妖精との出会い
私は湖を見渡す。
いくら注意深く見ても、妖精の姿を見つける事が出来なかった。
「マリア、妖精はどこにいるんだ?」
「そのために子供達を連れてきました」
マリアはそう言うと、子供達のそばに行く。
「ハナちゃん、レンちゃん、あっちの木に走って触って戻ってきたらお菓子をあげるね」
マリアが少し離れた場所にある木を指差す。
「ほんと……?」
「おねえちゃん、いっしょにいこ」
そう言って二人仲良く走っていった。
ハナとレンは一緒に楽しそうにマリアの指差した木に走って行く。
「こんなことで妖精が見つかるのか?」
これがマリアの言っていた子供を連れてきた理由なのか。
私が疑問に思っていると、先ほどは見つけれなかった妖精が水面に浮かぶ葉の上で子供達を見ている。
「ほら、あそこにいますよ」
マリアも気付いたようだ。
「さっきまではいなかったはずだが」
「ローティーは子供が大好きなので、子供達が遊んでいると我慢できずに出てくるんですよ」
マリアが説明してくれる。
「妖精はみんなそうなのか?」
「すべての妖精がそうかは分かりませんが、ローティーは昔からここにいるので、町ではそう伝わっています。私はここに来た事がないので妖精を見るのは初めてですが」
マリアは妖精を見ても驚いていないし、町ではここに妖精がいるのが当たり前になっているのだろう。
「あの妖精はどうやって捕まえるんだ?」
「え? レンゲさんローティーを捕まえる気なんですか?」
「捕まえないと話もできないだろ」
呼んでこちらに来てくれるとは思えない。
「子供達なら話が出来ると思います」
「危険はないのか?」
「妖精に子供をさらわれるって伝承はありますが、ローティーはそんな事しないみたいですよ」
さらおうとしたら捕まえよう。
子供達を見るともうこちらに向かって戻り始めている。
「おーい、ハナ、レン、そこの妖精も呼んできてくれ」
「え? ここに呼ぶんですか?」
マリアが私を見て戸惑っている。
「だめか?」
「だめかは分からないですけど、大人の私達の所に来ますかね?」
来なかったらその時考えよう。
「そこの葉の上だ」
子供達が妖精を探してきょろきょろしているので指で妖精がいる場所を指す。
「あー、いたー」
「ちいさくて……かわいい」
子供が湖に近づく。
「いっしょに、あそぼ」
「おかし……たべよ」
ハナの言葉に妖精が反応する。
「お菓子があるの?」
「あるよー」
「いっしょに……いこ」
子供達が妖精を連れて戻ってきた。
「本当に来ましたね」
「お菓子に釣られてなかったか?」
私もマリアもこんなに簡単に来るとは思ってもいなかった。
「マリアー、おかしー」
「はやく……ほしい」
「私も欲しいわ」
子供に混じってお菓子をねだっている。
「ちょっと待ってくださいね」
マリアがバスケットからクッキーを出して子供達と妖精に渡す。
妖精がクッキーを持つとすごく大きく見えるな。
大きさは40cmくらいだろうか、遠目に見た時は手のひらサイズかと思っていたが、予想より大きい。
蓮の花と同じ色の髪と瞳をしており、髪の毛は肩より長いくらいだ。
じっとしていたら、少し大きい着せ替えの人形みたいに見えるかもしれない。
「なあ、妖精」
とりあえず話しかけてみる。
「何よ、ローティーって呼びなさいよ」
妖精と言われて怒ったのか、睨んでくる。
もしかしてローティーと呼べって言うから町の人もローティーと呼ぶんだろうか。
「なあ、ローティー」
「何よ、お菓子食べてるんだけど」
こういう性格なのかもしれない。
「菓子を食べたら話を聞いてくれ」
「何で私があんたの話を聞かないといけないのよ」
ローティーはそっぽを向く。
「マリア、こいつ生意気じゃないか? 言葉遣いも悪いし」
「えー、レンゲさんがそれを言うんですか」
マリアが苦笑いを浮かべる。
そういえば私も綺麗な話し方ができていない。
「ローティー、おかあさんのはなし、きいてあげて」
「ローティー……おねがい」
「いいわよ」
子供達のお願いをすぐにローティーが承諾する。
子供の言う事なら聞いてくれるのだろうか。
「おねえちゃん、クッキーおいしいね」
「うん……ローティーもおいしい?」
「ええ、美味しいわよ」
ローティーが子供達と並んでクッキーを美味しそうに食べている。
不思議な事に、ローティーがクッキーを食べる速度と子供がクッキーを食べる速度が同じだ。
「もうなくなってしまったわ」
ローティーがクッキーを食べ終わる。
その顔は悲しみに満ちていた。
クッキーを食べ終わってする顔ではない。
「わたしの……わけてあげる」
「あたしのもー」
「え!? いいの?」
子供達がローティーにクッキーを分け与える。
ローティーの顔が一瞬で明るくなる。
話ができると思ったが、子供達の優しさに邪魔されてしまった。
邪魔されても、自分の子供がこんなに優しく育ってくれた事を嬉しく思う。
「レンゲさんも食べますか?」
マリアは子供達のお茶をいれていた。
「甘くないのはあるか?」
「はい、レンゲさん用に」
マリアからクッキーを貰うと、マリアと並んで座って子供達が食べ終わるのを待った。




