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皆で湖へ

 まずは町の東の川へと向かう。

 門を通って出ると遠回りになってしまうのでラビーの家を通らせてもらう。

 私1人なら教会裏の柵も飛び越えられるが、さすがに子供達には難しい。

 マリアはラビーの家を我が家のように何も言わずに突き進んでいく。

 幼馴染というだけある。

 途中でラミットに出会う。


「おはよう。あらあら、皆でお出かけ?」

「おはよう、おばさん。湖に行くので通らせてね」

「もちろんいいわよ。気をつけていってらっしゃい。レンゲちゃんも、ハナちゃんも、レンちゃんも気をつけてね」

 ラミットが私達にも声をかけてくれる。

「いってきまーす」

「いってきます……」

「いってくる」

 ラミットに挨拶とお礼を言った後川へと向かう。

 途中子供達が黒毛鼠の柵の中を熱い視線で見ていた。

 子供達も好きなんだろうか。

 近いうちに連れてきてあげよう。


 柵を抜けて農場を歩いていくとすぐに川に到着する。

 もう暑い時期になってきたせいか、川の周りの緑は濃くなっている。

 目を凝らせば色々な生き物が緑の中で活気よく動いているのが分かる。。

 川の中で魚が気持ち良さそうに泳いでいる。

「あー、さかながいるー」

「あ……ちょうちょ」

 子供達は目に映る生き物に夢中できょろきょろとして前を向いていない。

 こけないか心配だ。

「こら、前を見て歩け」

「はーい」

「うん……」

 注意してしばらくは前を向くのだが、すぐにまたきょろきょろとしだす。

「手を繋ぐぞ」

 子供達に手を差し出す。

「やったー」

「マリアは……?」

 レンが嬉しそうに私と手を繋ぐ。

「私も手を繋ぎたいな」

 マリアが寂しそうに言うとハナがマリアの方へ近寄る。

「わたしと……つなぐ」

「ハナちゃん、ありがとうね」

 マリアが嬉しそうにハナと手を繋ぐ。

 4人で川沿いに北上していく。

 川に沿うように細いあぜ道が続いている。

 そのため少しは人の往来があることが分かる。

 道の先に目を向けると、林の中にも道が続いている。

 この道をそのまま進めば湖があるのだろう。

 林の中に入るとと子供達が声をあげる。


「すごい……きれい」

「わー、すごいね」

 子供達が見ている方向を私も見てみる。

 そこには白に少しだけ朱を足したような色の花が咲いていた。

 花の高さは子供達より少し低いくらいで、周りの植物より高く花も綺麗でよく目を惹く。

「なんていう……おはな?」

 ハナがマリアを見上げる。

「あれは、ササユリですよ」

 マリアがそうハナに教える。

「ササユリ……おぼえた」

 花の名前を教えてもらえてハナは嬉しそうにしている。

「ササユリ、ササユリ、ササユリ……」

 レンを見ると名前を覚えるためか連呼している。

 なんだか呪文でも唱えているみたいに聞こえる。

 子供達がササユリを見るのに満足すると、再び湖を目指して歩き出す。


「まだ、つかないの?」

 レンが私の手を引いて尋ねてくる。

「そんなに遠くないらしいぞ」 

 私も行った事がないので距離が分からない。

 タイガは町から近いと言っていた。

 あくまで大人の足なので、子供達にはもしかしたら遠く感じるかもしれない。 

「レン……つかれたの?」

 ハナがレンを心配そうに見つめる。

「だいじょぶ、おねえちゃんは?」

「わたしも……だいじょうぶだよ」

 姉妹で気遣いあう姿に心が癒される。

「少し、道がきついですね」

 マリアを見ると子供達より疲れているように見える。

 まだそこまで歩いていないと思うのだが、まさか子供達より体力がないのだろうか。

「マリア……つかれたの?」

「マリア、だいじょうぶ?」

「大丈夫ですよ。全然疲れてないし、余裕ですよ」

 子供達に笑顔で答えている。

 その顔に疲れが見えるが、マリアのためにも言わないでおく。


 少し休憩をしようかと考えていると、林の木々なくなり視界の先に太陽の光を浴びてキラキラと輝く水面が広がる。

 その水面には数え切れないほどの花が咲き、その水面を飾り立てている。

 花の周りには適度に葉が広がり水と花と葉の3色が瞳に映る。

 まるで計算されたかのように水面に並んでいる花はどれも同じ色だった。

 花の色は薄い赤色で、子供達の瞳の色に似ている。

「これは……」

 あまりの美しい光景に言葉を失う。

「素晴らしいですね……」

「おー、すごーい」

「きれい……」

 それは他の皆も同じようで、誰もがその光景に見惚れてしまった。

「あれが、蓮華の花なのか」

「そうですね。間違いないと思います」

 マリアに確認すると、この湖を飾り立てている花が蓮華の花だという。

 セイゾーが私達に付けてくれた名前の花はこんなにも美しい花だったのか。

 この花をセイゾーの墓に供える事ができたらきっとセイゾーも喜んでくれるはずだ。

 私達はその光景を十分に堪能した。

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