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新しい生活

 セイゾーが埋葬されて1日が経った。

 皆心の中に悲しみが残るのか、ふとした時に顔に暗い影が差す。

 すぐには癒せない悲しみに子供達の言葉が救いをくれる。

「おかあさん、くらいかおになってる」

「セイゾーが……かなしむよ」 

 子供達も悲しいはずなのに努めて明るく振舞っている。

 セイゾーが悲しむ。

 確かに子供達の言うとおりだ。

 昨日セイゾーの墓の前で誓ったではないか、この町でこの子達と生きていくと。

 マリアはもう朝食の用意をしに行ったのか部屋にはいない。

 マリアとも一緒に寝るようになった。

 セイゾーがいなくなってから1人で寝るのが寂しくなったと言っていた。

 子供達はマリアと一緒に寝れるのが嬉しそうだった。


「よし、朝食を食べに行くか」

 気持ちを切り替えて子供達に声をかける。

「うん、いくー」

「おなか……すいた」

 手拭を持って、顔を洗ってから子供達とマリアの家へ向かう。


「おはようございます」

 朝食をテーブルに並べながらマリアが微笑む。

 今日の朝食はパンと目玉焼きにソーセージだ。

「おー、ソーセージ!」

「やった……たまご」

 レンは肉が大好きだ。

 ハナも肉は好きだが、最近は卵がお気に入りらしい。

 私も肉が好きだ。

 親子だから似ているのだろうか。

「卵は美味しいですよね」

 マリアがそう言ってハナの頭を撫でる。

 マリアも卵が好きなので、朝食に卵が出ることが多い。

 ハナはその影響を受けたのかもしれない。

 朝食には出ていないが、私以外の3人は甘いものに目がない。

 私も嫌いではないのだが、胸焼けが起こりそうでそんなに食べられない。 


「おかあさん、きょうはなにしてあそぶ?」

 レンの口からパンがこぼれる。

「口の中の物を先に飲み込め」

 落ちたパンを拾って食べる。

 レンは口の中のパンを必死に飲み込む。

 見ていて喉に詰まらないか心配になる。

「なにするー?」

 飲み込んでから再度質問してくる。

「そうだなー」

 狩りにでも行こうかと考えていたが子供達とも遊びたい。

「マリア……そうじは?」

 ハナがマリアに今日の手伝いがないか確認する。

「そうね、朝だけ手伝ってくれる?」

「うん……わかった」

「え~」

 それを聞いたレンが不満そうにしている。

「しっかりやれよ。昼から遊んでやる」

 唇を尖らせているレンの頭を撫でてやる。

「わかったー、ひるからなにするー?」

 また何をするか聞いてきた。

 決めておかないと気が済まないのかもしれない。

「ハナと相談して二人で決めろ」

 何も思いつかないのでハナに任せる。

「おねえちゃん、なにしよっか?」

「レンがすきなので……いいよ」

「ほんとー? やったー」

 自分の好きな事ができるのが嬉しいのか、機嫌良さそうに朝食の残り食べながら何するか考えている。

 先に掃除をすることを忘れていないといいのだが。


「おかあさんは……なにするの?」

「ん? 昼までか?」

「うん……」

 昼まで狩りをするのもいいかもしれないが、時間が足りない気もする。

遅れて帰ったらレンが怒りそうだ。

「少し、出てくるよ」

「大丈夫ですか?」

 そんな私の言葉にマリアが心配そうに見つめる。

 子供達は分かっていないかもしれないが、マリアは私が人間が怖いことを知っている。  

 私を案じているのが表情からよく分かる。

「ああ、少しずつ慣れていくつもりだ」

「そうですか」

 マリアが前に進もうとする私に優しく微笑む。

「おかあさん……おでかけ?」

「いいなー」

 子供達が羨ましそうにしている。

 遊びに行くと思っているのだろう。


 食事が終わるとマリアが私に話があるというので、子供達を部屋に置いてマリアの家に行く。

「これをレンゲさんに」

 マリアはそう言って袋を私に手渡した。

 その袋が予想より重く、危うく落としそうになってしまう。

「これは?」

「どうぞ、開けてください」

 中身は自分の目で確かめろという事だろうか。

 袋を開けると、中には沢山の銀貨や銅貨が入っていた。

 どうりで重たいはずだ。

「この金は?」

「セイゾーさんの残したお金です」

 セイゾーが何か仕事をしていたのは知っていたが、この短い間にこれほどお金を稼いでいたとは思わなかった。

「こんなにあるのか」

「はい、私もびっくりです。セイゾーさんはこのお金で私を買おうと……」

「セイゾーがそんな事を!?」

「いえ、冗談です」

 マリアの頭を鷲づかみすると、その手に力を込める。

「痛いです、痛いです。すみません」

 謝ったので手を離す。

 マリアが余程痛かったのか頭をさする。

「セイゾーさんがそんな事しないのはレンゲさんも分かるんじゃないですか?」

 少し恨めしそうにこちらを見ている。

「まあ、想像はできないな」

 セイゾーはあまり女性慣れしているような感じはしなかった。

 私の裸を見ても恥ずかしそうだったのを思い出す。

 思い出したら可笑しくて笑ってしまった。

「え? 急にどうしたんですか?」

「いや、セイゾーが私の裸を見たときの慌てぶりを思い出してな」

「あー、何となく想像できますね。私も見てみたかったです」

 そうして2人で笑った。

 それが落ち着くとマリアが口を開く。


「そのお金はレンゲさんが持っていてください」

「いいのか?」

「セイゾーさんからは教会用のお金は頂いてましたし、そのお金は子供達のために貯めいたんだと思いますから」

セイゾーの優しさを思い出して胸が苦しくなる。

「そうか……」

「セイゾーさん自分のためにお金を使ってなかったですから。あ、でも一度だけお酒を飲みに行ってましたね」

「酒を?」

 セイゾーも酒を飲むんだな。

「久しぶりに飲んだけど美味しかった、そう嬉しそうに話してました」

 そんなセイゾーを想像するとなんだか可愛く思えた。

 沈んでる私を見てマリアが気を使って話してくれたのかもしれない。

「それじゃあ、子供達を呼んで掃除をしますね」

 マリアは私に微笑を向けた後子供達の所へ向かった。

 なんだか、マリアには頭が上がりそうにないな。

 セイゾーのことだ、きっと尻に敷かれていたんだろうな。

 それを想像して笑うと、私もマリアを追いかけた。

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