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食事

 獲物を持って村に帰ってきた。

 もう昼だろうか、太陽を見上げると高い位置にある。

 家の前に着くと獲物を置く。

 そのまま食べてもよかったが、子供達のことを考えると料理をすることも必要だろう。

 そう思い、人の姿に戻ることにする。

 意識を集中すると体が人の姿に戻っていく。

 人の姿に戻ると衣服を着ていない裸の状態だ。

 裸ということに恥ずかしさを感じ家に入る。

 手拭を見つけたときに、襤褸ぼろが沢山あるのを見つけていた。

 自分が着れそうな襤褸ぼろを見つけそれを着る。

 襤褸ぼろを漁っているとき薄手の外套も見つけた。大きさも自分に合いそうなので後で洗って干しておこう。


 獲物を解体するため、家の入り口に置いたナイフを手に取り外へ出る。

 獲物の解体の仕方までは知識にはないようで、詳しいやり方がわからない。

 皮を剥いだり内臓を取るなどの断片的な事だけしか頭に浮かんでこない。

 悩んでも仕方がないので、とりあえず頭をおとす。

 ナイフの切れ味がいいのか黒毛鼠の骨が柔らかいのか、少しの抵抗はあったが簡単に刃が通る。

 そのまま皮を剥ごうとするがうまくいかない。

 ナイフで皮とその内側を切り離しながら剥がす。

 時間がかかってしまったがなんとか剥がすことができた。

 次は内臓を取るか。

 ナイフで腹を割く。

 内臓も食べられるのは分かるが、どれが食べれるか分からない。

 獣の姿なら気にせずそのまま食べるのだろうが、子供達も人の姿になっているはずなので、そんな食べ方をさせられない。

 申し訳ないが内臓は捨てることにする。

 骨の間接部分にナイフを入れ解体する。

 方法がこれで合っているかは分からないが、なんとか食べられそうな状態になった。

 解体した肉に血がついているので井戸で水を汲み洗い流す。


 料理するには火を起こす必要があることを忘れていた。

 火を起こす道具がない。

 獣の姿になれば簡単に火を起こせるだろうがそれでは手間がかかってしまう。

 獣の姿で火が出せるなら人の姿でも火が出せないだろうか。

 試してみるが、口から火は出ない。

 変わりに意識すると指先から火が出ることが分かる。

 吹けば消えそうな小さな火だったが便利なものだ。

 これが女神の力なのか、あの獣の姿のおかげなのかは分からない。

 指先から出る火はどれだけ意識しようがそれ以上は大きくはならなかった。


 村の中にあった薪や小枝を集め家の中に入る。

 炊事場に小枝を置き火を付ける。

 乾燥しているためか簡単に火は付いてくれた。

 枝を足しながら火が大きくなったら薪を乗せる。

 火が安定するまでの間に、見つけておいた塩で肉に味を付けることにする。

 知識があるのに経験がないためか分量などがうまく分からない。

 肉を枝に刺し、軽く塩を振って火で炙る。


 焼けた肉がうまそうな匂いをさせる。

 空腹だったせいか余計にそう感じるのかもしれない。

 肉にかぶりつく。

 かぶりついた瞬間すぐに失敗だと気付いた。

 表面は焼けているのに中まで火が通っていない。

 あと塩も振りすぎたのか塩辛い。

 捨てるのは勿体無いので、水を入れた鍋を用意しその中に先ほどの肉を細かく切って入れる。

 外に出て知識で食べれると分かる草を少し集めてくる。

 他の草との違いがよく分からないが食べれるということだけ分かる。

 その草を先ほどの肉を入れた鍋に入れ火にかける。

 これで塩辛いのも誤魔化せると思いたい。


 改めて調理していない肉を枝に刺し少しの塩をかける。

 今度は火から離した場所で炙ることにした。

 なかなか焼ける気配がないので心配になるが、肉に触ると熱くなっているので問題ないだろう。

 こんな食事で子供達は食べてくれるだろうか。

 肉ばかりではいけないので、何か他に食べるものも探す必要がある。

 色々と考えていると鍋からいい匂いがしてきた。

 スプーンを探してきて汁を飲んでみる。

 塩辛さがなくなり飲みやすい。

 決しておいしい訳ではないが食事としては十分だ。

肉を食べてみる。

肉を噛むと、十分に火が通っており、柔らかい。

 少し臭みはあるがそれ以上に肉の旨みがある。

 草を食べてみる。

 苦い。

 食べられなくはないが苦い。

 汁を飲んで苦みを洗い流す。

 温かい飲み物がお腹に熱を広げるのが分かる。

 そういえば温かい物を口にするなんて初めてのことかもしれない。

 体を温めてくれるこの感じは悪いものではない。

 子供達にも早くこの感覚を教えてやりたい。


 炙っていた肉がいい感じに焼けている。

 鍋を食べている間にも炙る向きを変えたりしたのがよかったのだろうか。

 手に取り噛り付く。

 齧ったとたんに口の中に肉汁が溢れだす。

 臭みも気にならないくらいうまい。

 ゆっくり味わうことも忘れてどんどん食べ進める。

 あっという間に手にした肉は少なくなっていく。

 決して贅沢な食事ではないことは分かっている。

 しかし私にとっては今までにないほどのご馳走に感じてしまう。

 早く子供達に食べさせてやりたい。

 早く子供達と一緒に食事がしたい。

 そう思いながら残っていた肉にかぶりつく。


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