ワインを飲む
ロッティと教会に帰るとマリアが樽を見て驚いていた。
子供達も普段見慣れない物を見てはしゃぐ。
「お酒だから飲めないぞ?」
そう言うと残念そうな顔をした。
それでも珍しかったのか樽を叩いたりして遊んでいる。
怪我をしないように樽に乗ったり倒したりしないように注意だけはしておいた。
重いものを運んだせいで汗をかいたので風呂に入りたい。
「ロッティ、一緒に風呂に入るか」
「風呂って何よ」
ロッティは風呂が分からないのか困った顔をしている。
そういえば先ほどラドと話している時も意味が分からないといった顔をしていたのを思い出す。
「裸でお湯に浸かるんだ」
それを聞いたロッティは顔を赤くする。
「わ、私の裸が見たいの!?」
そういう意味ではないのだが、ロッティが慌てている。
「お湯に浸かるんだから裸だ。マリアや子供達と一緒に入ったりするぞ。嫌ならやめとくか?」
ロッティが顔が熱いのか、手で顔をあおいでいる。
「別にあんた達となら入ってもいいわよ」
なんだかその姿が可愛かったので、ロッティを連れて風呂に向かった。
「ちょ、ちょっと、今からなの? 心の準備があるでしょ」
「そんなもの必要ない」
着替えだけは必要なので用意した。
脱衣所に着くと服を脱ぐ。
「あんた、躊躇なく脱ぐわね。どこでも脱ぐの?」
「さすがに知らない人や男の前では脱がん」
「それを聞いて安心したわ」
そう言ってロッティも服を脱ぐ。
見た目どおり体も細く胸も慎ましい。
それでもロッティにはそれが似合っていて美しささえ感じる。
「見すぎ! そんなに見られると恥ずかしいわよ」
私が見ているのに気付いて体を隠す。
マリアといい、ラビーといい、皆気にしすぎな気がする。
風呂に入ると体を洗いながらロッティにも風呂の入り方を説明した。
体を洗い終わると2人で湯船へ。
ロッティは体が小さいので桶にお湯を入れて湯船に浮かべてそれに浸かる。
「やばいわね。すごい気持ちいい。水浴びとは違う気持ちよさがあるわ」
ロッティも風呂が気に入っている。
「あ! そうだわ。ちょっと待ってなさい」
そう言って手拭を体に巻いて外に飛んでいった。
先ほどまでの羞恥心はどこにいったんだろうか。
少し待つと、ロッティがコップ持ってきた。
自分の小さいコップも持っている。
食事の時も思っていたが、ロッティは体に似合わず力がある。
さすがに重いものは持てないが、料理が盛られた皿くらいなら移動させれる。
ロッティからコップを渡されて中を見るとワインが入っていた。
貰ったワインを注いできたようだ。
ロッティが私のコップにこんっとコップをぶつけるとワインを飲む。
「はー、このワイン美味しいわよ。 お風呂で飲む酒は予想したとおり美味しいわね」
行動も発想もおやじ臭いと思った。
それでもロッティがやると絵になるから不思議だ。
私もロッティに礼を言うとワインを飲む。
いい香りとほのかな渋みと甘みが口に広がり、エールとは違った味わいがある。
「悪くないな」
ワインよりもロッティとこうして風呂で飲んでいる状況か気に入った。
2人でゆっくりとワインを味わいながら風呂に浸かる。
「そういえば、レンゲは何で犬になれるのよ?」
ロッティが疑問に思っていたであろう事を聞いてきた。
なんと答えて言いか分からない。
ロッティにも話していいかもしれない。
「獣になれる力をもらったんだ」
私の言葉にロッティが驚いた顔をする。
「まさか、女神から貰ったの?」
誰に貰ったと言う前にロッティが答えを言い当てる。
「知ってるのか?」
「私はすごい妖精って言ったじゃない。女神くらい会った事あるわよ」
自慢げに胸をそらすと桶がひっくり返りそうになる。
慌てて体重を前に持ってきて冷や汗をかいているその姿からはすごさを感じない。
「あの犬の姿を見たときから何となくは思ってたわよ。どうせセーイスでしょ」
答えを言い当てただけではなく女神の名前まで言ってのけた。
それも呼び捨てだ。
「知っているのか?」
「有名な女神だしね。まあ、私のほうが美しいけどね」
そう言ってまた胸をそらして桶がひっくり返りそうになる。
学習をしていない。
その姿が可笑しくて笑ってしまった。
「笑ってる暇があったら助けなさいよ」
そんなロッティの行動にまた笑ってしまう。
ロッティと風呂に入るのは子供達と違った面白さがあった。
次は子供達とロッティと一緒に入ってみたいな。
風呂から上がると、ロッティはラミットが作ってくれた服を嬉しそうに着ていた。
前の服は植物を加工して作った服だったので肌触りが違うらしい。
小屋に戻ると子供達とロッティはお喋りをして楽しんでいた。
私は折角なのでマリアにもワインを注いで来た。
「いいんですか?」
「ロッティと少し飲んだが、悪くなかったぞ」
マリアは両手でコップを持つとワインを見つめる。
「どうかしたのか?」
すぐに飲まないのが不思議だった。
「いえ、お酒を飲んだ事がなくて。あと綺麗な色だなって思って見てました」
初めてのお酒で不安なのかと思い私用に持ってきていたワインをマリアの前で飲む。
マリアもそれを見てワインを口にした。
「あ、少し甘くて飲みやすいです」
「私もまだ飲みたいわ」
ワインを飲んでいる事に気付いたロッティがこっちに来た。
子供達も私のカップを覗いている。
「それが、おさけー?」
「きれいな……いろ」
子供達が見やすいようにカップを顔に近づけてやる。
ハナもレンもコップに顔を近づけ匂いを嗅いだ。
「よく、わからない」
「いい……におい?」
子供達はコップに指を突っ込むと、その指を舐める。
「うえー、おいしくない」
「へんな……あじ」
お気に召さないようだ。
気に入られても困るからよかった。
「こら、お酒だから舐めるのもだめだ」
口に味が残るのか変な顔をしていたので、水を汲んできて飲ませてやる。
そのついでにロッティのワインも注いで来た。
部屋に戻るとマリアが揺れている。
座った状態で上半身がゆっくり円を書くように動く。
「なんだか気持ちよくなってきました」
ロッティがそんなマリアから、ワインをこぼさないようにコップを取る。
マリアは酒に弱かったようだ。
「あ、どうして私のワインを取るんですか? ロッティちゃん、めっ! ですよ」
人差し指を立ててロッティを叱っている。
「どうすんのよこれ」
ロッティが救いの目を私に向ける。
飲ませた私が悪いがどうしようもない。
「水を飲ませて横にするか」
そんな私たちの心配をよそに子供達がマリアに近づく。
「マリア、かおあかーい」
「なんだか……おもしろい」
いつもと違うマリアを見て子供達が面白そうにしている。
「レンちゃんも、ハナちゃんも、可愛いですねー」
そう言って子供達を抱きしめ藁のベッドに横になる。
子供達は楽しそうに笑っているが、そのまま寝てしまったマリアが子供達を離さない。
「おかあさん、たすけて」
「にげれない……」
楽しそうにしていたが逃げれないことに気付いて子供達が困惑している。
「がんばれ」
そう子供達に声援を送ると子供達はなんとか逃げ出そうともがくが、しばらくすると諦めてマリアに抱き付いて眠ってしまった。
その光景を見守りながら静かになった部屋でロッティとワインを飲みながら語らった。




