詩
与えられた身体を憎み
遥か遠き故郷を想い
伝わらぬ気持ちに涙して
歯がゆさに、火水を感じ
染まる手に、零れるを嘆き
魚水の志に、焦がれる
堕ちた過去に、天上に咲く花を見て
亡くした日々の雪白は
今を生きる滅赤になり
その匂いは芳烈にして
襲いくる影と、哀音に
膝を抱え吾兄の面影を
瞼に映す
君影草のように
心を咲かせ
勿忘草のように
記憶に刻む
その距離の天淵さに
天を仰ぐ
詩2
覇を唱えた王に虐げられ
土地を追われ、日を過ごし
逆巻く風に立ち向かい
幼子に夢託し
語り暮らした
光を絶やさぬ空を見て
草の原で、汗を流した日々
種が芽吹いて、若木になり
老いて動じぬ大木は
歴史の証人の導にして
語る口もなし
流れる水は選ぶことをせず
その露で全てを薙ぎ払い
正も愚もつかぬ血を流し
時は早くて秤傾き
人の言に重りは増え
重ねた年は刻舟にして
かねての雅を春夢に忘れ
星霜の彼方と此方は
昔を刻み、明日に忘れる。
詩3
追いかけてもらえる嬉しさと
見られたくない醜さと
お互いの切ない想いが交差する
蝕むような後悔に
吾兄の恋情と娘の恋心
沿うはずの二人を
理の無情が打ち砕く
女は蜘蛛のように執拗で
蛇ねように嫉妬深く
蟷螂のように男を捕らえる
例え身を落としても
しかしその思う様は
玻璃のように繊細にして
絹糸のように一途で
飛花のように儚く
胡蝶のようにいじらしい
男は狐狼のように狡猾にして
色に遊び、華に靡く
宵を越す銭を持たず
蛮勇を誇り、刹那の火花を散らす
例え屍を拾われずとも悔いなし
しかし熊羆のように勇猛にして
猪のように愚直で
鳥のごとく盲目にして
その意思は千靭の谷を登る獅子のごと