子供達の水遊び
教会への帰り道。
太陽が昇ると暑くなり日差しも強くなってきた。
今から帰れば昼には教会へ帰れるなと思いながら広場を歩いていた。
「おーい、レンゲ」
突然私を呼ぶ声が聞こえて立ち止まる。
辺りを見回ると、私に手を振っているタイガを見つける。
その横にはライガの姿もあった。
タイガはライガを連れて私の方に歩いてくる。
「やっぱりレンゲだった。あんたの髪は目立つからすぐに分かったよ」
タイガはそう言っているが、私からしたらタイガとライガの髪もかなり目立つ。
ライガに至っては髪型と髪の派手さでかなり目を引く。
「2人共、こんにちは」
「こんにちは」
「レンママ、こんにちは」
ライガの呼び方にびっくりした。
何故レンママなんだ。
「あはははは、ライガはレンゲの事をレンママって呼ぶのか」
タイガが面白そうにしている。
レンのお母さんだからレンママなんだろうか。
そう考えると悪い気はなしないし、ママと呼ばれるのも新鮮だ。
「今日はどうしたんだ? 買い物か?」
タイガが籠を持っているので何か買いに来たのかと予想した。
「正解、夕食の買出しだよ」
予想通りだったようだ。
「レンゲも買い物かい?」
「いや、私は用を済ませて帰るところだ」
「それで子供達がいないのか」
子供達がいないのでライガが少し寂しそうにしている。
ライガを見ていると私に近寄ってきて服を引っ張ってくる。
「どうした?」
「レンとハナはいえにいるの? あそびたい」
私を見上げて純粋な瞳を向けられると、自分の子供ではなくてもグッと来るものがある。
膝を折りライガと目線を合わせる。
「こっちは大丈夫だ。タイガに遊びに行っていいか確認してこい」
私の言葉にライガが首を大きく縦に振るとタイガの方を向く。
「ママ、遊びに行っていい?」
「おう、行ってこい。レンゲ、面倒をかけてすまないな」
「気にするな。子供達も喜ぶ」
そう言うとタイガが笑みを浮かべるので、自然と私も微笑み返した。
「行くか」
ライガにそう言うと、ライガが私の手を握る。
「て、つないでいい?」
もう繋いでいるが、もちろん断る気はない。
「ああ、いいぞ」
「私の子供なのにレンゲに懐いてる」
タイガが少し拗ねた顔になる。
逆の立場を考えるとタイガの気持ちも分かる。
「タイガ、拗ねるな。レンとハナの手を握っていいぞ」
「両手に花だね」
そう言って笑うとタイガはライガをよろしくと言って北に向けて帰っていった。
「私達も行くか」
「うん」
ライガを連れて教会へ戻る。
教会へ戻ると子供達はもう掃除は終わっていた。
ライガを見つけると、子供達は急いでこちらに走ってくる。
「あー、ライガ、いらっしゃい」
「ライガ……あいたかった」
ライガも私の手を離すとハナとレンに駆け寄り嬉しそうにしている。
「わたしもあいたかったよ。あそぼ、あそぼ」
3人で仲良く部屋の方に走っていった。
「あれ? 今のはタイガさんの子供ですか?」
マリアがその様子が見えていたのか私の所に来て確認する。
「ああ、広場で会った」
「名前はライガちゃんでしたっけ?」
「ああ」
マリアもタイガの娘を知っていたようだ。
「今日は暑いですから気をつけないといけませんね」
マリアが空を見上げる。
私も見上げると、太陽が容赦なく照っている。
「水遊びでもさせるか」
ふと思った事を口にする。
「川に行くんですか?」
マリアは川で水遊びをすると思っている。
「いや、風呂に水を溜めて」
「なるほど、遊び終わっても水は夜のお風呂に使えますね」
マリアが納得したように頷いている。
マリアも反対はないようなので、早速風呂に水を溜めに行く。
マリアは子供達の様子を見に部屋へと入っていった。
暑くなってくると風呂に水を入れるのにも汗をかいてしまう。
私も水浴びがしたくなってくる。
ある程度風呂に水が溜まったので子供達を呼びに部屋へ入る。
部屋ではマリアが子供達に板芝居を読んでいた。
ライガが目を輝かせて見ている。
中断させるのも悪いので終わるまで待っている。
板芝居が終わると子供達に声をかける。
「暑いから風呂に水を溜めたから水遊びをするか?」
それを聞いて子供達が興奮しだす。
「するー」
「みずあそび……する」
「わたしも、やりたい」
どうやらライガも水遊びは好きのようだ。
子供達を連れて風呂へ行く。
服が濡れても困るので子供達に裸になるように言うと、嬉々として服を脱ぎだした。
早く水遊びをしたい気持ちが行動に現れている。
服を脱いだ子供達は風呂に入る。
「つめたーい」
「でも……きもちいい」
「わたしのいえより、おふろがおおきい」
驚いた事にライガの家も風呂があるようだ。
レオスがこの風呂作りを手伝ったのを考えると当然なのかもしれない。
「だれが、ながくいきを、とめれるかしよ」
「いいよ……」
「わたしまけないよ」
水のかけ合いでもするのかと思ったが、予想外な遊びが始まった。
子供達は一斉に水に顔を浸ける。
少しするとハナが顔を上げる。
顔を上げたとき目を力一杯に閉じている顔が面白い。
次はライガだった。
レンに負けたのを悔しそうにしている。
ライガのすぐ後にレンも顔を上げた。
「あたしのかちー」
両手を上げて嬉しそうにしている。
「もういっかい」
ライガがもう一回と言って、また3人は顔を浸ける。
次はライガが勝った。
何回かやっていたが、レンとライガはいい勝負でハナはいつも負けている。
「あれ……もってくる」
そう言うとハナが裸のまま風呂を出て行った。
敷地内とはいえ、全裸で外に出るのはやめてほしい。
少し待っているとハナが木でできたアヒルみたいな物と船みたいな物を持ってきた。
「ハナ、それなんだ?」
ハナに聞いてみる。
「セイゾーが……つくってくれた」
そう言ってハナが風呂にそれを浮かべた。
どこにしまっていたんだろうか。
セイゾーはそんなものまで作っていたのか。
ライガが風呂に浮かんだアヒルと船を見て目を輝かしている。
「なにこれ、すごいね」
木の下に重りもつけているらしく、真っ直ぐに浮かんでいる。
3人で水面を波立たせてアヒルや船が水面を移動するのを楽しんでいる。
きっと子供達とお風呂に入る時用にセイゾーが作ったんだろう。
しばらく子供達が遊ぶのを見守って、体があまり冷えてはいけないので水遊びをやめさせる。
「もっと、あそびたい」
「もうすこし……」
「もうちょっとだけ」
3人の瞳に勝てずもう少しだけ遊ばせた。
さすがに2回目のお願いは聞かなかった。
水遊びが終わって皆で日向ぼっこをしているとタイガがライガを迎えに来た。
タイガは風呂の小屋を見て、すぐに中を確認する。
「風呂がでかい。私の家の倍くらいあるんじゃないか?」
風呂場の中で叫んでいる。
外に出てくると羨ましそうな視線を私に向ける。
「レンゲの家の風呂大きくていいね」
「皆で入ったりするからでかくないと困るだけだ」
ラビーも来たら5人で入ったりするので、あれでも狭くなってしまう。
「私のとこ足も伸ばせないよ」
タイガが悲しそうな顔をする。
この町では風呂があるだけですごいとラビーが言っていたが、タイガは不満そうだ。
確かに、風呂では足を伸ばしたい。
「入りに来たらいい。ラビーも入りに来てる」
「本当かい?」
タイガが嬉しそうにする。
余程嬉しかったのだろう、風呂を作ったレオスが悲しまないといいのだが。
「タイガさんお久しぶりです」
マリアがタイガの声を聞いてやってきた。
「お、マリア久しぶりだね」
タイガがマリアに片手を上げて挨拶している。
少しだけ3人で他愛のない話をするとタイガが帰ると言い出した。
食事の準備をしないといけないそうだ。
「ライガ、帰るよ」
タイガに呼ばれてライガがやってくる。
「ママ、おふろにうかべるのつくって」
さっきの水遊びの時のおもちゃの事だ。
「お風呂に浮かべるの?」
タイガが分からないといった顔をするので干してあった実物を見せる。
「ほー、器用なもんだね。レンゲが作ったのかい?」
セイゾーが作った事をタイガに説明する。
「セイゾーは色々不思議な物を作るんだね」
タイガも感心している。
「ライガ、パパに作ってもらいな。ママには難しそうだ」
ライガの頭を撫でながらタイガが言う。
「うん、パパにおねがいしてみる」
難しいものでもないしレオスなら作れるだろう。
ライガは少し寂しそうにしていたが、ハナとレンとまた遊ぶ約束をしてタイガに連れられて帰っていった。
ハナとレンも寂しそうにそれを見送った。
ロッティが帰ってきたのはタイガとライガが帰った後だった。
少し疲れた顔で子供達に謝っていた。
その夜は遊びつかれたのか横になるとすぐに子供達は眠ってしまった。
友達遊べた事が嬉しかったのか満足そうな寝顔をしていた。




