子供達と過ごす
朝は衝撃と共にやってくる。
腹に衝撃を受けて目覚めると、レンが私のお腹に乗っていた。
さすがにこの大きさの子がお腹に乗ると苦しい。
横を見るとハナが心配そうなのか自分も混ざりたいのかよく分からない顔をしている。
ハナに向かって手を広げると、嬉しそうな顔をして飛びついてきた。
もっとゆっくり胸の中に来てほしかった。
「2人共おはよう」
「おかあさん、おはようー」
「おかあさん……ゆめじゃない」
レンは楽しそうだが、ハナはなんだか泣きそうななっている。
「随分待たせてすまない」
「たくさん、まったー」
「もう……いなくならない?」
心配そうな顔で子供達が見てくる。
「大丈夫だ」
笑顔でそう言うと頭を撫でてやった。
「セイゾー、そういっておいてった」
「あれは……しごとだよ?」
何か思い出したのかレンが言っているが、ハナに言い聞かせられている。
話から察するに、セイゾーも一緒にいると言って、仕事に行くときに揉めたのだろう。
想像すると可笑しくなった。
マリアの方を見ると、もう起きて部屋から出ているようだ。
もう朝食の支度をしているのだろうか。
「あー、セイゾーおきたー」
「セイゾー……おかあさんかえってきた」
子供達が嬉しそうに起きたばかりのセイゾーに突撃している。
なかなか痛そうだ。
私もあんな風に起こされたのだろうか。
子供達は嬉しそうにセイゾーにくっ付いている。
「セイゾーは本当に2人に好かれているな」
「さすがに母親には負けるだろ」
セイゾーがそう言うと子供達が私の所に戻ってきた。
「おかあさん、いちばん」
「セイゾー……にばん」
子供達は小さな指で1と2を作るとセイゾーに向かって順番を言っている。
私が1番と思ってくれていることに嬉しくなる。
「あら、セイゾーさんに負けてしまいました」
そう言いながらマリアが部屋に入ってきた。
「朝食できましたよ」
もう朝食が出来たようだ。
マリアは私よりそれだけ早く起きていたようだ。
「マリアも……すき」
「あたしもー」
「まぁ、嬉しいわ」
マリアも子供達に好きと言われて嬉しかったらしく、笑顔で部屋を出て行った。
子供達を連れてセイゾーと朝食が準備されている場所に向かった。
「おかあさん、あのねあのね」
レンが食べながら話しかけてくる。
口や皿から料理がこぼれている。
「おい、食べながら喋るな。パンがこぼれてるぞ」
レンがこぼしたパンをひろって食べる。
ハナの方を見るとどうやって食べればそうなるのか分からないくらい口の回りにスープが付いている。
「ハナ、口の回りに付いてるぞ」
ハナの口を手拭で拭いてやる。
そうしてもらえる事が嬉しいのかハナが嬉しそうにしている。
子供達は食事の度にこうなのだろうか。
自分が食事をするのも忘れて子供達が食事をするのを手伝う。
「おかあさん、だいすきー」
「わたしも……」
食事を終えると子供達が抱きついてきた。
悪い気はしない、むしろ嬉しい。
今まで我慢してきた分余計にそう思うのかもしれない。
「私もだぞー」
抱きついてきた子供達に沢山キスをする。
子供達はそれを嫌がったりせず喜んでいる。
「あたしもー」
「わたしも」
そう言って子供達も私にキスを沢山してくれた。
私もそれに負けじとキスをし返す。
なんて幸せな時間なんだろう。
どれだけキスをしたかは覚えていない、気が付いたらセイゾーは仕事に出かけていなくなっていた。
「私は教会の仕事をしてきますね」
マリアが子供と遊んでいる私にそう言った。
「私も何か手伝おう」
「いえ、今日は子供達と遊んであげて下さい」
マリアが見つめる先には、まだ遊んでほしそうに子供達が私の服をつかんでいた。
「ありがとう、それに今まで子供達を助けてくれてありがとう」
私の言葉を聞いてマリアが微笑む。
「いいんですよ。私がしたくてしたことですから」
マリアはそう言って子供達の頭を撫でて後教会へと向かっていった。
「いたしばい、よんでー」
「いたしばい……たのしい」
子供達が板の束を持ってくる。
「板芝居? なんだそれは」
「これね、セイゾーがつくったの」
「わたしも……いっしょにやった」
手渡された板の束を見てみると色々な絵が描かれていた。
なかなか上手に描かれた絵には独創的な背景が描かれている。
たぶんこの背景をハナが描いたのだろう。
「ハナが回りの絵を描いたのか?」
「うん……がんばった」
「上手だな」
ハナの頭を撫でてやる。
独創的だが味があっていいと思う。
これは親の贔屓目ではきっとないはずだ。
絵が描かれた板の裏には丁寧に文字が書かれていた。
セイゾーの字なのか?
それにしてはなんだか綺麗過ぎて違和感を覚える。
もしかしたらマリアかもしれない。
「うらは、マリアがかいた」
「セイゾー……もじかけない」
マリアが書いたようだ。
セイゾーは字が書けないのか。
この世界は元の世界とは文字が違うのだろう。
無意識に読んでいたので気付かなかった。
「よし、なら読んでやる」
「やったー」
「たのしみ」
待ち望んでいる子供達に板芝居を読んでやった。
そこに描かれていたのは白雪姫という物語で、毒リンゴを食べてしまったお姫様が眠ってしまい王子様のキスで目覚めるといった内容だった。
セイゾーが考えたのだろうか、内容的に女性向けな感じがするし、元の世界の童話なのだろう。
なんとなく知識としてはあるのだが、詳しい内容は読んでみて初めて知った。
「おもしろかったー」
「もういっかい……よんで」
今読み終わったものをまた聞くのか。
「何回も聞いた話じゃないのか?」
「たくさん、よんでもらった」
「それでも……よんで」
セイゾー達は子供達にどれだけ読み聞かせたのだろうか。
読んでる最中に子供達が次の内容を話したりしている。
完全に覚えているようだが、聞いていて面白いのか少し疑問になる。
それでも話を聞いている姿はとても楽しそうで、ねだられるとつい読んでしまう。
「つぎは、ボールあそび」
「そとで……やる」
レンがボールを持つと元気に部屋の外に走っていく。
それを追ってハナと一緒に外に出る。
「おかあさん、ボールなげて」
レンはそう言って私にボールを渡す。
レンとハナは私から距離を取ると、ボールが来るのを待っている。
以前教会で子供達とマリアが遊ぶのを見ていたが、きっとあれだろう。
「いくぞー」
私は子供達にボール投げる。
少しいびつな球形のボールはうまく弾まず予想外の方向に弾んだりする。
その動きも子供達には楽しいのか、2人で必死に追いかけている。
レンがボールを取ると私の所に持ってくる。
ハナは始めの位置に戻るとボールが来るのを待っている。
誰かに教わったのだろうか、これなら次はハナがボールを取りやすい。
ハナがいる方向にボールを投げてやると、案の定ハナがボールを取った。
その時にはレンが始めの位置でボールが来るのを待っている。
「おかあさん、はやくー」
悪い予感しかしない。
ボールを投げるとレンが取る、その間にハナは始めの位置にいる。
ハナがボールを取るとレンが始めの位置にいる。
その繰り返しだ。
子供達のほうが運動量が多いはずなのに、何故かこっちの方が疲れてくる。
肉体的には疲れないのだが、同じ動作をやっていると精神的に疲れてくる。
誰だこんなことを子供に教えたのは。
その時遠くからマリアがこちらを見ているのを見つける。
どこか苦笑いをしているように見える。
きっとこの苦しみを知っているのだろう。
ということは考えたのはセイゾーだな。
「マリア、ちょっといいか」
マリアが逃げようとしていたので呼ぶ。
「あー、マリアもいっしょにやる」
「いっしょに……やろ」
子供に言われて逃げれなくなったのだろう、マリアがこちらにやってくる。
「レンゲさん、お疲れ様です」
「いつもは何回くらい投げるんだ?」
「子供達が疲れてやめる前にこっちが限界になります」
マリアはそう言って遠い目をした。
私の子供だからか、獣人だからかは分からないが体力がすごいことは分かった。
肩が疲れるなら足を使えばいい。
そう思いマリアと相談し4人で距離を取ると足でボールを蹴ってボールを回した。
ボールがいびつなせいでうまく相手までボールが転がらないが、それを追いかけるのもなかなか楽しかった。
私も夢中になって追いかけてしまった。
子供達も楽しそうに笑いながら興じている。
しばらくしてマリアの方を見ると肩で息をしている。
「げ、限界です」
疲労困憊といった顔でそう呟いた。
「すまん、マリアはきつかったか」
「子供達と遊ぶのは楽しいんですよ。でもちょっと私の体力が……」
マリアにお礼を言って休んでもらった。
「マリア、きゅうけい?」
「もっとマリアとも……あそびたい」
あの姿を見て子供達はそんな事を言えるのか。
それでも純粋にマリアと遊びたいという気持ちは伝わってきた。
だから余計にマリアが限界まで頑張ってしまうのだろう。
「次は部屋で遊ぶか」
「うん、わかったー」
「おままごと……する」
部屋に戻ると子供達とままごとをして遊ぶ。
マリアに教わったのだろうか。
女の子らしい可愛い遊びだ。
しばらくままごとをしているとセイゾーが帰ってきた。
その顔は仕事で疲れたためだろうか、いつもと少し違って見えた。




