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はじまり

 目が開かない。

 目覚めたらこんな状況だった。

 何が起こっているかわからない。

 寝起きのせいか、とても眠い。

 気合を入れて、身体を起こそうとしても、自分の体には全く力が入らないし、寝る直前まで自分が何をしていたのかも思い出せない。

 周りではザワザワと人の動く音が聞こえる。

 ただ、それが今ここで何が起こっているかの参考にはならないし、寝る直前の記憶にも繋がらない。

 あれだ、よく聞く『私はだれ?ここはどこ?』状態だ。

 こんなくだらないことしか考えられないくらいには頭が働いていない。

 この状況でいうのもなんだが、まあ、話のネタくらいにはなるだろう。

 雑談の話の種としてはよくあるあれだ。

『俺さ、この前初めて金縛りってのを体験したけど、あれはやばいわ。マジで指一本動かねぇ。しかも、自分がどこにいるのかもわからなくて、マジ焦ったわ。』

 そんな感じ。




 それから、すこし時間が経った、体感としては1時間くらい。

 状況に変化はない。

 相変わらず、目も耳も見えない、聞こえないし、記憶が戻ったわけでもない。

 金縛りってこんなに長い時間かかるもんか?という疑問がようやく湧いてきた。

 なんか金縛りとか言っていたけど、マジでやばい気がする。

 段々と不安になってくる気持ちもあるが、それよりも眠気がひどい。

 自分の状況もわからないまま眠ってしまうのは正直怖すぎるがもうどうにもならない。

 次に目覚めたら、何か変わっているだろう。

 そんな、なんの根拠もない願望を持ちながら、眠気に身を任せた。







 随分と眠っていた気もするし、何回も目が覚めていたような気もする。

 ぼんやりとした意識のまま瞼を開ける。

 目が開いた。ちゃんと目が見える。ちょっと状況がよくなった。

 しかし、物の輪郭がぼやけている。それに色も曖昧だ。

 物心ついた時から眼は良かったはず。初めての感覚に戸惑う。

 戸惑いながらも周りを見渡してみると、どうにか自分が見覚えのないベッドの中で寝ていたらしいということがわかった。

 見覚えがないのはベッドだけではない。

 目線を動かしながら、部屋の中を確認したところ、壁や天井、光など見えるものすべてにどこか違和感を覚える。


『知らない天井だ。』


 そんなセリフが思い浮かんだ。

 しかし、口に出したはずのそのセリフは言葉にはならなかった。

 相変わらず目以外の体は動かない。

 身体が全く動かない状況に自分一人ではどうにもならないことだけはわかった。


『誰か助けてくれ。』


 そんな言葉はまたしても口から発することはできず、ただの雑音になって部屋にこだました。

 しばらく、何かできないかともがいているうちに、十分に寝ていたはずなのにまたしても唐突な眠気が襲ってきた。




 それから、知らない場所、知らない感覚に戸惑いながらも、時間は過ぎてゆく。

 もうどれくらいたったかはわからないが、一日や二日なんてものじゃない。

 段々と視力や聴力は戻ってきたものの、身体の自由は効かないし、記憶も不鮮明だ。

 多少は動けるが、起き上がることも寝返りすることも出来ない。

 目の前の景色は見覚えのないものばかりがぼんやりと映し出されていくが、信じられない光景ばかりだった。

 色とりどりの髪した人たちと自分の周りを囲っている木の柵、、、まあベビーベッドってやつ。




 ……ここまできて認めたくもない現実が認めなければならなくなった。

 実際には『もしかしたら……』というレベルでは薄々感じていた。

 ただ、あまりにも非現実的すぎて頭が拒否していたのだろう。

 それはまだ、どこかの誰かが薬かなにかで眠らせて、薬物の実験でもして身体の自由や五感を奪っていた、という仮定の方がよっぽど現実的だと感じるほどだ。




 まあ、なんだ。ようは転生ってやつだ。


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