休日を子供達と
銭湯の開店から10日が経った。
銭湯の営業はあれから順調だ。
開店の時よりお客は減ったが、定期的に顔を出す人が多く、顔を覚えた人もいる。
私が誰か雇おうかと考えていたら、ラミットが手伝ってくれることになった。
「レンゲちゃんも休まないとね」
そう言ってラミットの方から提案してくれた。
家の仕事は問題ないのかと心配したが、午前中に食事の準備や家事をしておけば問題ないという。
「家も近いから何かあればすぐに戻れるわ」
ラミットがそう言うならと甘えさせてもらうことになり、5日仕事をして1日ラミットと交代して私が休む流れになった。
子供達がお客に説明しなくても常連になった人が慣れない人に親切に風呂の入り方を教えてくれるので子供達も忙しくなくなった。
ロッティも黒毛鼠達も仕事の流れや勝手が分かり以前より疲れは少ないという。
ただ、タイガが銭湯に入りに来た後、ビンを作って持ってきてくれて、そのビンに牛乳を入れて井戸で冷やして売ったのが人気になってしまい仕事が増えてしまった。
これに関しても注文が入ったら黒毛鼠達がカウンターへ持っていく流れになっており、黒毛鼠達の仕事を増やしてしまい申し訳なかった。
「気にするなッチュ」
「簡単ッチュ」
黒毛鼠達は気にしていた私に優しい言葉をかけてくれた。
そして今日は休みだ。
子供達も休んで一緒に遊ぶことにする。
マリアも誘ったのだが、残念ながら教会の用事があるらしい。
「何して遊ぶ?」
久しぶりに遊べる事が嬉しくて私の周りを走り回っている子供達に聞く。
「ひさしぶりに、ライガともあそびたい」
「ライガも……さそう」
子供達は銭湯準備の時からライガと遊べてないのでライガにも会いたいようだ。
「なら誘いに行くか」
「いくー」
子供達と手を繋ぎ、ライガの家に向かう。
「ちょっと、私も連れて行きなさいよ」
声がして振り返ると、ロッティがこちらに飛んでくる。
「黒毛鼠達はいいのか?」
心配になりロッティに尋ねると、少し呆れたような顔をする。
「想像以上に優秀で、私がいなくても大丈夫とか言われたわ。だから私も今日は一緒に遊ぶ」
黒毛鼠達もロッティを気遣ってくれたのかもしれない。
そう考えると、黒毛鼠達の不思議な生態が一段と深まる。
謎が深まるだけなのであまり考えないようにしよう。
その代わり、今度仕事終わりに露天風呂に何か差し入れを持っていこうと思った。
「どこ行くのよ?」
ロッティが私の肩に座って聞いてくる。
何度か肩に乗せて歩いたので、この体勢にも慣れてしまった。
「ライガのいえー」
「ライガ……ひさしぶり」
レンゲが顔の横で首を傾げる。
「ライガ?」
「子供達の友達だ」
それを聞いて納得したのか嬉しそうな顔をする。
本当に子供が好きなんだな。
それから4人で他愛のない話をしながらライガの家に行く。
家の前に行くと、職場からレオスがやってくる。
「まさか、あれがライガ?」
ロッティが少し顔を青くしている。
「いや、あれはライガの父親のレオスだ。会ったことあるだろ」
あんな厳つい男と子供達が仲良く遊んでいたら私も怖い。
「会ったことはあるけど、名前は知らなかったわ」
銭湯を作るときに何度も会っているが名前を知らなかったのか。
「おう、久し振りだな。銭湯は順調か?」
銭湯の事が気になっていたようだ。
「ああ、問題ない。今日はラミットが変わってくれて休みをもらったんだ。ライガはいるか?」
「たまには休まないとな。ライガなら家にいるぜ。おーいライガー! チビが遊びに来たぞー!」
私の言葉を聞いて満足したのか、安心した顔で頷くと大声でライガを呼ぶ。
「うるさい男ね」
ロッティが横で呟くが、ロッティもなかなかやかましいとは言わないでおく。
家の中からどたどたと勢いよく走る音が聞こえたかと思うと勢いよくドアが開く。
ライガはそのまま靴も履かずに走ってこちらに向かってくる。
まさかと思って子供達を見ると、子供達もライガに向かって走り出す。
すごい勢いのまま3人は抱きしめあった。
見ているこっちが痛くなりそうだ。
「あれが子供達の最近の挨拶なの? すごい痛そうなんだけど」
ロッティも同じ意見のようだ。
「特殊な挨拶だと思うぞ」
誤解がないようにそこだけは否定した。
レオスは心配していないのかその光景を見て笑っている。
ライガがロッティを見てハナとレンの後ろに隠れる。
そういえば、ライガはロッティを見るのは初めてか。
まさか小さい妖精にまで人見知りするのだろうか。
「あのこは、ろってぃだよ」
「だいじょうぶ……こわくない」
レンとハナが後ろに隠れたライガに説明する。
肩に乗ったロッティが飛び立つと、子供達の頭上で飛び回る。
それを見たライガが目を輝かせる。
「わー、きれいね」
「ね、だいじょうぶでしょ」
「ろってぃ……きれい」
子供達はロッティが空を飛ぶのを見つめている。
子供達には優雅に飛んでいるように見えるのかもしれない。
いや、レンは私と同じかもしれない。
ライガとハナが見蕩れているという風なのに、レンはぼけっと見ている。
ロッティが飛ぶのをやめてライガの眼前に浮く。
「私はロッティ、よろしくね」
「わたしは、らいがだよ」
人見知りしていたはずのライガがロッティと握手する。
さすが子供好きな妖精と言われていただけはある。
あと、髪をわしゃわしゃしなくてよかった。
自己紹介が終わると4人で何やら話している。
すっかり仲良くなった子供達とロッティと何をするか考える。
「釣りにでも行って来いよ」
レオスがそう言うと家から釣竿を4本と桶を持って来た。
竿は細くて丈夫なよくしなる木の先に少し太い糸が結んであり、その糸に浮きと重りと針を付けた簡単なものだ。
「夏も過ぎて釣りにはいい季節だ」
この近くの魚は冬に向けて食欲が旺盛になるので食いつきがよくなるらしい。
暑さも陰りを見せ始めているので、野外で遊ぶにはいいかもしれない。
レオスがが簡単に釣りの方法を教えてくれたのだが、針に餌を付けて川に投げるとしか説明がなかった。
それくらいなら私でも知っている。
餌は川の近くの虫でも付けとけと言われた。
竿を持ってレオスの説明を受けていると、いつの間にか子供達がそばに来ていた。
ハナとレンもやったことない遊びに目を輝かせる。
そんなハナとレンにライガが釣りの説明をしていた。
ライガはやったことがあるみたいだ。
「私の竿が足りないじゃない!」
ロッティがレオスに近づき喚いている。
「すまねな、4本しかない」
レオスは耳をふさいでロッティに謝っている。
「ロッティ、私と一緒にやろう」
わめいているロッティを止める。
「まあ、レンゲが言うなら仕方ないわね」
ロッティはそう言うと自分の定位置かのように私の肩に座る。
子供達が羨ましそうに見ている。
「ロッティ、子供達の肩に乗らないのか?」
「さすがに子供達が可哀相じゃない。それに、子供達の肩じゃ座りにくいわ」
ロッティに言われて子供達の肩を見る。
言われてみればロッティが座れるような肩幅がない。
子供達の頭に座れとも言えないので、子供達には申し訳ないが私の肩に座らせたままにする。
レオスにお礼を言って子供達を連れて川に向かった。




