建国史
序章
世界は、1度 壊れかけた。
その世界は、ヒトと妖精や神の使いと呼ばれる 精霊が 背中合わせに住まう 場所。
自然の流れを 妖精が、読み それをヒトに教え ヒトは、それを生かして 生活する。
妖精は、美しい自然の中で飛び回り 精霊は、実体を持って ヒトの世界で生活する者もいた。
時には、妖精や力のある者は、精霊と契約を結び 共に戦う。
だが それは、彼らとヒトの心が通じたことで成り立つことであり 強制的に捨て駒のように 使役することではない。
彼らも、同じ世界に住まう 生き物なのだから。
けれど ヒトは、彼らと共存してきた 過去を塗りかえろうとした。
力でねじ伏せ 富と権力を手に入れる為に。
妖精達は、ニンゲンの戦争の道具として 急激にその数を減らしてしまった。
より大きな力を手に入れる為 非合理な方法で 無理やり 契約を結ばされるのだ。
逆らえば 容赦ない 暴力を受け 力の弱い妖精達は、死んでしまう。
精霊も、死ぬことはあまりないが 力を失い 最悪の場合は、魔に堕ちる。
魔に堕ちた 精霊は、二度と 元の姿に戻れず 闇の中でない限り 苦しみしか感じなくなってしまう。
普通 妖精達は、自然豊かな土地に生まれるものだが 血に穢れた 場所では、生まれない。
生まれるのは、欲望の塊である 暗黒だけ。
ヒトの心の闇を糧に ソレは、どんどん 大きくなる。
その数が増えれば 3日と経たないうちに 世界の半分は、闇に呑まれてしまうだろう。
暗黒は、これまで いくつもの世界を崩壊させ 混沌に沈めてきた 禁忌の存在。
それが、出現した時 救いは、どこにも存在しない―――そうまでして 恐れらる存在だった。
世界を簡単に 殺してしまう存在なのだから。
世界の子である 神々は、その現状に 苦しむ。
ある神は、怒りを争う者達に向け 雷鳴を轟かせた。
また ある神は、捕えられた妖精達を逃がす。
けれど ヒトの狂気は、収まることがなかった。
更に その異常な心理状態は、進んでゆき ニンゲン達の心を蝕んでいく。
時が経つにつれ 神は、1人 また1人と地上に現れなくなっていく。
ニンゲンは、神々の恩恵が消えつつあることに 気が付かなかった。
目の前にいる敵を倒すだけに意識しすぎて 大切なモノが、嘆き悲しんでいることに。
ニンゲンは、欲に塗れ 自然を破壊していくだけで 守護の力が消えることを知らなかった。
生きていくにおいて 必要不可欠だった 古き時代からの力が、力を失うという恐ろしさを。
だから ヒト同士が争い その命は、どんどん 散っていくのだ。
神は、ニンゲンに絶望し 世界に掛け合う。
これ以上 世界が、壊れていく姿は、見るに堪えなかったから。
――――― 世界を1度 破壊し 新たに作り直せばいい。このままでは、世界そのものである あなたは、消えてしまう。
だが 世界は、その願いを聞き入れなかった。
――――― まだ 希望が消えたわけじゃない。ヒトは、可能性を秘めた存在なのだ。諦めさえしなければ 奇跡は、起きる。
希望の光を、未だに 世界は、信じ続けているのだ。
世界の言葉に 神々は、諦めかけていた 願いを抱く。
すると その願いは、叶えられる。
消えようとしていた 光の精霊の声に応じた 13人の救世主が、現れたのだ。
人々は、最初 彼らの姿を見て 恐れた。
なぜなら 救世主達は、この世界に存在している 人々の持つ色ではなく 闇をまとっていたのだから。
彼らは、諦めようとしていた 人々を慰め 希望を語る。
―――― まだ 何も、終わりじゃないッ!逃げることは、悪いことじゃない。でも 諦めるのは、ダメだッ!
―――― 逃げても 少し時間をかけて みんなで 話し合えば 作戦を考えられる
彼らの言葉に 人々は、失いかけていた 希望と願いを、輝かせた。
救世主達は、個人個人 多彩な才能を持っており 精霊達の恩恵を一身に受ける。
ある者は、王者の資質を持ち 世界を破滅しようとする 存在に挑み ある者は、癒しの力で 傷ついた人々や精霊を癒していく。
何より 13人 すべてが、妖精と精霊の庇護を受け その守護の証である 宝石を身に着けていた。
ただ 精霊と契約することでは、得ることのできない 血と血の契約。
その血族が、世界に存在する限り その契約が消えることはない。
精霊が人間に与える 最大級の恩恵だ。
この守護を受けている者は、自分と契約している 精霊よりも大きな力を持つ 精霊でない限り 傷つけることはできない。
彼らが契約しているのは、世界で最も 古くから生きてきた 神に最も近い精霊達で それ以上の力を持つ精霊は、いなかった。
何より 救世主は、世界を愛し 人々を想い 誰かの為に必死になれる。
弱り切っていた 妖精達は、そんな彼らの心を感じ取り 力を貸す。
疲れ果てていた 人も闇を払う為に 立ち上がる。
自分の生まれた世界を、守る為に。
そして 闇は、世界から一掃され 光が、再び 世界に戻ってきた。
人々は、喜びを分かち合い 救世主達を称える。
そして 救世主を中心に 国が、成り立った。
妖精と精霊を敬い 共に生きていく 楽園の国が。
最初に 国は、いくつかの祠を立て 再び 暗黒が、生まれ 世界を崩壊に導かないよう 封印された。
同じ悲劇を繰り返さないように。
封印の祠は、その土地にて 数年に1度 巫女が、選ばれ 封印の強化を行うことになった。
どんなに強大な力を持っても 長期間 封印を施していれば どこかが、綻びてくる。
故に 精霊に愛された 乙女が、巫女として その役目を果たすのだ。
封印を張り直す為の儀式を行う為に。
そして 国主には、救世主の1人が 人々の願いもあり 即位する。
誰よりも多くの精霊の守護を受けた 人々の為に走り回った 青年だ。
最初に彼らの声を聞き届け 他の人々に呼びかけてくれた少女を伴侶に迎えて。
2人は、後に 国民から慕われる夫婦で その後も 子宝に恵まれ 国は、栄えていく。
他の救世主達は、それぞれ 自分にできることを探し 世界各地へと旅立っていった。
ある者は、医療を志し ある者は、発展途上国へと渡り 様々な知識を教える。
そして 時が経ち その事実は、伝説となり 後の人々に伝えられていった。