再会
食事を終えて、残りの肉をどうするか考えていた。
さすがにこのまま置いておくと痛んでしまうだろう。
冷蔵庫もないので冷たい井戸水で冷やそうかとも考えたが衛生的な問題もある。
塩漬けや燻製なども考えないといけないかもしれない。
近くに川などないか探そうと外に出る。
その時、遠くから子供の泣くような声が聞こえる。
「まさか!」
泣き声が聞こえる方に走る。
肉の事などすでに頭にはなかった。
声の発生源が私の子供達かもしれないのだ。
獣の姿になればもっと早く駆けつける事ができるかもしれない。
でも、あの姿を子供達に見せたくはない。
有効な選択肢を取れない歯がゆさを感じながら林の中を駆ける。
2人の獣人の子供が林の中で泣いているのを見つけた。
私の子供達だ。
姿が変わっているが間違いない。
何故かそうであるという確信がもてる。
子供達に近づこうとすると、子供達を見ている1匹の獣の姿が目に映る。
頭に大きく固そうなとさかを生やした猿だ。
子供達に近寄ろうとしている。
子供達はその猿を怖がっている。
泣いていた理由は心細いだけではなく、この猿のせいかもしれない。
「私の子供に触れるな!」
子供と猿の間に割って入る。
猿は突然の乱入者に驚いているが逃げようとはしない。
「おかあさんだ」
「おかあさん……みつけた」
背後から子供達の声が聞こえる。
子供達も私が母親だと認識してくれている。
今すぐ抱きしめてやりたい。
しかし、この猿がそれを邪魔する。
「邪魔だ。すぐどこかへ行け」
猿を睨みつける。
猿はそれが気に食わなかったのか飛びついてくる。
素早く身構えると、飛び掛ってきた猿の頭に手のひらの付け根を叩き込む。
地面に激しく打ち付けられた猿は失神したのかその場に倒れこんで動かない。
子供の方を向くと、子供達が抱きついてくる。
「こわかったよー」
「さる……こわい」
まだ涙が残る顔を私のお腹に押し当てる。
「もう大丈夫、怖かったな」
そう言って子供達を強く抱き締めた。
猿も食べようかと思ったが、子供達が怖がると思いその場に放置した。
子供達が落ち着くのを待って村に移動する。
「おかあさん、どこいくの?」
下の娘が甘えたりないのか私にくっ付いたまま歩くと聞いてくる。
「誰も住んでいない村だ」
「そこに……すむの?」
上の娘が繋いでいた手を引っ張り質問してくる。
「ああ、3人で暮らそう」
私がそう言うと子供達が嬉しそうに笑う。
「おかあさんと、いっしょ」
「いっしょに……いられる」
その反応に私も嬉しくなる。
家の掃除をしておいてよかった。
子供達がこの世界に来たということは、やはり元の世界では死んでしまったということだ。
やはり誰も助けてなどくれなかった。
期待などしていなかった。
私達を助けてくれる者など誰もいない。
人への憎しみが湧き出て来たとき、私を助けようとした人の顔が思い浮かぶ。
あの人は私をかばってくれたのだ。
私が生きてきた中で唯一私を助けようとしてくれた。
あの人はどうなってしまったのだろう。
女神に聞いておけばよかった。
子供の事で頭がいっぱいだったとはいえ、申し訳ない気持ちになる。
あれほど人が憎かったのに不思議なものだ。
「おかあさん、どうしたの?」
「……大丈夫?」
心配した顔で子供達が見つめている。
「ああ、大丈夫だ」
子供達の手を強く握り村へと歩く。




