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子供達と散歩

 昼になり教会に帰った。

「あー、おかあさん」

「おかあさん……おかえり」

 子供達が出迎えてくれる。

 私の抱きついてくると嬉しそうに顔をほころばしている。

「ただいま」

 抱きついた子供達を連れて部屋に向かう。


「レンゲさん、おかえりなさい」

 マリアが井戸の近くで洗濯をしていた。

「手伝おうか?」

「いえいえ、私が好きでやっていることですから」

 マリアはそう言ってくれるがなんだか申し訳ない。

「本当に好きでやってるだけですから。昼からは子供達と何をするんですか?」

 私の心情を察してかマリアが昼からの予定を聞いてくる。

「レン、何するか決まったか」

「んとね、おかあさんとおでかけ」

「おでかけ……したい」

 私が出かけていたから子供達も出かけたくなったのだろう。

「分かった。散歩するか」

「うん、するー」

「やった……さんぽ」

 嬉しそうにしている子供達を見ると私も嬉しくなる。

 小屋の中に子供達を連れて行く。


「忘れていたが、お前達の服だ」

 そう言って今朝取りに行った服を子供達に渡す。

「あー、あたしのふく」

「ふく……わすれてた」

 子供達も忘れていたようだ。

 子供達は服を受け取るとマリアの所へ走った。

 外に放置していたから汚れているので、マリアに洗ってもうらつもりだろう。


「マリア、これもあらって」

「これも……おねがい」

 マリアは子供達から差し出された服を受け取る。

「いいわよ。一緒に洗っておくね。あら? なんだか上等な生地ね」

 マリアが生地を触りながら言う。

 子供達がこの世界に来たときの服だ。

 私が着ていたのは破れてしまった。

「レンゲさんが子供達に買ったんですか?」

 その質問になんと返していいか困る。

「そういえばセイゾーさんも教会に来たとき上等な生地の服を着てました」

 ますますなんと返していいか困る。

「どこで買ったんでしょう、私こんな生地見たことないです」

 セイゾーはマリアに自分達が違う世界から来たことを話していなかった。

 セイゾーならうまく誤魔化していたんだろうが、私はあまり誤魔化せそうにない。

 マリアには私達の事を話しておいていいかもしれない。


「夜になったら教える」

「え? 今じゃなくて夜なんですか?」

「ああ」

 マリアが少し不思議そうに首を傾げる。

「長い話になりそうだしな」

 私の表情から何かを感じたのかマリアも真面目な顔になる。

「わかりました」

 そう言って普段どおりな柔和な顔に戻った。

「はやくいこー」

「はやく……いく」

 早く出かけたいのか子供達が私の服を引っ張る。

「おい、あんまり引っ張るな」

 マリアはそれを見て可笑しそうに笑っている。

「3人共いってらっしゃい」

「いってきまーす」

「いってきます……」

「いってくる」

 マリアに手を振り町へと出かけた。


 町の外側を子供達と手を繋いでゆっくりと歩く。

 外側は人も少なく歩きやすい。

 緑も多く散歩するには丁度いい。

「どこいくー?」

 レンが私の顔を見上げる。

「目的地は決めてないな」

 私達は町の東側から北側へ歩いている。

「セイゾーの……しょくば」

 ハナが提案してくる。

 セイゾーの職場はたしか町の北にあったので、このまま歩けば行けそうだ。

「行ってみるか?」

「いくー」

「うん……」

 子供達が大きく頷いた。

 いきなり職場に行ったら迷惑になるかもしれないが、その時は謝って帰ればいい。

 子供達とセイゾーが働いていた職場へ向かう。


 町の北側に来て気付いた。

 私はセイゾーの職場がどんな所か知らなかった。

 北側にあるという漠然とした情報だけでここまで来てしまった。

「セイゾーの職場は分かるか?」

 子供達に確認してみる。

「うんち、はこぶ」

「うんち……くみとり」

 子供達もよく分かっていないようだ。

 とりあえず子供達と町の北側を歩いて進む。

 歩いていると、周りより敷地が広く小さい小屋のある場所に来た。

 うっすらと堆肥の匂いがする。

 ここだろうか。


「おー、セイゾーのとこの!」

 私達を見つけたのか敷地の奥からレオスが歩いてくる。

 まだ距離はあるがでかい声だ。

「何かあったか?」

 レオスがこちらに来るとそう聞いてきた。

「いや、散歩してただけだ」

「そうなのか、子供も一緒なんだな」

「ああ」

「セイゾーとの子供か?」

 さっきも同じ質問をされた気がする。

「ち、違う」

 少し動揺してしまった。

「いや、すまん。知っていたんだがついからかっちまった」

 レオスの足を蹴る。

 硬くてこちらの足が痛くなりそうだ。

「おいおい、そんなに怒るなよ。うちのかみさんみたいだな」

 レオスの奥さんは怒りっぽいのだろうか。

「誰が怒りっぽいって?」

 声のした方向を向くと黄色と黒のしましまの髪をポニーテールにした女性が立っていた。

 身長は私より低いが、その肉体からは力強さを感じる。

 虎のような丸い耳が可愛い。

 レオスと違って私のように人間みたいな獣人だ。

 レオスが顔を青くしてゆっくりと振り向く。

「お、おう。いたのか」

 反応からして、この人がレオスの奥さんだろう。


「どうも、レンゲだ」

 女性に名乗り会釈をする。

「ハナです……」

「レンだよ」

 子供が私に続いて頭を下げる。

「私はレオスの妻のタイガっていうの、よろしく」

 タイガも私達に頭を下げる。

「おいおい、借りてきた猫みたいだな」

「うっさいよ」

 タイガが腰の入った拳をレオスの肩へと叩き込む。

「ぐぅ……」

 レオスが痛そうに肩を抑えて呻いている。

 今のはレオスが悪い。

 タイガの後ろに何か動くものがいる。

 私がそれに気付いたのをタイガが察する。

「この子かい」

 タイガが自分の後ろにいた子供を前に出そうとする。

 しかし、その子供は恥ずかしいのかタイガの足にくっ付いて離れようとしない。

 たてがみのような金髪にタイガのように黒いラインがいくつも入っている。

 すごい目立つ頭をしている。

 耳は母親と同じで可愛く、この子も人間にちかい獣人だ。


「私達の娘のライガ。人見知りでさ。慣れたら暴れん坊になるよ」

 それなら慣れない方がいいのではと思ってしまった。

「おー、きれいなかみー」

 レンは人見知りしないのかライガの横に行くと髪を触っている。

「すごい……ごうか」

 ハナは私の横にいる。

 ハナも人見知りをするが暴れん坊ではない。

 しかし怒ると怖いのはこの前知った。


「や、やめて」

 レンが髪に触るのをライガが嫌がる。

「きれい、きれいー」

 気にせず触るレン。

「やめて」

 レンは気にしていない。

 そろそろ止めたほうがいいだろうか。

「やめろー」

 ライガがレンの髪をわしゃわしゃと触りだす。

「やめなーい」

 レンも負けじとライガの髪をわしゃわしゃと触りだす。

 状況がよく分からない。

 喧嘩なのだろうか。

「あはははははっ」

 タイガはそれを見て面白そうに笑ってる。

 ハナを見るとなんだか羨ましそうに見ている。

 私だけが状況を理解していないのか。

 しばらく待っていると、お互いに髪をボサボサにしたレンとライガが握手している。

 もう打ち解けたのだろうか。


「わたしも……なかまにいれて」

 ハナもそっちに行くと3人はまた髪をわしゃわしゃしだした。

 よく分からないが子供の遊びみたいなものだろうか。

 タイガが笑い終わったのかこちらにやってくる。

「何やってるかまったく分からないね」

 タイガにも分からなかったようだ。

「私も分からん」

 3人が仲良さそうにしているから大丈夫だろう。

 しばらく見ていると3人とも頭がボサボサになって笑い合っていた。

 そして握手。

 子供達が私の所に戻ってくる。

「おかあさん、ともだちできた」

「もう……おともだち」

 子供達が嬉しそうにしている。

 私には意味が分からなかったが、子供達が満足そうで友達ができたなら嬉しい。

 ライガもタイガの下へ行く。


「ママ、ともだちできたよ」

「よかったね」

 タイガがライガの乱れた髪を指で梳かしている。

「レンゲは今時間あるのかい?」

「ああ、散歩していただけだ」

「ならお茶でも飲んで行きなよ。子供達は外で遊ばせておけばいいし」

 タイガがお茶に誘ってくれる。

「あそんできて、いい?」

「わたしも……」

 子供達も遊びたそうだ。

「ああ、行ってこい」

 子供達の頭をぽんっと叩く。

「ライガー、あそぼー」

「ライガ……あそぶ」

 ライガも遊びたそうにタイガを見上げる。

「行っといで」

「うん、いってくるね」

 ライガも嬉しそうに子供達と走り出す。

 子供達も初めて同じくらいの年齢の友達ができて嬉しそうだ。

「うちの子も友達ができて嬉しそうだ」

 話を聞くとライガも人見知りがひどく、友達がいなかったようだ。

「狭いけど上がってよ」

 タイガに案内されて事務所に入る。

 レオスは未だに肩を痛そうに抑えていた。

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