人形使い編
八つ橋
「では、本日の警備係と警備魔法の状態についてだが。山川。」
俺以外で唯一の人間である山川さんが呼ばれる。
山川さんは、もちろん俺と同じソーサーだ。
一応、この国の最高峰であるマルテニア第一級魔法大学。通称「マルテ大」を卒業しているらしい。
この爺さんは、78年前から警備魔法についての研究をしており、この国で警備魔法で彼の右に出る者はいないといわれている。
また、その腕を買われ、この図書館の警備魔法のほとんどは山川さんが張っている。
「ミーシャちゃん。相変わらず良い体をしておるのう。」
「さわんなくそ老いぼれ!!」
まあただの変態ジジイだが
「山川。お前ちゃんと話を聞いているのか。」
「聞ておるわ。警備についてじゃろう。」
そう言うと山川さんは席を立った。腰をさすりながら。
「老化というものはしたくないものじゃな。腰が痛くてたまらんわい。」
そういってぶつぶつ余計なことをつぶやいていたので俺はこう言った。
「山川さんがじじいなのはわかったので早くしてください。」
すると山川さんはあきれたようにこう言う。
「まったく、年寄りの気遣いもできんのか。」
これだから最近の若いもんは。そういって山川さんはようやく本題に入ってくれた。
「本日の警備係については、予定表のとうり稲垣とケルンじゃ。ただ、諸事情によりもう一人はいるこ とになった。」
諸事情?なんのことだ?
「バイル、おぬし入れ。」
「はぁ。」
返事が気に食わなかったのだろう。山川さんはポケットから山川さんオリジナルの名刺を取り出し、先輩に向け投擲。その名刺はシャッという普段聞こえないような音を出し、バイル先輩の頬をぎりぎりで通り抜ける。
そして・・・
”ダン”という、印象的な音を残し後ろの壁に突き刺さった。
先輩の頬に汗が流れる。
次余計なことを言ったらやられる。先輩は、そう思っているのだろう。
すると
「五月蝿いのー。なんちって。」
そんなことを言って、ニコニコしている。
まさか!
そう思い名刺をよく見る。
投げた名刺の先には蠅が刺さっていた。
いや、名刺を挟んで、ちょうど二つになっていた。
というか、紙って壁に刺さるのかぁ。これはいいことを学んだな。
「まぁそういう事じゃ。分ったか?バイル。」
先輩はすごい勢いで首を振っている。必死に、それはもう必死に。
「そして、家の子についてじゃが、まあ元気にしてるよ家の子たちは。」
山川さんは、自分が張った警備魔法たちにいちいち名前を付けている。しかもそれらを総称として、「家の子」と呼び、年寄りが孫を可愛がるがごとく可愛がっている。それはもうものすごく。
ワシからは以上じゃ。
そういうと、山川さんは名刺が刺さった現場によっこらしょと行き、名刺を引き抜く。
素晴らしいことに、その名刺は傷もない新品同様の姿をあらわしていた。
感想待っています。