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教会の問題

 許可すんなり下りて、銭湯を作り始めて1ヶ月が経った。

 レオスやドンが声をかけてくれたのか、自警団の人や町民も作るのを手伝ってくれている。

 そのため2ヶ月を待たずに銭湯は完成しそうだ。

 暑さが峠を越したといってもまだまだ日中は暑いので、体調管理には十分に気をつけてほしい。

 この1ヶ月は少しでも資金を稼ぐため、狩りに出ていた。

 基本1日2羽のフライングラビットを狩ってきて、多く狩れた時は銭湯を作りに来てくれている人に振舞った。

 子供達も休憩時間に仕事をしている人に水を配ったりしてくれた。

 初めは知らない人の対応が怖かったが、皆気さくでいい人達だったので気負いせずに話せるようになるのに時間は掛からなかった。

 ロッティは黒毛鼠の教育は順調らしく、簡単な仕事なら出来ると自信を持って言っていた。


 物事が順調に進んでいると思っていた日の夕方、教会にトニーと数人の騎士がやってきた。

 またマリアに用事かと思っていたら、聖堂の前にいた私に近づくと話しかけてきた。

 半分取り囲まれているような状況に気分が悪くなりそうだ。

「お久し振りです。レンゲさん、唐突な質問で悪いのですが、あなたは女神にお会いした事がありますか?」

 本当に唐突な質問だった。

 マリアが言ったのだろうか?

 マリアが私の秘密を漏らすとは考えられないし、質問の仕方も探っているようで変だ。

 私が答えずに疑った目を騎士達に向けていると、騎士達が小声で何か話している。

 目の前でそんな事をされるとあまりいい気はしない。

「答える気はない」

 そんな騎士達に言葉をぶつける。

「否定されないんですね。その反応だけで十分です」

 騎士達の中で1番偉そうな騎士が私の態度だけで答えを決め付ける。

 その時、聖堂の扉が開かれた。

 マリアが私のそばに駆け寄り、私の前に立つ。


「レンゲさんに勝手に詰問しないで下さい」

 マリアが普段と違う力強い態度を騎士達に見せる。

 しかし、私はマリアのすぐ後ろにいるから気付いてしまった。

 マリアの体が小さく震えている。

 それなのに私を必死で庇おうとしている。

 状況が分かっていない自分が歯痒かった。


「詰問? ただお尋ねしていただけですよ?」

 先ほどの偉そうな騎士がマリアの必死の態度などおかまいなしといった感じで飄々(ひょうひょう)としている。

「騎士ともあろう者が1人の女性に質問するのに取り囲むんですか?」

「誤解ですよ。 話すために近づいたらたまたまこんな形になっただけです」

 マリアが私の手を引いてドアの近くに下がらせる。

「シスターマリア、あなたは教会に何か報告していない事がないですか? 報告書では教会に大きな犬が現れた事と、誘拐犯が捕まった事、教会で保護していた住人が1人亡くなって変わりに子供達の親が現れたとしか記載されていませんでした」

 その言葉を聞いて状況が少しだけ分かってきた。

 マリアは私がその大きな犬である事を教会へ説明していない。


「報告に嘘はありませえん」

「嘘はないかもしれませんが、足りない報告もあるんじゃないですか? 例えば、教会の資金が増えたとか、大きな犬の正体とか」

 偉そうな騎士がマリアを冷たい目で見ている。

 これが教会に仕える騎士の態度なのかと見ていて吐き気がしそうだ。

「資金に関しては寄付と、亡くなった男性からの食事代として頂いたものです。教会の維持を大きく超える範囲の資金ではないので報告は不要かと。大きな犬の正体に関しては事件には関係がありません」

 マリアの言葉を聞いて偉そうな騎士が鼻で笑う。

 そのままマリアに近づき肩に手を置く。

「それはシスターが勝手に判断することじゃないですよ」

 マリアの目を見ながら冷ややかに言った。

 その目もとても冷たいものだった。

 マリアの体の震えが大きくなる。

 我慢が出来すマリアの肩に乗っている手を払いのけ、震えていたマリアを抱きしめた。

 近くにいた偉そうな騎士の胸を手で押し下げるとそのまま顔を睨みつける。

「おい、マリアを怖がらせるな」

 偉そうな騎士が私の行動に意外そうな顔をする。

「怖い怖い。随分と仲がいいんですね」

 私は何も答えすにそのまま睨み続ける。

 偉そうな騎士はそんな私の態度に両方の手のひらを上に向け、両肩をあげる。

「分かりました。今日はこれで退散します。そうそう、私はスレイと申します。以後お見知りおきを」

 そう言って偉そうな騎士は他の騎士を連れて教会から出て行く。

 トニーがこちらに近寄ると私達に深く頭を下げる。

「すみませんでした」

 そう言うと他の騎士達を追い駆けて行った。


「あの、レンゲさん?」

 マリアが私の胸の中で呟く。

「どうした?」

「もう離してもらっていいですか?」

「ああ」

 そう言ってマリアを抱きしめていた手を離す。

 マリアの震えは収まったようだが、顔が赤くなっていた。

「大丈夫か?」

「だ、大丈夫です。急に抱きしめられて恥ずかしかっただけです」

 マリアが赤くなった顔を両手で隠す。

 マリアが落ち着くのを待って今回の経緯を聞く。


「私の報告書を送った後すぐに数名の騎士達がこの町に来て自警団から聞き取りをしていたようです。誘拐犯の事を確認しているだけだと思っていたのですが、大きな犬に関しても調べていたようです」

 マリアの説明に私は眉間にしわを寄せる。

「私の事を調べていたのか? どうしてすぐ教えてくれなかったんだ?」

 マリアを責めるつもりはないが、私のせいでマリアに何かあっては困る。

「私もトニーさんから聞いたばかりです。それにトニーさんが大丈夫と言っていたので、余計な心配をかけまいとレンゲさんに報告しませんでした」

 私を気遣っての行動だった。

 トニーが最後に謝りに来たのは自分の言葉が嘘になってしまった事の謝罪だったのだろう。

「あのスレイとかいう偉そうな騎士はまた来そうだな」

「はい。あの騎士はあまり良い噂を聞かないですね。権力ばかりに執着しているとか」

 マリアは私の意見に同意した後、嫌そうな顔をしてスレイの事を教えてくれた。

「そんな感じの男だったな」 

 私も一緒に嫌そうな顔をする。

 そうするとマリアがくすりと笑ってくれた。

 そんなマリアを見て私も笑う。

 また来ると言っていたが、もう来ないでほしいものだ。

 子供達の顔を見れば気分も晴れると思い、マリアを連れて部屋へ向かった。

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