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あ!Shining

作者: 沙華やや子
掲載日:2026/03/04

今朝も夢見心地のさっちゃんは……


(あたい、与田沙樹子(よださきこ)。高校3年生。もうすぐケーキ屋さんに就職すんの。あたいには、誰にも打ち明けられない秘密があるんだ……)


「さっちゃん! さ・っ・ちゃ・ん?! さっちゃんたらさっちゃん、朝ですよ――!」


「ン……ムニャムニャ。ママ、うるさいよぉ。フワァ~……」


 いつものキラキラとした大きな瞳が半分の大きさになっている沙樹子。

(ハ~、冬のお布団の中っていい気持ち……)


 ママが、いつまで経っても起きない沙樹子に困り果てている。


 ――30分後。


 ドタバタドタドタ! 階段を派手に駆け下りてくるさっちゃんこと沙樹子。


「んっもぉー、マーマ! 何で起こしてくれなかったの!」


「起こしましたー!」


「今起きたんだよ、あたい」


「ママは、6時半には起こしに行きましたよ~だ」


 ちょっとした親子の小競り合い。

 でもね、仲良し親子なんだよ。


 目玉焼きを載せたトーストとポテトサラダとコンソメスープ。時間はなくとも、がっつり朝ごはんは食べる沙樹子。


「ママ、いってきまーす!」


 爽やかなボブカットで、熟睡後お目々パッチリ、ご機嫌さっちゃんは駅まで走る!


――学校にはギリギリセーフ。


「おはよ、さっちゃん」


 ホームルームの直前に挨拶してきたのは、北川萌音(きたがわもね)。切れ長の目が美しく、日本人形みたいな女子だ。華奢だけどグラマー。ポニーテールがよく似合う。男子に抜群の人気を誇るお姫様的存在。


「お、おはよう」


 沙樹子は彼女と話す時、なぜだかすっごく緊張する。何かを見透かすような、静かな湖のように澄んだ瞳をしている。


 沙樹子の席の斜め前に萌音の席がある。とても姿勢が良く勉強熱心の彼女。沙樹子は萌音を見ていると背筋が伸びるような思いがする。


 昼休憩の事。


 いつものように、萌音の周りに5人ぐらい男子が群がる。


「萌音ちゃん、一緒にお弁当食べようよ」

「へ~、自分で作ってんだ。チョーおいしそうな玉子焼きだね!」

 など、彼らは萌音の気を引こう、少しでもお近づきになろうと一生懸命。


 沙樹子は遠目にそれを見ている。

 沙樹子はと言うと、カッコいい表現をするならば一匹狼。実は人づきあいが苦手で心を開ける友達が居ないのだ。


(あ! 香苗(かなえ)だ)

 ある女子グループのリーダーで高慢な態度が目立つ子。彼女は萌音がモテている事が面白くない。


 香苗は学食のパンをもう食べ終えたらしい。そして萌音の所へ、他の女子4名を引き連れツカツカと歩いて行った。


 男子グループも恐れおののく気迫を持つ香苗。男子達は、お弁当を掻っ込みそそくさと萌音のもとから退散した。


 大人しい性格の萌音は、何をする事もなく席に座っている。


「あんたさー、男子をたぶらかしていい気になってんじゃないわよ」

 クスクスと笑いながら意地悪な事を言い出す香苗。


「あたしは何もそんな事……」


(香苗の奴!)


 虐めが許せない沙樹子は席を立ち上がり、萌音のもとへ速歩きで行った。


「香苗!」


「ハ? 何よ、あんた。あんた誰だっけ~。名前も知んないわー」


 沙樹子の名前を香苗は知っている。だのに友人が居ない沙樹子を馬鹿にして、そんな風に言ったのだ。


「ざけんじゃないわよっ! 人にいちゃもんつけてあんた何やってんの?!」

 沙樹子は全く(ひる)まない。


「ハー? この女、萌音が男子に毎日、色目使ってるのは事実じゃん! 気色悪い!」


 沙樹子は、絶対に許さない。


 萌音は椅子に座ったまま、オドオドとしている。


 沙樹子が鬼の形相で香苗を睨み付けていると、香苗が言い放った。


「ハハ―ン。あんた百合ね? 女のくせに、女が好きなんでしょー?! 萌音に惚れてんじゃないのー?」

 小馬鹿にするように、香苗と手下達の笑い声がケラケラ教室中に響く。

 

 黄色いおひさまの光が窓から一杯に降り注ぐ教室で、沙樹子は眩暈を起こした。怒りと、悲しい気持ち。


 クラスメートは皆香苗が怖いので、ビクビクしつつ、この言い合いをヒソヒソ声で隣にいる者と耳打ちしつつ見物している。


「ええ、そうよ! 何か問題でもある? あたいは萌音ちゃんの事を愛しているわ!」


 一瞬静まり返る教室。

 おひさまだけが輝きをコロコロと投げかけ、光の音だけがする。


 ギュッと一回目を閉じたあと、勇気を出して沙樹子は萌音の顔を見た。

 萌音は、香苗にいびられている沙樹子を心配そうに見つめた。


 席を立ち上がり、萌音は言った。


「あたしも、あたしもずっとさっちゃんの事が好きだった!」

 先ほどの弱気な態度は消え、いつもの萌音よりも清しいほどに力強い。


 皆びっくりしている。同性愛者じゃないかと罵った香苗自身もポカンと口を開けている。

 でも香苗の攻撃は再び始まった。


「気持ち悪い!」


 香苗はそう言った。

 沙樹子は、そんな言葉に負けずに、守るように萌音の手を握った。


 ここで登場したのは男子達だ。


「おい、香苗。今まで黙ってたけどあんまりだぞ。俺達は萌音ちゃんとさっちゃんを祝福したいぜ?」


 香苗達グループは悔しそうにしながらもすごすごと消えて行った。



 ――沙樹子には友が出来た。それは恋人でもある、萌音だ。


 沙樹子、萌音! 仲良くねっ。




 しあわせの素敵なかたち♡

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