家族会議
ドンの鍛冶屋を出てシティの家に向かう。
まだ昼前後といった時間帯だ。
太陽の日差しが暑く、歩いているだけで汗をかく。
夜は土地柄なのか涼しい風が吹き寝苦しさは感じないのだが、さすがに日中は暑い。
シティの家に着くと扉を叩く。
しばらく待っても返事がないのでもう一度叩こうとすると扉が開いた。
シティが顔を出し、私の顔を見ると笑みを浮かべる。
「おや、レンゲじゃないかい。どうしたんだい?」
シティに挨拶をすると、銭湯の事を説明した。
「ほー、面白い事を考えるね。町のものがすぐに受け入れるかは分からないけど、やってごらんよ。許可は必ずとってやるよ」
シティが年寄りとは思えない自身に満ちた顔をしてにやりと笑う。
すごく頼もしい。
「ありがとう」
「こんなんじゃお礼にもならないよ。なんかあったら頼ってきなよ」
そう言ってくれたシティに頭を下げる。
「そういえばシティはタイガの祖母なんだな」
先ほどドンから聞いた事を思い出しシティに尋ねる。
「なんだい、タイガを知ってるのかい?」
「ああ、友人だ」
「それならこの前来た時先に言ってくれればよかったのに。私だって大切な孫の友人にならお茶くらい出したよ」
シティがそう言ってくれるが、私も知ったのは今日になってだ。
「気にするな」
「今度タイガとお茶でも飲みに来な」
「ああ」
「あ、ひ孫を忘れるんじゃないよ」
そう言ったシティの顔は優しい顔のお婆ちゃんだった。
孫やひ孫には甘いのだろう。
シティに挨拶をして教会に戻った。
教会に戻ると子供達が遊んでとせがむので一緒にボール遊びをする。
マリアも誘おうとしたが、今日も昨日のトニーとかいう騎士が来ていてマリアと何か話していた。
仕方ないので3人でボールをパスして遊んだ。
しばらく遊んでいるとロッティが帰ってきてボール遊びに混ざる。
さすがにロッティにはボールが大き過ぎると思ったのだが、その小さい体でボールを上手に操る。
「すごいな」
感心してつい呟いてしまった。
「まあね。これくらい余裕よ」
子供と遊べるのが嬉しいのか、子供達に負けないくらいの笑顔で遊んでいる。
「ロッティ……じょうず」
「ロッティ、すごいね」
子供達にそう言われて余計に嬉しそうにしている。
子供達も遊び相手が増えて嬉しそうだ。
4人で夕食前まで遊んでいた。
夕食と風呂を済ませる。
皆で一緒に寝るので特に用事がない限り自然と部屋に集まる。
私は銭湯を作る事を皆に話した。
「銭湯というのは町の人がお金を払ってお風呂に入るんですね」
マリアは初めて聞く施設に驚いている。
マリアが私に近づき耳に顔を近づける。
「それも前の世界の知識ですか」
耳に息が当たってくすぐったい。
マリアの言葉に首を縦に振って肯定する。
「せんとー」
「おおきい……おふろ」
子供達はよく分かっていないようだ。
「大きいお風呂か、なかなか面白そうね。蒸し風呂っていうのも興味があるわね」
ロッティは私の説明から想像を膨らませて楽しみにしている。
「場所はどうするんですか?」
マリアが首をかしげて聞いてくる。
銭湯の説明だけで場所を説明していなかった。
「教会の横のラド土地の空き家だ。ラドには許可は貰った」
「え? 隣ですか? もう許可まで貰っていたんですね」
マリアが私の言葉にびっくりしている。
「近くていいじゃない」
「ちかくて……べんり」
「およげるー」
レンが風呂で泳ごうとしているが、迷惑になるし、のぼせたり怪我をしないか心配なのでやめてほしい。
「レンゲさんが1人でやるんですか?」
「あっ」
マリアの言葉に従業員の事を考えていなかった事を気付かされた。
私1人ではさすがに難しい。
接客と風呂を焚いたり水の管理で最低2人、余裕を持って4人はほしい。
「わたし……てつだう」
「あたしもー」
子供達が手を上げ手伝いを申し出る。
子供達の優しさが胸に染みる。
子供達にあまり危険な事をさせられないのでやはり他に雇うべきだと思う。
「ふっふっふっふ」
私が悩んでいるとロッティが不適な笑い声を出す。
「どうしたロッティ?」
「黒毛鼠を使いましょう」
思ってもいなかった事をロッティが提案する。
「黒毛鼠に出来るのか?」
「まだ時間はあるみたいだし、簡単な事なら出来るわよ。レンゲも黒毛鼠が不気味なくらい器用に色々するのは知ってるんでしょ?」
たしかに包帯を巻いたり、看板を持ったり器用にやっていた。
頭も悪くないと思う。
ロッティの不気味なという表現が否定できない。
「私も黒毛鼠の監督をしながら手伝うわよ。その代わり、お風呂は無料にしなさいよね」
「ああ、それは構わない」
ロッティがその言葉を聞くと両手を上げて嬉しそうにしている。
「私も教会が忙しくない時は手伝いますね」
「さすがに大変だろ」
マリアまで手伝わせるのは悪い気がする。
「私だけ仲間外れみたいじゃないですか」
マリアが拗ねた顔をする。
そんなつもりはないのだが、1人だけ手伝わない状況が嫌なようだ。
「暇なときに簡単な仕事なら」
「はい」
マリアが嬉しそうに微笑む。
その後も寝るまで皆で銭湯の話で盛り上がった。
まだ出来てもいないのにおかしいとは思ったが、その楽しそうな雰囲気にあてられて私もその話を一緒に楽しんでいた。




