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魚を食べる

 教会に戻った頃には日が傾きだしていた。

 夕食にはまだ少し早いかもしれないが、釣った魚の下ごしらえや、焼いたりする時間を考えると丁度良かったかもしれない。


「おかえりなさい。あら? ライガちゃんもいるんですね。それは? 川魚ですか?」

 マリアが出迎えてくれて桶の中を覗く。

「レオスに竿を借りて皆で釣ったんだ」

 マリアはそれを聞いて口を尖らせる。

「私も一緒に遊びたかったです」

 たまにマリアがする表情なのだが、その仕草をするマリアが子供っぽく見える。

「マリアの分もあるから、皆で焼いて食べよう」

 それを聞いてマリアの表情が明るくなる。

 台所で焼いても良かったのだが、折角なので外で焼こうということになり、小屋の前で火を起こす。

 火を起こしている間にマリアが魚の内臓を取って綺麗に水洗いし、魚に木串を通してくれた。

 塩をかけ過ぎではないかというくらい振っていたが、焼いているうちに落ちるので問題ないという。

 私が肉を焼いたときは落ちなかったのだが、肉と魚では違うらしい。

肉を焼いた経験から火に近すぎないように気をつけながら、串を地面に刺して焼いていく。

 皆で火を囲んでその光景を見ているのだが、子供達は魚が焼ける匂いに今にも涎が垂れてしまいそうになっている。


「お、魚か。美味しそうじゃないか」

 離れた場所で声がしたので皆がそちらを向く。

 そこにはライガを迎えに来たのかタイガがいた。

「あ、ママ! みてみて、みんなでつったの」

 ライガがタイガに駆け寄ると焼いている魚を指差す。

「凄いじゃないか」

 そう言ってタイガはライガの頭を撫でる。

 撫でられてライガが嬉しそうにしている。

「タイガ、一緒に食わないか?」

 折角なのでタイガも誘う。

「私も食べていいのかい?」

「ライガが釣ったのを食べてやれ」

 申し訳なさそうにしているタイガだったが私の言葉を聞いて頷いた。

 自分の子供が釣った魚を食べたくない訳がない。


 魚に焦げ目がつき中まで火が通ってきた。

「そろそろいいですね」

 マリアの声に子供達が串を手にする。

 ライガは自分が釣った魚をタイガに渡す。

 ハナとレンもそれを見て私とロッティに自分が釣った魚を渡してきた。

「ありがとう」

 子供達の気持ちが嬉しくて頬が緩む。

 タイガを見ると同じ気持ちのようで目が合うとくすりと笑う。

「「いただきます」」

 私とハナとレンはそう言って魚にかぶりつく。

 皮のパリッとした食感の後に熱くてホクホクとした身が口に入る。

 塩味の効いた身はとても美味しかった。


「おいしー」

「ほくほく……おいしい」

 ハナとレンも顔をほころばせている。

 タイガとライガはマリアと同じように祈りを捧げてから魚にかぶりついていた。

「おいしい。 ママもおいしい?」

「ああ、おいしいよ」

 私達と同様に魚の美味しさに舌鼓を打っている。

 マリアとロッティも同様だ。

「久し振り食べましたが、美味しいですね」

「魚を初めて食べたけどこんなに美味しいのね。皆にも教えなくちゃ」

 ロッティに関しては大きさが小さいせいか巨大な魚にかぶりついているように見える。


 あっという間に魚を食べ終わってしまった。

「ちょっと待っていてくださいね」

 マリアが立ち上がり、家の中に入っていった。

 家の中から出てくると鍋とパンを持っている。

「魚だけでは足りないと思って用意しておきました」

 鍋の中を覗くとチーズが入っていた。

 家の中で熱していたのかトロトロになっている。

 マリアは魚を焼いていた所に石を組んで鍋を置くと皆にパンを配った。

「なにするの?」

「パン……たべていいの?」

「なべのなかは、チーズ?」

 子供達がパンを渡されてどうしていいか分からない様子だ。

「魚の後にパンだけってのは味気ないわね」

 ロッティがマリアに渡されたパンを食べ始めていた。

 私とタイガはマリアが何をしたいのか分かったのでパンを千切ると魚に使っていた串に刺す。


「皆もレンゲさんやタイガさんみたいにパンを千切って串に刺してね」

 マリアが子供達に説明をする。

「パンを串に刺したら鍋の中のチーズに浸けて食べるの。熱いから火傷に気をつけてね」

 そう言ってマリアが実演してみせる。

「美味しいです」

 マリアが頬に手を当て顔をほころばす。

 子供達はそれを見て涎が垂れそうになっている。

 我先にと子供達がマリアの真似をしてパンに串に刺してチーズに浸けて食べる。


「あつ、おいしー」

「あつい……でもおいしい」

「ふーふー……、おいしいね」

 自分の子供達がマリアの忠告を無視して熱そうにしているのが面白かった。

 ライガは息をかけて冷ましていた。

 ロッティも子供達が食べるのを見て挑戦する。

「これもすごい美味しいじゃない」

 パンを大きく千切ったせいか口の周りにチーズが付いている。

 子供達がそれを見て笑うとロッティも楽しそうに笑っていた。

 私とタイガも子供達が食べるのを見守った後食べる。 

 熱くてトロってしたチーズがパンによく合う。

「うまいな」

「そうだね。久し振りに食べたよ」

「気に入ってもらえて良かったです」

 皆の美味しそうに食べる反応を見てマリアが嬉しそうにしている。


 皆でわいわいと食事をして、終わった頃には暗くなっていた。

 子供達は疲れたのか、消えそうな火の淡い温もりに包まれて眠そうにしている。

「まずい、旦那の食事を忘れてた」

 急にタイガが立ち上がると慌ててライガを立たせる。

 ライガが眠そうにしているのでおんぶしている。

「今日はご馳走様。ありがとうね」

「ああ、気をつけてな」

「おやすみなさい、お気をつけて」

 タイガは私達に挨拶をするとライガを背負って帰っていった。

 竿を忘れているが、また今度返せばいいだろう。


 子供達を見ると寄り添って互いに体を支えあって眠っている。

 マリアとロッティと3人でその光景に笑みをこぼす。

 今から後始末や風呂の用意をしないといけないが、もう少しその光景を眺めていた。  

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