第11話「イボワール達の奇跡」
お久しぶりです。
年内最後の更新になるかな、と思います。
来年も更新頻度は少ないままになってしまうとは思うのですが、何卒よろしくお願い致します。
「………っあぁぁぁ、、、。」
「あーもうアンタ、ほんっっっと下手ね。成功した試し無いじゃない。」
「あっははは………、恥ずかしながら……。」
僕の名前はコートジボワール。
そしてこっちの口うるさ……、元気なボーイッシュ女子は、ブルキナファソだ。
今日も今日とて僕は、彼女に怒られております……。
「こんなの簡単じゃない。ほら、アタシに変わりなさい。」
「あぁ……、」
弾き飛ばされた。
力が強い。
「………ほら、こんなの特に何もせず出来るわ。アンタ、この程度のやつにいちいち時間使ってたら日が暮れちゃうわよ。マグリブもびっくりのスピードね。」
「ん〜……そうはいってもなぁ……。苦手なもんは苦手だからなぁ……。」
「はぁ、まあぶっちゃけアンタもアタシもここまで覚える必要無いんだけどね。血も引いてないし。」
「でも、絶やしちゃマズイじゃん。ただでさえ人が居ないのにさ。」
「どうせ使いどこなんて無いんだから。なんとなくでいいのよ、適当で。それに、そこそこなアタシよりも、子孫な癖にアンタより酷いやつだっているわ。ね?」
ブルキナは指を差した。
そこに座っていたのは、ベナンだった。
「アンタまたそんなペンダントばっか眺めて。楽しいの?」
「ブルキナたちが家系の話なんかするからでしょ。こっちだって色々考えてんの。」
「ちょっとは練習したらどうなの。」
「いい。どうせ下手だし。」
「アンタねぇ……。」
そこで僕は、ある話を思い出した。
「………そういえばさ、言われたんだよね、『期待してる』って言ってたって。」
「………まさか、アイツが?」
「そう。そのまさかのアイツ。」
「直接聞いたの?」
「いや、噂。」
「じゃあ嘘よ。そんなことあの人が言うはずないわ。」
「いや、確かに聞いたんだって。」
「又聞きの又聞きは誇張も改変もてんこ盛りよ。信憑性がないわ。まぁ、伝わってきた人にもよるけど。――けど、仮にもしそれが本当だとしたら………。」
「僕らは頑張らなきゃいけない。……ね、ベナン?」
「………それは、そうだけどさ。」
「………ま、頑張んなさい。どうしても無理なら揃って農家にでもなれば良いし。」
「作るものも売れる見込みもないんだよなぁ、生憎。」
改めて、斧を手に取る。
木こりにでもなろうかな。
どっちにしろ、変わりゃしないんだし。
「パーッと変われば良いのにな、世界。」
その時だった。
地鳴りのような音がしたと思ったら。
それはいきなり現れた。
車 - トロッコだった。
「何よ、コイツら!?」
ブルキナが叫んでいる。
持っていた斧が巻き上げられた。
その他、近くのもの全て、トロッコに吸い込まれるように、盗まれていく。
どうしよう。
そうだ。
今しかないと思った。
実践だ。
「風よ、塊となり、敵を撃て、【風の球】!!」
手に取った杖から、魔力が湧き、放たれた感覚があった。
その風の球は、トロッコの車体に命中し、少しばかりトロッコを蹌踉めかせることができた。
初めて、成功した。
そして、前方からブルキナの声も聞こえてきた。
「鉄よ、彼の敵を射抜く痛みの束となれ、【鉄の小矢】!!」
彼女の放った鉄の小さな弾丸は、トロッコの車体や、中に乗っていた野郎共にもかなり命中した。
「うぉぉっ!?」
「んだ、コイツらァ!?」
「嫌だぁ、も〜〜!!!」
喚く乗務員たち。
このまま技を続ければ倒せるかもしれない……!
そうだ、あの技を使ってみよう。
今まで出来たことないけど。
「風よ、面となり戦ぎ、敵を吹き飛ばせ、【青風の面】!!」
杖の周りに風が巻きついて、太く広くなる感覚を憶えた。
あとはこのまま、前に押し出すことが出来れば………、あ、無理だ。
失敗する。
そう思った瞬間に、力を抜いてしまったので、杖からは、へにょへにょな微風しか飛んでいかなかった。
勿論、トロッコにはなんの影響もない。
僕は倒れ込んだ。
魔力が無くなったのだ。
しょぼい……。
僕はなんて弱い奴なんだ。
ブルキナは頑張っている。
「炎よ、彼の敵を撃つ球となれ、【火の球】!!、【火の球】!!」
鉄は力の消耗が激しいからなのか、炎に技を切り替えて乱れ撃ちしている。
でもそんなに滅多矢鱈に撃ってたら……。
「炎よ……、彼の敵を焼き尽くす黄金となれ、【黄金の……、炎………。」
言わんこっちゃない。
魔力切れだ。
ブルキナは地面に座り込んでしまった。
まずい、このままじゃ、全て盗まれていってしまう。
食い止めなきゃ……、僕が、倒さなきゃ……!
「【陽封の熱風】。」
「………へ、?」
辺り一面を、炎のように熱い乾いた熱風が襲う。
今までの車輪のせいなんか目じゃない勢いで、周囲の砂が巻き上げられ、視界は赤茶色に霞んでいく。
トロッコはその風に薙ぎ倒され、動きを止めたようだった。
他の場所でも奪ってきたのであろう物品が、車内からガラガラと溢れ出して来る音が聞こえる。
「ベ……ベナン……?お前……、無詠唱で……!?、そんなに強かったのか……?」
「あー……いや、紛れだよ。紛れ。」
「そんな筈は……、」
「あちゃ〜、王笏折れちゃった……。使わなきゃ良かったかなぁ。」
「どうなってんだ……。」
ブルキナなんて呆然としちゃってるよ。
あ、そうだ、敵……。
「――逃げられたかぁ。」
零れる音がした筈の物品ごと、奇麗さっぱり消えていて、そこには横転したトロッコだけが遺されていた。
「くっ………そぉ〜〜〜!!!」
「色々、盗ってかれちゃったね。」
「まぁ……、しょうがないか。」
「こりゃ、農家落ちかな……。」
「あんな話するからぁ。」
笑い事じゃないかもだけど、今はただ笑うしかない。
「ね、ねぇ……ベナン、アンタ……。」
ブルキナが口を開く。
「アンタ……あの魔法、火属性と風属性、両方を合わせた“複合魔法”よね……?そんなの使える人なんて……。」
「え、そうなの?よく分かんないけど。」
「………イボワール!!!」
「はい!!!」
「練習するわよ!!!」
「喜んで!!!」
「ベナン、アンタもね!!!」
「えぇ〜〜………、」
「えぇ〜、じゃない!! いつかさっきのアイツらみたいなクソ野郎共を倒せるように、今から特訓するんだから!!!」
「立派な『魔法使い』になってやるんだから!!」
そう、僕たちは魔法使いだ。
一昔前からの、生き残り。
特に理由はないけれど、この血を、流派を、魔力を、絶やさないように、生きていきたい。
「……あ、あれ、?………ペンダントが……ちぎれてる……??………ど、どうしよう………?!??」
いきなり怯えだしたベナンくん。
さながら禁断症状。
ちなみに「小矢」って書いて「いおさ」って読むんですよ。
難読漢字だ……。




