別の世界
気が付くと林の中にいた。
ここが女神が言っていた別の世界か。
回りを見るが前の世界では見たことのない物ばかりだ。
前の世界といってもほとんど何も知らない。
木々に囲まれたこの場所は林だろうか。
適度に光が差し込み明るい。
歩いてみる。
違和感を感じるが思ったように動ける。
走ってみると前より足が遅いことが分かる。
不便だ。
子供達がいつ来るか分からない。
来ない場合はもしかしたら誰かに救われたということだろう。
しかし、そんな明るい未来など想像もできなかった。
女神も言っていた、あまりにも酷過ぎると。
考えても仕方がない。
子供達の為に寝床を探すとしよう。
しばらく林を歩いていると村を見つけた。
人の気配はない。
人になど会いたくないので念のため警戒しながら近づく。
しばらく誰も住んでいないのか生活の気配を感じない。
柵が村を囲んでいるが傷んでいる。
村のあちこちに雑草が目立つ。
家の手入れもされていない。
村の中に入るとやはり人はいないようだ。
家は何軒も建っているが何故使われなくなったかは分からない。
しかし、今の私には好都合だ。
この村を寝床代わりにさせてもらおう。
村の出入り口であったであろう場所から一番近い家に入る。
部屋と呼べるものはなく、家の内側がそのまま部屋になっている。
床が半分と土間が半分くらいだ。
土間では炊事ができるようになっている。
家の中を物色すると、そのまま置いていったであろう家具や食器、衣服も見つかった。
壷には塩と思われるものも見つける。
さすがに埃が多いので掃除をすることにした。
子供達も住むのだから少しは綺麗にしておきたい。
箒を探して埃を掃く。
埃の量が人が住んでいなかった期間を物語っている。
部屋はそれほど広くないため、すぐに終わると思っていたが意外と大変だ。
埃をある程度掃うと水拭きをするためぼろい手拭を手にする。
その時、水の存在を忘れていたことに気付く。
家を出ると水がないか探す。
村の中央に井戸があるのを見つける。
中を覗くと幸い水はあるようだ。
古くなった釣瓶が使えるか心配だったが問題なく水を汲めた。
その水で手拭を濡らすと家に戻る。
拭き掃除を始めると手拭はすぐに黒くなってしまう。
その度に井戸に手拭を洗いに行き、終わった頃にはすっかり暗くなっていた。
部屋にある桶を見て、この桶に水を移して部屋に持ってくればよかったのだと終わってから気付いた。
次からは気をつけようと思った時、自分が平然と掃除をしていたことに気付く。
これが女神の言っていた人としての知識なのだろう。
人の姿をした女神に感謝するのは嫌だったが、もし子供達との生活が送れるようになったら感謝しようと思う。
暗くなったのに目が見える。
昼間ほどはっきりとではないが物を見たりするのには困らない。
人間は暗くなると回りが見えなくなるはずだ。
どうやらこれは前の世界と同じなのか、それともこの獣人という体のおかげなのだろう。
お腹が減ってきたが、これくらいの空腹は慣れていた。
でも、子供達の為に明日は狩りをしてみようと思う。
もう飢える苦しみを与えたくはない。
まだ何かしようと思ったが、慣れない事をしたせいか体がひどく疲れているので寝ることにする。
部屋の隅で丸くなる。
少し肌寒いが寝れなくはない。
安心して暮らせる寝床を作ったら夜はこうして子供達と静かに眠れるといいな。
子供達との生活を想像しながら眠りにつく。




