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目撃

 教会で男を見てから監視を強化している。

 それでも拭えぬ嫌な予感があった。

 そのせいなのだろう、私は油断していた。


 黒毛鼠の小屋に性懲りも無く猿がやってきた。

 ボス猿はいない。

 黒毛鼠の小屋の前に陣取り、いつものように猿を追い払った。

 そこまでにして小屋の中に戻っておけばよかったのだが、挑発してくる猿に腹が立ち追い掛け回した。

 その時、気配を感じた。

 顔を向けると、そこにはこの家の農夫が、あの猿を捕まえ立っていた。

 はっきりとに見られてしまった。

 私は咄嗟に逃げる、十分な距離を取ってから振り返ると、その農夫は私に一礼すると家に帰っていった。

 意味は分からなかったが、とりあえず騒がれたりすることはなかった。

 農夫がいなくなるのを見届けた後、黒毛鼠達がいる小屋に戻った。


「お疲れ様ッチュ」

「今日もありがとうッチュ」

「さすが大きい犬ッチュ」

 黒毛鼠達が出迎えてくれた。

「見られてしまった」

 先ほど農夫に見られたことを黒毛鼠達に伝える。

「大丈夫ッチュ」

「飼い主はいい人ッチュ」

 黒毛鼠達に気にした様子はない。

 というより飼われているという自覚があるんだなと驚いた。

「なんで飼われているんだ?」

 疑問に思ったことを聞いてみる。

「毛を刈るッチュ」

「暑くなると毛を刈ってくれるッチュ」

「すっきりするッチュ」

 黒毛鼠の毛が目的らしい。

 黒毛鼠達の毛は林で見た黒毛鼠達よりもモコモコしている。

 羊の毛のように利用するのだろうか。

 本人達も刈られることを嫌がっている様子もなく快適に暮らしているようだ。

「飼い主は動物が好きッチュ」

「大きい犬を見たくらいで騒がないッチュ」 

 動物が好きなのと、巨大な犬を見るのでは話は違うと思うのだが、黒毛鼠達にこれだけ信頼されている農夫のことだから、大丈夫かもしれない。

 人を信用できなくても、短いながら一緒に暮らしている黒毛鼠達が嘘をつくとは思えなかった。


 次の日の夜、黒毛鼠の小屋の近くに野菜や果物が大量に置かれていた。

 その場所には板切れに文字が書かれている。

『黒毛鼠達を助けてくれてありがとうございます』

 丁寧に書かれた文字だった。

 それだけでも書き手の性格が伺えそうだ。 

 農夫は黒毛鼠達が言うようにいい人なのだろう。

 包帯もあるのを見つけた。

 私が怪我をしているのが分かったのかもしれない。

 しかし、動物に対して文字を書いたり、包帯を渡すとは変わった農夫だ。

 私がそう思っていると、黒毛鼠達がやってきて、置かれていた野菜や果物、包帯を持って小屋に入っていく。

 残った黒毛鼠が板切れに自分の前足を押し付け、足跡を付けると柵の外に板切れを置いている。

 農夫が変わっているのではなく、黒毛鼠達が変わっているのはその行動を見て分かった。


「文字が読めるのか?」

 黒毛鼠に聞いてみる。

「文字? 文字って何ッチュ?」

「板切れを読まなかったのか?」

「何か模様があったけどあれが文字ッチュ?」 

 文字を理解はしてないようだ。

「なんで足跡を付けていたんだ?」

「前に板切れに足跡を付けて渡したら喜んだッチュ」

「それからたまに食べ物と一緒に板切れが置いているから足跡を押してるッチュ」

 あの行動はそういう意味だったのか。

「欲しいッチュ?」

「足跡付けるッチュ!」

 そう言うと黒毛鼠達が私の体にペタペタと触ってくる。

「付けなくていいから離れろ」

 さすがに鬱陶しい。

 小さい黒毛鼠達はやめようとしないが、気にしないでおく。

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