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捨てられて

 前作のシリーズです。

 前作の登場人物の別視点となります。

 前作を読まなくても読めるようにしているつもりですが、前作を読んでからのほうが分かりやすいと思います。

 とりあえず、前作の結末まで完成したので公開していきます。

 その後の続きも考えてはいますが、遅筆のため公開は遅れるかもしれません。

 1人でも多くの方に読んで頂けると幸いです。

 暗くじめじめとした場所。

 その場所は狭く走り回ることさえ出来ない。

 私をここに閉じ込めた男は、私をただの繁殖させるための道具としか見ていない。

 私を見る目はとても冷たく、自分の機嫌が悪くなるとすぐに私を閉じ込めた場所を蹴る。

 気付いたときにはここにいた。

 他の世界なんて知らない。

 知ったところでこの場所からは逃げ出すことすら出来ない。

 私は何の為に生きているのだろう。


 私は子供を産んだ。

 どこの誰ともわからない相手との子供だった。

 それでも自分が腹を痛めて産んだ子供はとても可愛く愛おしい。

 まだ目も開けれずに私を必死に探す姿、乳を吸おうと私を求める姿に救われる。

 生きる意味さえ分からなかった私に、この子達を守るという意味を教えてくれた。


 子供達も目が開き乳も飲まなくなった。

 相変わらず男はイライラとしている。

 ある日、男が私達を箱に閉じ込めどこかへ連れて行く。

 どれだけの時間がたったかわからない。

 目的の場所に到着したのか男は私達を箱ごと投げ捨てる。

 男を見たのがそれが最後だった。

 私達は捨てられたのだ。

 理由は分からない、分かりたくもない。

 男の身勝手による行いだということは分かった。

 利用するだけ利用して、都合が悪くなったので子供と一緒に捨てたのだ。

 胸の中から怒りが、憎しみが、恨みが溢れてしまうのではないかと思うほど湧き上がる。

 子供達がいなければあの男を捜しその喉を噛み千切っただろう。

 しかし、それはできない。

 私には子供がいるのだ。


 狩りのしかたなど知らない。

 子供達に食料を与えるため町をさまよう。 

 捨てられた物だっていい、ゴミ箱だって漁ってやる。

 子供達の為ならば何だってしてやる。

 

 人間が私を見る。

 その瞳に好意的な感情などない。

 人間が私に言う。

 汚いと、怖いと、危ないと。

 人間が私を襲う。 

 石を投げ、暴力を振るう。


 私が何をしたというのだろう。

 歩いているだけではないか、人を襲ってなどいない。

 捨てられた食べ物を取っているだけではないか、盗んでなどいない。

 

 まるで生きることすら許されないと言わんばかりの扱いだ。

 それでも私は生きてやる。

 捕まりなどしない。

 子供達を守るため諦めたりしない。


 初めは4つの命があった。

 私の力が足りなかったのだろうか、1つの命が消えた。

 私の行いがいけなかったのだろうか、また1つの命が消えた。


 子供達の居場所が人間に知られた。

 私の子供は玩具じゃない。

 私の子供を乱暴に扱うな。

 子供達が何をしたのというのだ。

 私が駆けつけた時には2つの命は消えていた。

 どれだけその頬を舐めようとその命は戻らなかった。どれだけ温めようと体は冷たくなった。

 私の心にひびが入る。

 まるでその音が聞こえたような気がする。

 そのひびが私の心を歪めようとする。

 折れようとする。


 それでも命は残っている。

 残った命を消すわけにはいかない。

 私の大切な子供なのだから。


 餌を取りに町へ出る。

 もっと子供に食べさせなくてはならない。

 私の体は痩せていく。

 それでも1口でも多く子供に与えたい。

 

 餌を見つけることが出来た。

 早く子供の所に戻らなくては。

 急ごうとするが足に力が入らない。

 それでも無理して前へと進む。

 フラフラと体が思うように動かない。

 前から人間が近づいてくる。

 逃げなくてはいけない。

 体は言うことを効かず車道へとすすむ。


 目の前に男の姿があった。

 必死な形相で私を抱き締める。

 人間になど触られたくない。

 しかし、体に力が入らない。

 私の目に迫り来る車が映る。

 この男は私を守ろうとしている。

 しかし、車は向きを変え私と男を逃がさない。

 子供達を残して死んでしまうのが嫌だった。

 人間に助けられたのが嫌だった。

 それでもこの男の体のぬくもりを拒めぬ自分が嫌だった。

 激しい音とともに私の人生は終わった。 

 嫌だったはずの人間に抱かれてどこか安らぎを感じていた。

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