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お金を稼ぐ

 物音がして目を覚ます。

 外に気配を感じたので小屋をから覗いてみる。

 この家の農夫なのだろうか、まだ夜が明ける前の時間だというのに起きている。

 まだ辺りは暗いので隙を見て気付かれないように林へ向かう。

「また来るッチュ」

 黒毛鼠が立ち去る私にそう言ってくれた。


 昨日脱いだ場所に服はそのまま置いてあった。

 元の姿に戻り服を着ると、これからどうしようか考える。

 男達の監視を続けながら子供達の様子も見たい。

 その為には町に潜伏するのがいいのだが、あまり気が進まない。

 人間は信用できないし怖い。

 今はもう獣人なのだからそこまで心配する必要はないと頭では分かっているのだが、心に刻まれたものはそう簡単にどうにかできるものではない。

 今日休ませてもらった黒毛鼠の小屋を思い出す。

 迷惑をかけてしまうが、教会からも近いし、場所としては申し分ない。

 あそこからなら町への出入りも簡単にできるし、農夫に気をつければいいだけだ。

 後は酒場に行ったりするために金が必要だ。

 何か金に変えれる物はないか村に戻ってみることにする。

 獣人の姿のまま歩いて村へと向かった。


 村に戻って家の中を探してみるが、金に変えれそうな物はない。

 人がいなくなった村なのだから当然ではある。

 何か売れるものはないか考える。

 狩りをして狩った動物ならどうだろうか、狩りをしていたといえば町にも入りやすいかもしれない。

 服を脱ぐと早速狩りをすることにした。


 黒毛鼠は小屋を利用させてもらうことも考えるとなんだか狩りにくい。

 猿か兎だろうか。

 猿は食べてもうまくなさそうなので兎にするか。

 獣の姿なら兎とも会話が出来るのだろうかと疑問に思ったが、今から狩ろうとする相手と会話はしたくない。

 林を注意しながらゆっくりと歩く。

 すぐに目的の兎は見つかった。

 草を食べているようだ。

 高く跳んで林の外に逃げられると厄介なので一気に仕留めたい。

 林の外側から体勢を低くし近づく、警戒心が強く耳もいいのだろう、その耳が動き、回りの音を警戒している。

 近づいていくと何かを感じたのだろう、後ろ足だけで立ち上がるとキョロキョロとしながら耳を動かしている。

 以前はここで動き逃げられた。

 警戒が解けるのを息を殺して待つ。

 逃げてしまうのではないかという焦りが胸に広がるが、その気持ちを抑える。

 警戒が解けたのだろうかまた草を食べ始める。

 今だ。

 低くした体勢から後ろ足を力強く蹴るとそのまま兎に向かって走り出す。

 すぐに兎もこちらに気付くが、前回よりも距離が近い。

 兎が逃げ出そうと飛び出す前にはその体を押さえ付けることができた。

 そのまま息の根を止める。


 同じように林の中を探し日が暮れる前に合計3羽の兎を狩ることができた。

 一度村に戻って服を着ると町へ向かう。

「ちょっと止まってくれるか」

 また門番に止められる。

「狩りに出ていただけだ」

 狩った3羽の兎を見せる。

 あまり長く会話をしたくない。

「おい、それウイングラビットか?」

 そんな名前なのか。

 兎としか思っていなかった。

 たしかに鳥みたいな羽が生えている。

「よく狩れたな。1羽売ってくれないか?」

 門番は兎を物欲しそうに見つめている。

「いいぞ」

 そう言って門番は銅貨みたいなものを20枚出してくる。

「今はこれだけしか持ち合わせがないんだが」

「それでいい」

 門番から銅貨を受け取ると兎を1羽渡した。 

 兎の値段が分からないので適正な価格かは分からないが、これで門番の機嫌がよくなるなら安いものだ。

「ありがとう、さあ通ってくれ」

 門番が機嫌よく門を通してくれる。

 売っておいてよかった。

 少しの会話だけで門を通してもらえた。


 そのまま広場に向かい肉を扱っている店を探す。

 すぐに目的の店を見つけると店主に話しかけた。

 店主は獣人だし人間より話しやすい。  

「これを買ってくれ」

 持っていた兎を見せる。

「ん? ってこれウイングラビットじゃないか」

 店主が驚いている。

「あんたが狩ったのか?」

「ああ」

「よく狩れたな。状態も悪くないし買わせてくれ。銅貨25枚でどうだ?」

 2羽で25枚ならあの門番には悪いことをしてしまったか。

「わかった。銅貨30枚出すから譲ってくれ」

「ああ」

 私が黙っていたから何か勘違いしたのだろうか。

 買ってくれるなら私は何も問題ない。

 店主に兎を2羽渡すと銅貨が60枚手渡された。

 ん?

 1羽が銅貨30枚だったのか。

 ならあの門番は安く買えたのか。

「いやー、久しぶりにこいつの肉が手に入った」

 私が黙っていると勝手に話しだした。

「こいつは逃げ足が速いし、飛んで逃げるからなかなか捕まらないんだ。たまに捕まってもお偉いさん達の口に入っちまうしな」  

 聞いてもいないのに色々と教えてくれた。

「そうか」

「そうなんだよ。この毛皮も羽も売れるしこっちも十分元は取れるぜ。また捕まえたら持ってきてくれ」

 店主も嬉しそうだし、次に狩ったらまたここに持ってくるか。

「ああ、私は行く」

「おう、ありがとうな」

 

 さて、銅貨が80枚もあるが価値が分からない。

 これで酒屋に入れるだろうか。

 まあ、分からないものをいくら考えて仕方ない。

 そのまま酒場に入ると周りに人が少なくて空いている隅のテーブルに座る。

 あの女はいるようだ。

 他に給仕をする店員が1人とカウンターに1人いる。

 客もテーブルを半分以上埋めるくらいにはいる。

 店内を見回すとメニューが書かれている板を見つけた。

 エールが銅貨2枚となっている。

 料理名が色々と書いているが、安いもので銅貨1枚高いものでも10枚程度だ。

 銅貨80枚は意外といい値段だったようだ。


「何か頼まれますか?」

 テーブルに座っていると目的の女ではないほうの店員が話しかけてきた。

「エールと安くて腹に溜まるものを」

「わかりました」

 酒は飲んだことはないが、酒場に来たのだから注文しておいた。

 女を観察するが、客と楽しそうに話しながら仕事をしているようであまり怪しい感じはしない。

 真面目に働いているだけなんだろうか。

「エールです」

 酒はすぐに運ばれてきた。

 料理と一緒に来るわけではないんだな。

 1口飲んでみる。

 うまくはないがまずくもない。

 水しか飲んだことはないがコクのある液体を喉に流し込んでる感覚だ。

 体が少し熱くなるのはアルコールの影響なんだろう。

 ちびちびと飲みながら女の観察を続けると料理が運ばれてきた。

 何の肉か分からないものと野菜を炒めたものだろう。

 たしかに腹に溜まりそうだ。

 フォークで1口食べてみると口の中に色々な味が広がる。

 肉の味や野菜の味は分かるが、塩以外にも何か味付けをしているのだろう。

 少々濃いと感じるが悪くはない。

 エールを飲みながら頂く。


 食べ終わったのであまり長居はせずに金を払って酒場を出る。

 酒で少し温まった体に冷たい風が当たるのが心地いい。

 酒場の見える目立たない位置に移動し監視を続ける。

 しばらく待っていると、女が酒場から出てきた。

 まだ酒場は営業しているが、仕事は終わったようだ。

 女が酒場の前で待っていると男がやってきた。

 目的の男だ。

 気付かれないように広場を迂回し近づく。

 町を見て回っておいてよかった。

「何か分かったか?」

「まだ2、3日しか経たないのに何も分かるわけないだろ」

 会話が聞こえる位置まできた。

「あんたが顔がばれてなきゃ働かせたのにね」

「すまないな」

「まったくだよ」

 子供達の情報はつかめておらず、ただの内輪揉めをしているようだ。

 でも、子供達の事を探っているのは以前の会話からも間違いないだろう。

 それ以降も子供達の話はなく、しばらくすると2人で宿屋に帰っていった。


 辺りは暗くなっており、店も酒屋以外はほとんどが閉まっている。

 酒を飲んで時間がたったせいか体の火照りもなくなっている。

 子供達も寝ている時間だろう。

 私の足は自然と教会に向かった。


 教会裏に小屋に到着すると、小屋からはまだ明かりが見える。

 その窓からは子供達の楽しい笑い声が聞こえる。

 まだ起きていたようだ。

 教会の石垣に腰をかけると、その笑い声を楽しんだ。

 話している内容までは分からなかったが、子供達が確かにそこにいて、幸せそうにしているというだけで嬉しくなる。

 少しすると小屋の明かりが消えた。

 すぐにでも覗きたいが、しばらく我慢する。

 少し時間が経ってから中を覗いた。

 子供達が藁のベッドのようなもので寝ていた。

 あの人が作ってくれたのだのうか。

 2人で仲良く丸まって寝ている。

 今日も我が子が可愛い。

 一緒にあのベッドで寝れないのがとても残念だ。

 あの人を見ると、自分の藁のベッドを作っているようだが簡素でとりあえず作ったような形をしている。 

 私の子供を優先してくれるあの人の行動に胸が熱くなるのを感じる。

 今すぐにでもお礼を言いたいが、今はまだ関わらないほうがいいだろう。

 また私のせいであの人を苦しめたくはない。

 あの人には返せないほどの恩があるのだ。


 子供達の寝顔を堪能し静かに小屋を後にした。

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