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いのちのきき

 さて、生まれて二年と数ヶ月が経って周りの言葉が分かり始めてみれば、そうは問屋が卸さない事態だったことが発覚した。

 というか、絶体絶命である。眠れる獅子どころかガチで眠ったままで終わりそうな勢いである。

 なんで?おかしくない?

 生まれてからの漠然とした理解はおおむね間違いはなかった。

 両親は貴族様だし、魔法もちゃんとある。

 違いといえば、そこそこの身分とか思っていたお父様は国境を任されるような大領主様だったこと。

 しかも、会話を聞く限り、この世界は世襲制なので、自分の将来は約束されたようなもの!!

 と思っていた時期もあったさ。


 問題は偉いからこそ問題を大量に抱えていたことだ。

 まず、お家問題。

 現在、自分のお父様が家督を継いでいて領主様になっているのだが、その兄弟や親戚ってのがうじゃうじゃいる。

 その中で、現状に不満を抱いている人が結構いっぱいいる。

 具体的に言うと「俺こそが領主に相応しい。」ってな考えの人々。

 その中心人物というのがお父様の弟、つまり自分の叔父様である。

 この叔父様、結構過激なようで近々お父様を殺してでも自分が領主になろう、てな考えの人物らしい。

 さらに最悪なのは叔父様を支持する人ってのが多い。というか、お父様以上に支持されているってことだ。

 ちなみに、この叔父様についてなんだが、自分が生まれた時から、何回も会ったことがある。

 というか、生まれてからちょくちょく自分の様子を見に来ていた男だ。

 そんなに悪い感じの人じゃなかった……というか、自分の主観的には父親以上に可愛がってくれてた記憶もあるし、今もよく自分の部屋に様子を見に来て、かまってくれている。

 とても、過激派とかそんなイメージの人物ではないはずなのだ。というかそうであってくれないと困る。

 だが、現実は悲しくも自分まで殺しに来るかもしれないヤバイ野郎の可能性が極めて高い。

 まだ、具体的な行動には移していないが、いつクーデターが起こるかわからない状況だ。

 そして、我が家の問題はこれだけではない。


 隣国との紛争。

 お父様が大領主と言われる所以にもなっているのは、紛争が絶えない隣国との国境を守っているからであるそうな。

 その隣国が最近なにやら活発化しているようなのだ。

 使用人の女性たちの間では、いつ田舎に避難しようか、なんて話題も出ていて、戦争一歩手前みたいな雰囲気が漂っている。

 お父様も最近忙しそうにしていて、自分が寝ている部屋にまで怒声が聞こえてくることもあるのが、真実味を一層高めている。

 この他にも中央との関係が悪いだの、移民が多すぎてどうしようか、財政がやばいなどと、聞いてるこっちまで「あれ?うちのお父様って無能?」とか思ってしまうくらいな話がゴロゴロ出てくる。

 基本、自分のベッドで寝ているだけの自分でさえこんなきな臭い話を聞くのだ、実際はもっとヤバイかもしれない。

 ま、まあ、これも所詮は使用人の噂話に過ぎないので、実際のところは「全部嘘でした!」みたいなことがあるかもしれない。というかそうであってくれ。

 ……真相は分からないが、ヤバイという前提で今後を考える必要があるってのはアホでも分かる。




 そこでだ、早速方針転換だ


 まず、最初に考えていたような「俺の英雄譚」的なルートは即刻破棄。

 叔父様がガチで殺しにきてるかもしれないのに、自ら目立ちまくるのは自殺行為だ。

「あれ?こいつ有能じゃね?このままだと敵討ちとかありそうだし殺っちゃえ。」みたいな展開は絶対に避けたい。

 個人的にはあまり疑いたくはないが、自分の命を賭けて信じ切れるほどの命知らずじゃないし、俺の知っている叔父様っていうのも、所詮赤子に見せる顔だけだ。

 自分の命を賭け金にするようなギャンブルってのは分が悪すぎる。

 当初の予定ならば、すでに動き出し、天才を演じているところなのだが、元々別の言葉を知っているという障害のせいか、この世界の言葉を覚えるのに相当苦労して、お父様達にアホの子の疑いをかけられている。

 最近、やっと言葉が聞き取ることができ始めて、お家事情が判明した。

 まだ、お父様たちの前ではほとんど会話なんてしていない。というか、聞き取ることはできるが話すのが苦手でうまく発音できない。 

 それならば、この状況を利用して自然に様子を伺う方向にシフトしよう。

 アホの子を演じた方が脅威とみなされないで、「こんな子供など放っておけ。」という展開が期待できる。

 アホの子ほど可愛いとかも聞くし、ここは「ぼくはあほのこ、なにもわかりましぇん。」作戦に切り替えていくしかない。


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