51話 再生
広い広い草原に清らかな風が吹き渡る
カコン!カコン!
そこから響き渡る木剣がぶつかり合う音
2人の少年が木剣を交えていた
「今日は俺の勝ち!これで201勝9引き分けだな!」
「あぁ!カズヤ!違う!僕が201勝でカズヤはこれで200勝目だよ!」
「何!ユーキ!もう1回勝負だ!!」
2人の少年の名はカズヤ、ユーキと呼ぶ
「こーら!もうそろそろお昼ご飯だよ!」
少女が駆け寄ってきた
「リリア!」
ユーキはリリアに手を振る
「腹減ったぁ!今日は何だ!」
カズヤはリリアに近寄る
「今日はおにぎり!」
リリアは弁当箱を開けた
「おお!!」
2人はヨダレを垂らしながらおにぎりを見つめる
「まずは、汚れを取りなさい!」
リリアは2人の汚れた姿を見て言った
「ああ!わかったわかった」
カズヤとユーキは近くの河原で汚れを流す
「いっただっきまーす!!」
そして、ご飯にがっつく
「も、も、もぉ食えない…」
2人は寝転んだ
「ご馳走様、リリア」
ユーキはリリアに言った
「はい!お粗末さまでした!」
リリアは弁当箱を片付け始めた
「なぁユーキ」
カズヤはふと言った
「なーにカズヤ」
ユーキは空を見つめていた
「俺達何か忘れてる気がするんだ」
カズヤは言った
「そうだね、何かモヤモヤする」
ユーキも言った
「ま、いっか」
カズヤは言って立ち上がる
草原には大きく風が吹き2人を煽る
「…んっ」
目を細めると
リリアが壊れるように見えた
「リリア!」
2人はリリアを呼ぶ
「ん?どうしたの?」
リリアは何気なく振り向く
「い、いや、おにぎり美味しかった!」
2人はその場をやり過ごす
「…」
不安感を残しながら……
青空、綺麗な花、木々、風、嘘にまみれた現実
本当に見える架空
いつか、不意に壊れてしまうのでは無いか
大切な者、大切な物。
本当なのか嘘なのか。
日は落ち夕暮れ
頭にノイズが走る
「!?」
ユーキとカズヤは目を開くとそこにはリリアが立っていた
「さようなら2人とも元気でね」
リリアはそう言い放ち
両手で自分に触れると
リリアは崩れ落ちる
「ダメだ!逝くな!」
2人は手を伸ばす
虚ろに笑うリリア
涙を浮かべ消え去るリリア
崩壊を呼ぶ少女リリア
その背後には見覚えのある2人
「リリア…か、いただきます」
リリアは灰のように消え去る
それを食い散らかす
何者かわからない
記憶を遡る…いや、遡る記憶もない
何故。わからない、わからないわからないわからない思い出せない何故
頭の中をグルグル回る
探す遡る。
でも
何もわからない
2人は目を見合わせた
「………」
無言で
「こら!ユーキ!カズヤ!起きて!」
声が聞こえた
聞き覚えのある声だ
ふと目を開けると
夕暮れの草原で寝ていた
「夢…か」
カズヤは頭を抑えた。
やけに鮮明だった。怖いくらいに
「帰るよ!2人とも」
リリアは2人の手を引く
日は暮れて星々が輝く
2人は目を閉じ眠りへ付く
次回 地獄のような世界




