ラビーの家で食事
「ただいまー」
ラビーがそう言って家に入る。
私達も挨拶をするとラビーに続いた。
「あら、おかえりなさい。皆も一緒だったのね」
「教会の前で出会ったよ」
ラビーは鞄を土間から上がる場所に置く。
「もう食事の用意が出来るから部屋に入ってて」
「分かった、皆こっちだよ」
ラビーの指差した先は昨日私がお邪魔した部屋だった。
ラビーが部屋のドアを開くとすぐに閉める。
ラビーが部屋に入らずにいるので自然と皆がラビーの後ろに集まる形になった。
「どうした?」
部屋に入らないラビーに声をかける。
「部屋になんかいた」
ラビー以外の皆で顔を合わせると自然と笑みがこぼれる。
ラビーは知らなかったのだから当然だろう。
「ローティーが、いたの?」
「ローティー……なにしてた?」
子供達がラビーに質問する。
「え? ローティーがいるの知ってるの? なんかお菓子食べてた」
またお菓子を食べてるのか。
今から食事だというの夕飯はちゃんと食べれるのだろうか。
「ラビー、大丈夫よ。部屋に入りましょ」
マリアに促されて皆で部屋に入る。
「遅かったじゃない」
テーブルに座ってローティーがお菓子を食べている。
行儀が悪いと思ったが、ローティーの体格では椅子には座れないのか。
部屋にはローティーだけでラドはいなかった。
「待たせてすまない」
「いいわよ。美味しいお菓子をご馳走になってるから」
ローティーは特に気にした様子はない。
「説明してもらっていいかな?」
ラビーが状況を理解できないでいる。
「今日蓮華の花を取りに湖まで行ったの。ローティイーに蓮華の花をもらったら、ローティーまで付いてきたのよ」
マリアがラビーに簡単に説明してくれた。
「蓮華の花をもらえたことも凄いけど、それ以上にローティーが付いてきた事の方が何倍もすごいね」
「呼んでもないのに勝手に付いて来ただけだぞ」
驚いているラビーに大したことではないと言ってやる。
「ちょっとレンゲ、言い方! 言い方が酷過ぎ」
「事実だろ?」
「泣くわよ?」
さすがに泣かれては困る。
「まあまあ、レンゲも優しく言ってあげなよ。初めまして私はラビーよ」
「私はローティーよ。あなたのお母さんは最高ね」
きっとお菓子をくれるからだろう。
子供達がお菓子を欲しそうにしているが食事の前なので止めた。
そんな事をしていると、ラミットが食事を持ってきた。
「みんなお待たせ。沢山食べてね」
その手には大きなお盆をを持っており、お盆には大量の肉料理と卵料理が置かれていた。
私達の好みをマリアに聞いていたのかもしれない。
「あら、それも美味しそうじゃない。楽しみだわ」
料理を見てローティーが目を輝かせている。
その小さな体のどこにそんなに入るのだろうか。
マリアがすぐにラミットを手伝ってテーブルに料理を並べる。
料理を並べ終わると皆でテーブルを囲んだ。
「あれ? お父さんは?」
ラドがいないことにラビーが気付く。
「お父さんはまだ仕事をしているから、後で私と一緒に食べるわ。遠慮せず先に皆で食べてね」
ラミットに促され、皆で夕食を食べ始める。
肉を食べた時いつもの味に近いことに気付く。
「マリアの味に似ているな」
「そうですね。私はおばさんに料理を教わったので」
マリアが私の疑問に答えてくれる。
「昔はあんなに一緒に料理を作ったのに、今はあんまり作ってくれないから寂しいわ」
ラミットが寂しそうな顔をマリアに向ける。
「今はもう自分で作れるし、一緒に食事する時は一緒に作るじゃない」
「それでもおばさんは寂しいの、ラビーが相手してくれないし」
今度はラビーに顔を向ける。
「私だって仕事があるんだから。もう子供じゃないんだよ」
「いつまでもラビーもマリアも私の子供です」
唇を尖らせ拗ねたような顔をマリアとラビーに向けている。
ラミットにとってはマリアも自分の子供と変わらないんだな。
「わたしも……いつまでもおかあさんのこども」
「あたしも、おかあさんといっしょ」
ラミット達の会話を眺めていた子供達が私に向かってそう言ってくれた。
今すぐ抱きしめたくなる気持ちになる。
「レンゲちゃんが羨ましいわ」
そう言ってラミットは微笑んだ。
その後も話に花を咲かせながら楽しい夕食の時間を過ごした。
食事が終わりラミットがお茶を淹れてくれた。
子供達とローティーにはお茶菓子付きだ。
「ローティーって見かけ以上に食べるんだね」
ラビーもローティーの食べっぷりに驚いている。
「甘いものは別腹よ!」
ローティーはそう言っているが夕食も皆と同じくらい食べていたし、食前にもお菓子を食べていた。
「いいじゃない、見ていて気持ちよくなる食べっぷりだわ」
ラミットは嬉しそうに子供達とローティーを眺めている。
「ねえ、私も名前が欲しいんだけど」
お菓子を食べ終わりお茶を器用に飲みながらローティーが少し寂しそうな顔をする。
「ん? なくても困らないんじゃなかったのか?」
私の言葉に少しばつの悪そうな顔をする。
「そうだけど、さっきから皆が名前で呼びあったりするし……。私だけ種族名だし……」
いつものはきはきとした喋り方はなくどこか消え入りそうな声だった。
強がっていたが名前が羨ましかったのかもしれない。
周りを見ると皆が私を見ている。
私が考えろという事なのだろうか、自分の子供の名前すら付けれなかった私には荷が重い。
私が悩んでいるとハナが私に寄ってくる。
「わたしが……かんがえてもいい?」
私の耳に小さな声で囁く。
「いいぞ」
ハナの耳に優しく囁き返す。
ハナが嬉しそうにローティーの前に行く。
「ローティーは……ロッティ」
「え?」
急に言われてローティーは驚いている。
「ロッティ……だめ?」
ハナが首をかしげローティーを見るめる。
「ロッティ、可愛い名前じゃない。気に入ったわ。今日から私はロッティよ!」
「おー、ロッティ、よろしくね」
レンも嬉しそうにロッティのそばに駆け寄って、ハナと一緒にロッティと名付けられたローティーの名前を連呼している。
いささか安直な名前の気もするが、ロッティも子供達も喜んでいるので何も言わない。
他の皆も同じ意見のようで、何も言わずに喜んでいる子供達とロッティを微笑ましく眺めていた。




