ハジメテ
わたしは今、ベッドの上で横になって、胸の鼓動の高鳴りを感じている。目の前には、高校の時から付き合ってる彼がいる。
別にあせっていたとか、自分はもう子供じゃないって宣言したかったわけじゃない。けど、やっぱりちょっと緊張する。
「大丈夫だから。安心して」
彼はそういってわたしを安心させようと必死だけど、そんな彼の優しさとは裏腹に、わたしの心臓の早鐘は止まる気がしない。
「痛かったらすぐに言ってね」
「うん……」
彼がそういった後、わたしを鋭い痛みが襲ってきた。思っていたより硬かったけど、ちょっと細いかな。刺すようにして痛みを押し付けるようにして、私の体を確かに裂いて、ゆっくりと中へ中へと入り込んでくる。
「ああっ!」
思わず声が出てしまった。
「平気? 無理しなくてもいいよ」
「ううん。続けて」
「わかったよ……」
彼はドギマギしながら、ぎこちない様子で続ける。
なんだか濡れている気がする。見ると、その部分から血が出ていた。彼もこういうことをするには初めてだと言ってたから、きっとそのせいもあるのかもしれない。
「もうすぐ終わるよ」
彼が言った。過度の緊張のせいか、息が上がっている。
「もうすぐ。もうすぐだよ」
「うん」
その言葉の直後、やることが終わったのか、わたしの体の中に入り込んでいたものがすっと抜けてった。
「あ。結構、いっぱい出たんだね」
「ああ。君のおかげだよ」
最初想像していたより多かった。透明な袋は、内部に液体をたたえてる。
「そんなことないよ。でも、なんだか素敵な気分……」
「ぼくもだよ。ありがとう」
服に血がついてしまわないよう、彼から手渡されたティッシュで汚れを拭きとってから、ベッドから降りる。
「また来るね」
「ああ。今度はもっとうまくやって見せるよ」
「うん」
わたしのしたことは絶対間違いなんかじゃない。大切な命につながっている大事なこと。本当に素晴らしいことだって、胸を張って言える。
献血にご協力ください。