山中での出会い
ご来店いただき誠にありがとうございます。
「あ~~クソがっ!なんっか気持ち悪ぃと思ったら糞まで漏れてやがんじゃねぇか。クソだけになっ!」
目の前の危機を脱した(?)柾史はズボンの中がべちゃついていることに気づき、恐る恐る引っ張って中を見ると死亡した際に筋肉が弛緩したために起こった失禁でズボンの中の状態が見えてげんなりした。
「……どっか水場を探すか」
ため息を吐いて頭を地面に置くと排泄物まみれのズボンとパンツを脱ぎ、摘まんで遠ざけて持つ。もう片手には頭を持ち下半身は丸出し……どう見てもただ者じゃない変態です。本当にありがとうございます。
変態怪異は自身の頭を掲げて少しでも高いところから辺りを見渡そうとする。
「ちっ、ねえな。もう少し奥まで行ってみっか」
特に根拠があるわけでもないが頭が取れてて下半身丸出しで人里の方に行けばどうなるかは、流石におバカの柾史でも想像がついた。きっと別の意味でも面倒になるだろうことも。
しばらく山中を彷徨っていたら細い水流であるが水源を見つけたので一先ず水溜りに下半身をつけて洗う、水流でズボンも洗おうとしたが片手が塞がっていることに気づき頭を地面に置いたら水面しか見えなくなってしまった。
「洗濯物が全く見えねぇ。っつかこれはっ!?」
しかも水流を浴びて跳ねたブツの破片が顔に跳んできていた。
「汚ねぇっ!!」
慌てて頭を持ち上げて、思わずそのまま首ののところに置いてしまう。
「あっ!あーーーーーーーーっ!」
当然弾かれた頭が大きく弧を描いた。
ぽちゃん
「ぶくぶくぶくぶくぶく」
腰辺りしかない水場に水没した頭を慌てて体が探すが位置関係が把握できず、頭を拾い上げることが出来ないまま時間が経つ中で柾史はあることに気づいた。
(あれ?俺、息してなくね?)
先ほどは驚いて口の中の空気を吐き出してしまったが全く苦しく感じなかった。
落ち着いて水面側を見ると、うろうろ頭を探している身体を見つけたので抱えさせて水中から脱出する。
ようやく空気のある場所にでて一息ついた柾史だが、不意にほとりで水を飲んでいるやたら大きな狸と目が合った。
柾史の姿を見て驚いた狸が立ち上がりぶらぶら揺れている。柾史も履いていないのでぶらぶら揺れている。お互いに見つめあって硬直したままぶらぶらと時間が過ぎ……
「へ、変態だーーーーーーっ!」
狸が悲鳴を上げた。
「誰が変態だこの野郎!」
柾史は激怒した。
「下半身丸出しは変態でやんす!」
「てめえだって丸出しだろうがっ」
「狸がパンツ履いてたらおかしいやろがいっ!」
狸に正論を吐かれた柾史はぐぬぬと唸り黙り込んだ。
「そんでにいさんはご立派を丸出しにしてこんなとこで何してるでやんすか?そういう趣味なら街中でやった方がいいでやんすよ。口裂けのねえさんみたいに」
「あいつの口をち〇こと同列に語ってやんなよ……」
狸の物言いに呆れた視線を向けて頭を掻こうとしたが、その場所に頭がなかったので手を彷徨わせながらここに来るまでを話し始めた。
「へぇ~、にいさんは元人間だったでやんすか。その割には狸が喋っても驚かないでやんすね。………いや、ちょっと待つでやんす。聞き流せないことがあったでやんすよ。この水源でパンツを洗ってた……漏らしたヤツを?………なんてものを飲ませるでやんすか!このろくでなしがっ!」
「うおっ!?いきなりキレんな。狸だったらう〇こが混じってようと、泥が混じってようと普通に飲むだろ!」
狸と出会った時の状況の話に差し掛かった時に、柾史が何をしていたか聞いて顔を青褪めさせる。しかし狸なのにドラ〇もんのようにはならなかった。ガチギレした狸だが先ほど己が持ち出した理論で返されて、今度は狸がぐぬぬと黙り込む。
「んで、お前に驚かない理由だが、ちょくちょく関わることがあんだよ。定職なんぞ就けねえからって何でも屋をやってるとな」
別に何でもないことのように話すとハッとしてズボンのポケットを弄る。
「くそっ、財布は盗られてやがる。あのクソども今度会ったらぶっ殺す!スマホは………無事か。壊れてねぇなっ!」
解体される前にゴロー達が逃げ出したことでスマホは無事だった。
(別に熊に感謝なんてしないんだからねっ!)
と、心の中で柾史は思っているが、まかり間違っても可愛さの欠片もない。
「げっ!乃彩からの着信が150件超えてやがる。」
ロックを解除したところで目に入った着信とメールを見て嫌そうな声を出す。
「どなたでやんす?」
「あん?なんでお前にそんなもん説明しなきゃいけねえんだ?」
「ただの興味本位でやんす。まあ、別にどうでもいいでやんすが」
柾史が不機嫌なまま狸に返すと、狸もなんとなくで話を振っただけなので特に興味なさそうに返す。話したところで何もなさそうなので、逆に柾史は話しても別にいいかと思ったようだった。
「なんつーか……セフレ?部屋に住まわしてくれたり、小遣いくれたり?いや………結構束縛強いし、飼い主………マジで?いやいや、飯くれー作ってるし」
改めて考えると自身のちっぽけな矜持が崩れそうで、冷や汗を流しながら優勢な部分を探すがやがてがっくりと肩を落とす。余談であるが柾史はお手軽から本格までと、なかなか料理が得手である。
「最低でやんすね。ひもってやつでやすか?」
「うるせーっ!っつーかっ、人間の世界に詳しいなお前っ!」
「あっしは化け狸でやんすからね。時々人間に化けて人間の世界に潜り込んでるっす」
そういうや狸は器用に印を結んで変化をすると、禿げたビール腹のおじさんが現れた。全裸である。
「………なんつーか、竿おじさん?子供は見ちゃダメな本で活躍してそうだな」
「失礼でやんすね。人間のメスなんかに興味無いでやんすよ。つるつる過ぎるでやんす」
「いや、今のお前の方がつるつるだろ。禿げだし」
おっさんの裸体なんぞをガン見する趣味もないので、乃彩からの大量の着信を一先ずスルーして目当ての人物に電話を掛けると何コールかで繋がった。
「よお鏡、俺だ。ああっ?オレオレ詐欺じゃねえよ!………いや、やったけどよ」
どうやらオレオレ詐欺もやっていたらしい。実際はおバカなので失敗していたが。
「ちょっと困ったことが起こってな。お前の領分だから何とかならねえかと思ってよ」
(怪異を相談できるってことはもしかしたら退魔士でやんすかね?だとしたらにいさんの前に現れてしまったのは失敗でやんしたね)
全てではないが怪異を問答無用で払おうとする退魔士もいるので、追いかけられたことがある狸は苦手意識を持っていた。
やがて、話がついたのか柾史は電話を切ると頭とスマホを置いて濡れたままのズボンを履く。
「ふう。あのクソガキが唯一の命綱かよ。ああ、狸。俺は行くから、じゃあな」
「ちょっとにいさん。にいさんの姿で退魔士の前に現れたら祓われちまうでやんすよ」
濡れたズボンに顔を顰めながらもあっさりと去って行こうとする柾史を慌てて止める。もし、柾史が祓われた時に自分の存在を話されたら一大事である。
「ああ?ああ!あいつは退魔士じゃねえよ。お前と同じく怪異で、なんつったかな………ああ、自称怪奇探偵とか言ってたぜ」
「はあ。ほお。ふうん。ちょっと興味あるでやんす。付いてってもいいでやす?」
「別に構わねえが………捕まんじゃね?」
狸改め竿おじさんの裸体を上から下まで眺めてそんな感想が口から突いて出た。
肌色面積大目なサービス回です。




