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とあるチンピラの最期

ご来店いただき誠にありがとうございます。


新連載です。


いきなり残酷表現ありの話です。

 塔錠柾史はチンピラである。


 元はそれなりに整った顔立ちであるが、斑に染まった金髪と周囲を威嚇するような表情が全てを台無しにしている。


 素行も恐喝や暴行、詐欺に窃盗と散々悪事に手を染めて生きて来た小悪党である。


 少々喧嘩が強かったこともあり、これまで少々の危機が起きても腕力で逃れて生きてきた。


 それは偏に運が良かっただけの話であるがそれも今日までであった。


 塔錠柾史は今死にかけている。


 いつものように気まぐれに絡んだ相手がタチの悪い半グレの仲間で、ボコってカツアゲされた後に仲間を引き連れて柾史の前に現れた。なにやらごちゃごちゃ言って襲い掛かってきたので数人は倒したものの多勢に無勢で、後は一方的に甚振られてしまいに手足は砕かれて内臓が傷ついているのか血を吐いており殆ど虫の息だ。


(あ~くそ、痛ってぇ。こいつらぜってぇぶっ殺す。っつーか、どっかに運ばれてやがんのか?)


 目が腫れあがって開くことが出来ず周囲の状況は把握できていないが、荷物のように担がれて傷ついた内臓が圧迫されて痛みを通り越して熱を感じていた。


 固い場所に放り出されたと思ったら振動を感じるので車に乗せられているのだろう。そこまで考えたところで痛みが限界を超えて柾史は気を失った。


 次に柾史が意識を取り戻したのは乱暴に地面に放り出された時だった。


(がっ!なんだ!?………土の匂い。街中じゃねぇのか。っち!こいつら俺を殺して埋めようってことかよ)


「ゴローさん。令和の世の中に何で穴掘りなんスか?もっとスマートに酸プールとかミンサーとか文明の利器を使いましょうよ」


「サ〇ポールみたいに言うんじゃねぇよ。ってか、ミンサー言うな。ハンバーグが食えなくなるだろが!」


 ハンバーグが好きらしいゴローと呼ばれた男が、スコップで穴を掘りながら舎弟口調で喋る男に怒鳴る。しかし、怒鳴られた男は飄々と流して笑っている。


「まあうちは庶民の集まりっすからそんな金がないことは分かってるっすけどね」


「なら言うんじゃねえよ!穴はこっちで掘っとくからお前はそいつをバラしとけ!」


「ええ~~。汚れるから嫌なんすよねコレ」


「うるせぇ!つべこべ言わずにやれや!」


「ういーーっす」


 ゴローに命令された男が柾史の傍でしゃがみこんで話しかけてくる。


「恨まないで欲しいっすね。悪いのはボスの弟をカツアゲした自分ってことでヨロ」


(くそがっ……こいつらぜってぇぶっ殺す。こんなところで死んでたーーー)


ザシュッ


 逃れようと身じろぎをしたが、正確に首の骨と骨の間にナイフを突き立てられて柾史は死んだ。享年25歳。


 息絶えた柾史を見下ろしながら男は突き立てたナイフをそのまま小刻みに動かして首の傷を広げていく。


 鼻歌交じりに柾史の首を落とす作業をする男はどう考えても手馴れていた。


「ったく。あの野郎は嬉々として人間バラしやがって薄気味悪ぃ」


 ゴローがちらりと男を見ながら嫌そうにぼやくと、こんな場所からとっとと離れたいと思い一層力を込めて穴を掘っていると繁みから音が聞こえた気がした。


「ちっ!誰か来やがっーーー」


 ゴローがスコップを持ち上げて振り向くと、まあるいお耳の四足歩行をした黄色くない奴のつぶらな瞳と目が合った。


「……………きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」


 ゴローは絹を裂くような悲鳴を上げて全力疾走で逃げ出した。


「あっ!ちょっと待ってくださいよゴローさぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ」


 殆ど皮だけしか繋がっていない柾史の首を放り出して男も駆けていく。


 普通なら背を向ける男達を追うはずの熊は近くに労せず喰らうことのできる(柾史)が落ちていたのでゴローたちを追うことはせず血だまりに沈む肉塊の方にのしのしと歩み寄った。


 まだ温かい柾史の体に前足を置いてふんふんと臭いを嗅ぐ。やがて気が済んだのか大口を開けて柾史を齧ろうと顔を近づけたその時、


「臭えんだよ、この野郎!」


「ぎゃんっ」


 完全に死んでいたはずの柾史の眼に蒼い炎が灯り熊を殴り飛ばした。それは本来あり得るはずがない。首がもがれた体が動くわけもなければ、人間の腕力で熊を殴り飛ばせるわけがない。ましてや柾史の手足は折れていたはずだ。


「んん?何で空から木が生えてんだ?」


ぶちっ


「おおおおっ!?」


 何かが千切れる音がしたと思ったら視界が天に上り、僅かな衝撃と共に視界が回り始めて驚きの声を上げた。


「ぐわあああああっどうなってんだ!」


 やがて回転していた視界が止まるとやたら低い場所から見上げる。そこには棒立ちする自分の体と餌に殴り飛ばされた怒りと警戒で威嚇する熊が映った。


「くぅまぁぁぁぁああああああっ!?」


 驚き慌てた柾史は顎と鳩尾、ついでに股間を熊に反応もさせずに殴打し蹴り上げた。


「ぎゃいんっ」


「は?」


 よたよたと逃げる雄熊を見送りながら自身の思った通りに動いた体を観察する。


「半グレどもにボコられたはずが痛みねえ。っつーか何で首が離れて体が動いてんだ?………ああ、これがBluetoothってやつか!」


 違う。


 塔錠柾史ーーー小学校中退。彼はおバカであった。


「首から蒼い炎が出てんな?ーーーかっけえな、オイ!」


 塔錠柾史ーーー25歳。彼は未だ厨二病を患っていた。


「っつっても、このままじゃ人前に出れねえからな。どうすっか………」


 そう呟きながら体を操作して首を持ち上げて蒼い炎を揺らめかせる断面に乗せようとする。


「これ、焼けたりしねえよな?俺の兜焼きとかなんねえよな?」


 恐る恐る頭部を断面に近づけると磁石の同極同士を近づけた時のように頭が弾かれて飛んでいった。


「ぬわあああああああっ!?」


 再びころころと転がる頭を慌てて追いかけて拾い上げる。


「くっつかねぇっつか弾かれる!?ご飯粒でつけとこうと思ってたのに」


 おバカがお馬鹿な考えを実行できずに落ち込んだ。


「くそっ!とりあえずこの山ん中でどうすっか考えるか」


 少し肩を落とした柾史は物理的に頭を抱えて自身の死体隠匿をされる場所となった山の奥に向かって歩き出した。

冒頭でも書きましたが新連載です。

もう一つと並行して連載しますが、こちらは不定期の予定です。

主人公の特性上導入は残酷表現とグロ表現がありますが、基本コメディの予定です。

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