22話 エリテアル・ベルティアン
漆黒炎海によって上層に逃げるしか出来なかった
ナナリ達を追ってエリテアルも上層へと向かっていた。
「はぁ…はぁ…あの技、漆黒炎海とか言う技厄介すぎるよ!」
ナナリは愚痴をこぼしながら壁から除くようにして様子を伺っていた。
「すまないな…ナナリ…」
腐炎ノ業火によって負傷しているダンテは意識が朦朧としているなかナナリに謝る。
「あぁもう!謝ってくれるより感謝された方が嬉しいのに!」
ダンテと共に気絶しているユーキ、ユリエ
そして生死をさまよっているディアブロ。
ナナリ1人ではとてもまずい状況だった。
「おーい!逃げるなよ!人間」
足音と共にエリテアルの声が近寄ってくる。
「遂に来たか。」
ナナリは剣を今一度強く握り締め
大きく息を吐く。
「真夜中時間」
とナナリが唱えるとあたりは暗くなり、ナナリの全ての音が消え去った。
呼吸音。足音。鼓動の音。
「どこ行った!?」
エリテアルは首を左右に振り探す。
背中を斬り付けられる。
「ぐぁ!」
エリテアルの腹を剣が貫く。
そして
「浄化ノ雨!」
と背中の傷と貫かれた腹から白い血液が吹き出す。
「あぁぁぁぁあ!くそぉ!まて!やめろ!止めてくれぁ!まずいまずいまずい!」
エリテアルは焦り傷口を手で抑える。
「再生しない!やばい!」
エリテアルは焦る。
「無理よ!私の前では再生させない」
ナナリは剣を捩じ込む
「ゴホォ!」
エリテアルは白い血液を吐血した。
「まて……だぁめ…だ…」
エリテアルの体は力を失い膝をつく。
「はぁ…はぁ…うぎぐぅ!」
とエリテアルの傷口から黒い鎖が飛び出してきた
エリテアルの心臓を抉りとり鎖が包み込む。
そして、貫かれた腹からは黒い炎がエリテアルの体を包み込む。
「どうなってるの!?」
ナナリはその場を離れた。いや、離れざるをえなかった。
高熱というレベルではないくらい熱かった。
「俺様は…久々に外に出られた…なのに…まだぁ!」
徐々に声は消えて行く。
だが炎が消える事は無かった。
「どうしよう…」
ナナリは困った。
すると、ユリエが目を覚ます
「ん…んぁ」
ナナリは即座に寄り添いダンテ達の治療を頼んだ。
ユリエは自分の治療よりディアブロ、ダンテ、ユーキの治療を優先した。
「カズ…ヤ」
ユーキは黒い炎の球体をずっと眺めていて、その場から離れようとはしなかった。
「ごめんなさい。私浄化出来たのか分からないの。」
ナナリらユーキの肩に手を当て謝った。
「大丈夫です。」
ユーキは顔を伏せてそっと涙する。
本当は大声で泣き叫びたいくらいに悲しかった。
ユーキは大切な人を失うつらさを体験していたから。
「カズヤ…僕はもう、泣かない。弱虫なんかにはならない。」
ユーキが首に掛けていたペンダントを地面に起き、その場で座り込んだ。
「先生…少しだけここに居させてください」
ユーキはダンテに言った。
「分かった…でも気をつけろ。俺達は回復も済ませたから上層へ上がる。」
ダンテ達は九十九蜘蛛の討伐に向け上層へとのぼった。
ユーキは話しかけた。ひたすらに。
「カズヤ?リリアにどう言えばいいんだよ。カズヤが死んじゃった事を…戻ってきてくれよ。頼むよ。また、2人で稽古しようよ。次こそ教官に勝とうよ!」
ユーキは嗚咽を飲み込み話し続けた。
1時間くらい経過した頃だった。
突如黒い炎の球体が徐々に消えていく。
「……!?」
ユーキは顔を上げその場を見続けていた
「カズ…ヤ?」
そこには所々火傷していたものの息がある
カズヤが寝ていた。
「すぅーはぁー。すぅーはぁー。」
肺も火傷していた為、呼吸音が大きく
短い呼吸だったものの生きてはいた。
「カズヤ……戻ってきてくれ…ありがと…」
ユーキはカズヤに抱きつき涙を流す。
そしてカズヤを担ぎダンテ達の居る方へと進み出した
息を取り戻したカズヤ
そしてユーキはダンテ達の居る元へと向かっていた。
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