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仕事を考える

 次の日、朝食を済ませて、マリアと子供達が教会の仕事をし始めると部屋に戻る。

 ロッティは今日もラミットの所に行っている。

 送らなくていいわよ、と言って飛んでいった。


 部屋に入ると座って今後の事を考える。

 今は特にお金に困っていないが、セイゾーが残してくれたお金を生活のために食い潰したくはない。

 この金は子供達のために使ってやりたいと思っている。

 私も何かこの町で出来ることはないだろうか。

 狩りで生計を立てるのもいいかもしれないが、生活が安定しそうにない。

 何かいい方法はないだろうか。

 セイゾーが働いていた場所で働かせてもらうのもいいかもしれない。

 とりあえず、レオスに相談してみよう。

 せっかくレオスの所に行くのなら、子供達も連れて行ってライガと遊ばせたいと思い、子供達が手伝いが終わるのを待った。


 昼前には子供達の手伝いは終わった。

 マリアに事情を話して子供達とレオスの所に向かおうとすると、教会の前に騎士がいるのを見つける。

「あなたがレンゲさんですか?」

 騎士が突然話しかけてきた。

 見た目は若く顔立ちも整っている。

 何故か私の名前を知っている。

「ああ」

 子供達を後ろに隠す。

 それを見て警戒しているのが伝わったのか騎士が慌てる。

「警戒しないでください。申し遅れました、私はトニーといいます。レンゲさんのお名前はシスターマリアからの報告書を見て知っていました。今日は事実確認のため訪問しました」

 騎士が教会に来た理由を説明する。

 すぐにマリアが騎士がいることに気付き、私達はすぐに出かけるように促した。

 マリアにしては珍しい反応だ。

 騎士と二人きりになりたかったのだろうか。

 騎士の顔を思い出す、セイゾーより顔立ちは整っているが惹かれる気持ちは微塵もなかった。

 気を取り直して子供達とレオスの所へ向かう。


 事務所のドアを叩くとレオスが出てくる。

「おう、レンゲじゃないか。どうした?」

 尋ねてきたのが知り合いだと分かると、暑苦しい顔に笑顔を浮かべる。

「用件の前に、ライガはいるか?」

 私の言葉を聞いて、レオスが事務所から出ると子供達がいる事を確認する。

「チビも連れてきてたのか。ライガは家にいるぞ。付いてきてくれ」

 レオスはそう言って、事務所の近くにある家に行くと扉を開く。


「おーい、ライガ。レンゲのとこのチビが遊びに来たぞ」

 レオスが大声で叫ぶと、外からでも足音が聞こえるくらいの勢いでライガが飛び出てきた。

「パパ、本当!? どこどこ?」

 出てきたライガがきょろきょろしている。

「パパに会うより嬉しそうじゃねえか。ほらあそこだ」

 レオスが冗談交じりで言うと、ライガの体の向きを私達の方に向ける。

 ハナとレンを発見したとたん目を見開いてこちらにすごい勢いで走ってきた。

 ハナとレンも走り出す。

 いつ止まるのかと思っていたらそのまま3人でぶつかった。

 大丈夫なのかと思ったが3人共楽しそうに笑っている。

 心配になるのでもう少し大人しく遊んでほしい。

 レオスに言われて子供達は家の日陰で遊ぶ事になった。

 私はレオスと一緒に事務所に行くと、以前タイガとお茶をした席に座る。


「それで、何かあったのか?」

 反対側に座ったレオスが用件を聞く。

「私を雇ってくれないか?」

 それを聞いたレオスが気まずそうな顔をする。

「すまん、もう新しい奴がギルドの紹介で働いてる。セイゾーほどいい給料じゃないがな」

 そう言って私に頭を下げた。

「いや、急に言った私も悪かった」

 レオスに頭を下げる。

「おいおい、よしてくれ。レンゲは悪くない。頭を上げてくれ」

 レオスは慌てて私の頭を上げさせた。

「私が働ける場所はないだろうか?」

 慌てているレオスにそう聞くと、レオスは腕を組んで目を閉じ考えだす。

 しばらくそうしていると目を開き何か思いついた顔をする。

「レンゲはセイゾーと同じ出身地なのか?」

 仕事先が思いついたのかと思ったら予想もしていない質問をされた。

「同じだな」

 同じ世界から来たし、前の世界でも同じ地域に住んでいたので嘘ではない。

「なら、セイゾーみたいに風呂のことも分かるんだよな?」

 知識としてはある。

 セイゾーほど色々作ったりはできないが。

「ああ、分かるぞ」

 レオスがしめしめといった顔になる。

 少し怪しい顔だ。

 肉食獣の顔でそんな顔をしたら回りが怖がりそうだ。


「この町に人が入れる風呂を作ったらどうだ?」

「風呂を?」

 レオスの提案に私が驚かされる。

 銭湯を作れという事か。

「ああ、町の人は水浴びくらいしかしないから、すぐには受け入れられないかもしれないが、気に入る人は多いはずだ」

 レオスの言葉を聞いて私も考える。

 ラビーも羨ましがっていたし、悪くはないかもしれない。

「うちのかみさんもでかい風呂が出来れば喜ぶしな。昨日風呂が狭いって文句言われたぞ」

 レオスは笑っているが、そっちが本命じゃないだろうな。

 しかし、場所や資金がない。

「銭湯を作るにしても金や場所はどうするんだ?」

「せんとう?」

 公衆浴場と言った方が分かりやすかったと言ってから気付く。

「公衆浴場を銭湯と呼ぶんだ」

「やっぱセイゾーが住んでたとこは変わってるな。場所はそうだな……、教会横のラドの家の土地が空き家だろ? あそこを改装できたら楽だな」

 教会とラビーの家の間にあるのは空き家だったのか。

 ぼろかったし、人が住んでいないのも納得できる。

「それはラドに聞いてみないと分からないな」

「金もあそこを改装するならそうかからないし、足りないなら貸してやる」

「いいのか?」

 そこまでレオスにしてもらうのは悪い気がする。

「困った事があれば相談しろと言ったのは俺だし、セイゾーのお陰でかなり余裕が出来たしな。儲かったら返してくれればいい」

 レオスは笑顔でそう言った。

 ライオンに近い顔のせいか太陽が笑っているような暖かい笑顔だ。

「ありがとう、助かる」

 レオスに深く頭を下げた。

「よせよせ、まだうまくいった訳でもない」

 レオスの言う事はもっともだが、レオスの気持ちと行動だけでも十分にお礼を言いたくなる。

「大き目のを作るとなるとドンにも相談しないといけないけどな」

「私もラドに相談しないとな」

 とりあえず、銭湯の考案だけでもドンに伝えようと、2人でドンの鍛冶屋へ行く。


 鍛冶屋はレオスの職場の近くにあった。

 道沿いに建物があり、奥に鍛冶場があるのか大きな釜や煙突が見える。

 レオスに続いて鍛冶屋に入るとドンがいた。

 農具を手に持ち点検しているようだ。

「ドン、レンゲを連れてきた」

「何かあったのか?」

 レオスの言葉にドンが不思議そうな顔をする。

「実はな……」

 レオスが先ほどの話をドンに説明する。

 それを聞いてドンがしばらく色々考える。


「10人くらい入れるのなら作れるぞ」

 かなりの大きさだ。

 男用と女用を分けても20人が一度に利用できる。

 ふと疑問が頭をぎる。

 不特定多数が利用する銭湯ではお湯を交換する必要がある。

 そのことをドンに説明する。


「レンゲもセイゾーみたいに変な事を考えるな。お湯がそのままじゃ駄目なのか?」

 駄目ではないが衛生面も考慮するなら定期的に交換したい。

「なら、風呂とは別にお湯を沸かすだけの桶を作って交換する前に沸かしておけば効率がいいだろう」

 ドンが案を出してくれる。

 頭に薪ボイラーが浮かんだが、構造が分からない上に技術的に問題がある。

 セイゾーなら構造も分かったのかもしれないが。

 それから3人で色々と相談し、川の水を引いてきてお湯を沸かし、井戸の水と混ぜて温度を調整する仕組みを考えた。

 排水は直接川に流すのではなく、一度小さな池に溜めて冷ましてから川に戻す。

 これには水を少しでも綺麗にして流すためでもある。


 蒸し風呂の話をすると、面白そうだとドンが乗り気になって、風呂釜で風呂用のお湯を沸かすのとは別に、蒸し風呂にも利用できる構造を考える言い出した。

 結構な時間話し合っていたが、まだラドから許可を貰っていない。

 2人は大丈夫だろと言っていたが、私は心配だ。

 後で確認を取りに行くことにする。

 もう遅くなったので子供達を連れて帰らないといけないことを伝えると、レオスはもう少しドンと話して帰るらしく、家には勝手に上がってくれと言われた。

 防犯意識はないのだろうか。

 私は子供達を迎えにレオスの家に行く。


 レオスの家に行くと、子供達は泥だらけになっていた。

 どうやら泥団子を作って遊んでいたようだ。

「見てみてー」

「これは……すごい」

「わたしのもみて」

 子供達が泥団子を見せに来る。

 手のひらサイズの団子を大事そうに持っている顔は誇らしげだ。

「すごいな」

 そう言って子供達の頭を撫でると満足そうに笑った。


「レンゲ、帰ってきたのかい」

 タイガが奥から出てくる。

 タイガは仕事から帰るとこの惨状を見て風呂を沸かしたらしい。

 私も帰ったらすぐに沸かさないといけないな。

 タイガが風呂に入って行けと言ったが、着替えもないので帰ると伝え、その気持ちにお礼を言った。

 タイガとライガに挨拶して帰る。

 子供達は団子を大事そうに持っている。

 団子は持って帰るのか。

 大事そうにしているので、だめとは言えなかった。  


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