あの人
信じられない光景を見た。
子供達の傍にいたのはあの人だ。
私を救おうとしてくれたあの人がそこにいた。
決して若くはない風貌。
髪の量が多いのか少しぼさついた髪の毛。
着古したようなスーツ姿の男がそこに立っていた。
私から子供達を守ろうとしているのか、怯えながらその背中に子供を隠す。
何故あの人がここにいるかは分からない。
あの人も私を助けようとして死んでしまったのだろうか。
たぶん、そうなのだと思う。
私を助けようとしたばかりに死んでしまったのか。
あの人は、あの時と同じように危険を顧みず子供達を守ろうとしている。
嬉しくなる。
人を信じたいとは思わないが、あの人だけ信じてもいいかもしれない。
私のために命を懸けてくれたのだから。
思わず口元が緩んでしまいそうになる。
今は子供達はあの人に任せて、あの男達を追う必要がある。
男と女が逃げた方角は、以前に林の中を駆けている時に見つけた町だろう。
そう遠くはないが、この姿のまま道を走っていくわけにはいかない。
この姿を他の人間に見られてしまったら何か問題が起こる可能性が高い。
男達が私の姿を見て恐怖したことから、あの獣の姿は一般的ではないと予想される。
念のため人の姿でも戦える武器が欲しいと思い、焼けている部屋に入るとナイフとまだ燃えていなかった襤褸と外套、子供達の服をくわえ外に出る。
そのまま林の中を駆けて男達を探す。
林から町が見える所まで来た。
辺りを注意深く見回すと、男達を見つける。
逃がさないと決意を込めて男達に向かって吠える。
その咆哮を聞いた男達は辺りをキョロキョロと見回しながら走る速度を上げた。
今から元の姿に戻って追いかけても間に合わないだろう。
男達が町に入っていくの身を隠したまま確認すると元の姿に戻り服を着た。
林に身を隠したままあの人と子供達が到着するのを待つ。
男達が町に入ってから時間がかかったが、子供達を抱っことおんぶして2人とも運ぶあの人の姿が見えた。
かなり辛そうだが子供達にそれを見せまいと必死になっているのが分かる。
しばらく見ていると、町に近づくき子供達があの人から降りると走って町に向かう。
それを歩いて追いかけているが、顔からはかなりの疲れが見て取れる。
子供達が放牧されている動物を見てあの人と楽しそうに話している。
子供達の態度からあの人に付いて行くのが嫌ではないということが分かりホッとする。
あの人に迷惑をかけて申し訳ないが、今は子供達をさらおうとした男達がまた何かしないか警戒しておきたい。
町の中に入るまでを確認すると、暗くなるのを待って行動を開始する。




