マリアへの告白
子供達が寝てしまった部屋でマリアと2人きりになる。
私達がこの世界に来たことをマリアにどう話せばいいだろう。
私が色々と考えて黙っているせいかマリアもなんだか落ち着かない様子だ。
「あの、昼のお話なんですが」
「ああ、どう話していいか考えていた」
「話しにくいのでしたら言わなくてもいいんですよ」
マリアが私が悩んでいると思って気遣ってくれる。
これからマリアとも暮らしていくと思うと聞いておいてもらいたい。
「私達は別の世界から来たんだ」
「え? 別の世界? 服の話なのでは?」
そういえば昼間は服の話をしていた気がする。
「服にも関係する」
「別の世界の服という事ですか?」
「ああ」
マリアは少し困惑している。
いきなりこんな話をされては当然だろう。
「違う世界で死んで、この世界に来たんだ」
「どやってこちらの世界に来られたんですか?」
「セーイスとかいう女神に会ってこっちの世界に来た」
それを聞いてマリアが驚いている。
「セーイスというのは女神セーイスですか?」
「自分の事を女神セーイスと言ってたな」
「そういう事だったんですね」
なんだかマリアが納得している。
こんな説明で納得できたのだろうか。
「つまりセイゾーさんも?」
「ああ、こんな説明で分かるのか」
マリアが少し何かを考えるような顔をする。
「女神セーイスは死と再生の女神とも言われています。違う世界というのは分かりませんが、死んでこの世界で再生されたというのは分かります」
あの女神はそんな大層な肩書きがあったのか。
そんな大層な女神には思えない。
「それではあの服は前の世界で着ていたんですね」
「いや、前の世界では犬だったから服は着ていない」
「え? 犬?」
マリアが驚いた表情を浮かべて問い返してきた。
「ああ、私も子供達も犬だ」
「セイゾーさんも犬だったんですか?」
どうやら私は説明をするのが下手らしい。
「いや、セイゾーは人間だった」
「待ってくださいね。皆さんは別の世界から来て、セイゾーさんは人間のまま、レンゲさんと子供達は犬から獣人の姿になってこの世界に来たんですね」
マリアが聞いた話を整理して話してくれる。
「ああ」
「セイゾーさんの服は前の世界で着ていた服で、レンゲさんと子供達の服は女神セーイスから与えられた服ということですか?」
私の説明でここまで理解してくれたマリアはなかなかすごいな。
「私の服はすぐに破れてしまったがな」
「え、女神かから頂いたものを破ったんですか?」
「獣の姿に変わる時にな、説明していなかった女神も悪いだろ」
まさか大きな犬に変わるとは思ってもいなかった。
「破れた服はどこにあるんですか?」
「燃えていなければ廃村にあると思う」
「なんだか眩暈がしてきました。女神からもらった服をそんな扱いをするなんて」
なんだか私が責められている。
マリアが女神セーイスに仕えているシスターという事は分かるが、少し女神の肩を持ちすぎではないだろうか。
「マリアが欲しいなら探してくる。あと、女神はそんな大層な女じゃなかった」
マリアの理想を壊すようで悪いが、私の意見も聞いて欲しい。
「欲しいです。あと、レンゲさんを責めている風な言い方をしてすみません」
マリアが私に頭を下げる。
素直に謝ってくれるマリアを責める気になれない。
「女神セーイスはどんな女性でした?」
「綺麗な女だった。さっきはあんな風に言ったが、私と子供達を助けてくれた女なのは間違いないし、私の人としての知識も獣の姿も与えてくれた」
そう考えると、大層な女なのかもしれない。
素直に認めたくはないが感謝もしている。
今思い返せば、女神の話をしっかり聞かずこの世界に送れと言ったのは私ではないだろうか。
あの時の自分の状態では仕方がないとは思うが、もし会う機会があれば感謝と謝罪の気持ちを伝えよう。
「マリア、女神セーイスはいい女神だったよ。私が勘違いをしていただけかもしれない」
「レンゲさんがそう思えるほど素晴らしい女性だったんですね」
マリアが目を閉じうっとりしている。
ふと私が好きな犬の姿にすると言っていた事を思い出す。
それに対する注意事項などは聞いた覚えはない。
「素晴らしいは言い過ぎだ」
「え~、私の理想が崩れてしまいます」
マリアには悪いが、それくらいの評価の方がいいかもしれない。
「そういえば、今日セイゾーの職場に行ってきた」
「レオスさんの所ですか?」
「ああ」
マリアもセイゾーの職場を知っているようだ。
「そこで、タイガに蓮華の花の事を聞いた」
「タイガさんにも会われたんですね。蓮華の花ですか?」
「ああ、町の東の川を北上すると湖があってそこに咲いているらしい」
マリアに今日タイガから聞いた事を話す。
「私も行ったことないですね」
この町に長く住んでいるマリアなら行った事があるかと思っていたが、どうやらないようだ。
「明日行ってみる」
「見に行くんですか?」
「いや、私と同じ名前の花をセイゾーの墓に供えたい」
セイゾーが付けてくれた名前と同じ花、話を聞いた時からセイゾーに送りたいと思っていた。
「でも、先ほどの話では、取ってはだめなのでは?」
「妖精に聞いてみる」
マリアがそれを聞いて深いため息をつく。
何かおかしな事を言っただろうか。
「レンゲさんだけだと心配なので私も付いて行きます」
「別に猿くらいしかいないし危険はないだろ」
マリアは何が心配なのだろうか。
「妖精にだめと言われたらどうするんですか?」
そう言われたので考える。
お願いしてもだめと言われたら、無理やり奪ったりはしたくない。
「何かと交換してもらう」
「それでもいいかもしれないですね。でも、やっぱり心配なので付いて行きます。あと子供達も連れて行きます」
子供達は言えば喜んで来そうだ。
「どうして子供を?」
「連れて行けば分かります」
マリアは妖精に詳しいのだろうか。
危険な場所ではないし私も反対する気はない。
「なら明日は皆で行くか。教会はいいのか?」
「ええ、教会を留守にすることはよくありますので問題ないですよ」
明日の予定が決まったところで私達も寝る準備をして横になった。
私達が話している間も子供達は起きることなく眠っていた。
明日みんなで湖に行くと言ったら喜んでくれるだろうか。
喜んでくれるといいなと思いながら目を瞑った。




