と、戻ってくることはないんだ)


 それでも、明日もその先も、未来はずっと続いていく。

 繰り返す片道の日々を、わたしはまたあの場所で生きていく。胸を衝くこの離愁もきっとすぐに手放して、また。

 だから、せめて、今だけはこの言葉を口にしたかった。


「……また、いつか」


 祈りは、水面に落ちて消えていく。

 船は灰色の海を進んでいく。

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