第2話 命の値段
創作大賞2025用の投稿作品。
応募条件1万5000文字以上の執筆をするか否かは、漫画雑誌の不人気作品を打ち切るように、株で損切りするように、不評で儲けの少ない商品が店頭から姿を消すように、作品に対する評価と結果次第で判断します。
数日前にルミナシティ第8地区を異能所持者の犯罪組織、ホープレスが襲った残骸が、あちらこちらに散らばっていた。
鉋で削った木のようにめくりあがる、コンクリート道路。
爆破されて歩道に散乱した、粉微塵のガラス片。
延焼したのかアーケードは、焼け焦げた店ばかりだ。
所々に血痕が残っている崩壊した街で、まるで散歩でもするような足取りで1人、ミラーガイは瓦礫の上を歩いている。
ルミナシティ第8地区でラージェスティスに守られたのは、多国籍企業グリーロスやその他大企業。
彼らの傘下にある企業ビルや関連組織……それらに関係しない全ては、等しく無価値であった。
市民感情は金満の正義に憎悪を燃やし、怒りの矛先を求める市民はどちらの組織にも関係のない、異能所持者にまで噛みついた。
「おい、そこの異能所持者! テメーらのせいで……俺たちの平和は乱されたんだ!」
「せっかく異能を授かった、特別な存在だというのに。何故自らを犠牲にせず、善良な私たちを見捨てる!」
壊れた街を彷徨う群衆の誰かが、腹の底から声を張り上げてミラーガイに叫ぶ。
憤りを異能所持者という、〝わかりやすい敵〟にぶつけたいのだろう。
だが、その〝善良な私たち〟という言葉はミラーガイを失笑させた。
「……ずいぶん元気なようで。まだまだピンピンしてんじゃねぇか。〝善良な市民〟の皆さん」
口許を歪めた男は肩を竦め、すぐさま破壊に巻き込まれなかった超高層ビル群を指差す。
「文句はあそこに言えよ。この街の全てを握る天上人に。俺が爆破に加担したわけでもないし……正直、八つ当たられて、いい迷惑なんだわ」
軽く受け流し、背を向けて進むも、人々の怒りは収まらず
「異能者なんて無価値だ、疫病神め! 貴様らのせいで世界がおかしくなったんだ! 切除すべきガン細胞だ!」
段々と狂気を帯びていく罵声に、ミラーガイは振り返った。
そうしてから、暴言を浴びせた人間に近づいていく。
交戦になると考えたのだろうか、男たちは身構えた。
しかし彼は次々と市民の首筋を品定めするように眺め……その後に腕を交差させてバツ印を形作る。
「何がしたい、気持ち悪いな」
不気味な所作に思わず呟いた市民に
「おまえらには、自分の首についてるモンが見えないのか? 1人1人、値札のタグがついてるんだよ。そして数字の多寡を、おまえらが頭を垂れてる連中に読み取られてんのさ。権力者と、あいつらのペットにな」
ミラーガイの冷淡な台詞に大柄な男が拳を振り上げる。
次の瞬間、拳骨が空を切り―――倒れたのは大柄の男だった。
見るからに強そうな男があっけなく返り討ちにあい、異能所持者の彼を、群衆は恐怖に顔を歪めた。
「結局、ルミナシティ第8番地区のおまえらも9から12番地区の下層を……そしてダンプシティの連中を蔑む側だったわけだ。権力者には逆らう気概も、根性も、知能もなく、下を見て満足して……それと地続きの未来が今のこれ。望み通りの未来を迎えられて。その中で死ねて本望だろ?」
吐き捨てるように言うと
「私たちを見殺しにするなんて、この世は……異能所持者共は狂っている!」
「見殺しにしてるのは、俺じゃなくて〝都市の機能〟だよ。そしてこのシステムを選んだのはおまえらだ。自分が屠殺される番になったからって、被害者ぶるなよ。おまえらの肯定した、この掃き溜めの中で朽ち果てろ」
去り際に言い残すと市民は無力さに打ちひしがれ、固く閉じられた瞳から涙をこぼす。
「私たちは下層の連中とは違う……価値ある人間なんだ! だから……」
「おまえらが見下した人間も、そう思ってたんじゃないか? だが切り捨てられた。対岸の火事を愉しんで……そして無様に燃え広がっただけだがな」
ミラーガイは再び堆く積まれた瓦礫の街を歩み出す。
すると視界に小さな影が入った。
煤にまみれた服を着た、ボロボロの靴を履いた、あどけなさの残る金髪の少年。
どこか見覚えのある顔だった。
だが少年に関する記憶はモヤがかかったように、まったく思い出せない。
(ボケるにゃ、まだ早いんだがな)
そうして少年を通り過ぎようとした瞬間、彼目掛けて駆け寄ってきた。
「パパが下敷きになってるんだ! お願い、助けて! お兄さん!」
その呼びかけにミラーガイは冷徹に眼を細め、無言で立ち止まる。
「俺は慈善家じゃあねぇんだがな……」
赤の他人ならば、助ける道理もないだろう。
足早に去ろうとすると、ふと右脚に違和感を覚えた。
……少年が脚に抱きついて離そうとしないのだ。
邪魔だ!
そう突き放そうとしたが少年と視線が合い、瞳の奥に目を凝らすと過去の自分が重なった
困って救いを求めて、しかし何度も裏切られた……
今は軽蔑してきた大人のように、この少年を見捨てようとしている。
じっとしていると幼少期に遭った不快な大人が、今の自分をどこかから嘲笑している気がした。
(……しゃあねぇな)
仕方ないと言いたげに頭を乱雑に掻き、ミラーガイは了承した。
日用品や雑貨と大きな瓦礫に挟まった大人の脚は、まだ息があるようでプールで水を蹴るように、必死に藻掻いている。
しかし1人では骨が折れそうだ、どうにかする方法はあるか……少しの間、頭を働かせ
「他の大人を呼んでこい」
と、少年に命じる。
自分が呼びかけるよりも、子供が情に訴えた方が効果があるだろう。
ほどなくして集まった住民とともに倒壊した建物の瓦礫を持ち上げると、下敷きになっていた男の顔が目に映る。
その顔に驚愕した。
忘れもしない―――ダンプシティの学校で暴行の対象になっていた少年だった。
誰にも助けられず、ミラーガイだけが普通に接した彼だ。
街で出逢えばわからなかったかもしれないが親の生き写しの存在が、曖昧な記憶を裏付けた。
呼吸は確認できたが意識がハッキリしないようで、目を閉じたままだ。
担架に乗せた男たちはすぐにある場所に彼を運んでいき、それをミラーガイも追った。
「……生きてたんだな」
微笑んだミラーガイは少年と一緒に励ましの言葉をかけ、彼の無事を祈るばかりだった。
ルミナシティの医療制度は自由診療。
ようは診察にも大枚を積まなければ、人間は簡単に見殺しにされる。
〝人の命はいくらでも代わりがきく〟
下流、中流という大多数を占める層は単なる歯車であり、上層階級は部品の感情や機微に興味を持たない。
だが被災地の隅に、市民の手で作られた簡素な野外医療施設があった。
善意とボランティアだけで成り立つ場所。
金持ちの慈善事業というよりも、無力な市民が互いを繋ぎ止める最後の綱。
普段は互いに足を引っ張りあい、自らの利益を最大化していても……ここでの絆に嘘や偽りはないように思えた。
ミラーガイは無言のまま子供と共に父親を運ぶ。
医師は方々から呼ばれ、こちらにまで手が回りそうになかった。
簡易ベッドに寝かせた後、代わりに看護師を呼び止めた。
医療従事者の指示に従って簡単な手当を施すと、幸いにも傷は大したことはなかったのだろう。
ミラーガイの旧友は意識を取り戻し
「あ、君は……? もしかして……」
掠れた声でかつての名を喋り出し、ミラーガイは少し口の端を吊り上げた。
「……悪運は強いらしいな、よかったよ」
暴力と無関心に晒されながらも、交わった2人の記憶。
荒廃した街の片隅で灯る再会の火は、両者の間にほのあたたかい温度を残したのだった。
アンチヒーロー・ミラーガイのドキドキ♡ラブラブ♡診断 女性版
今回は恋愛に燃えるホブゴブリン、オークのような逞しい女性たちが、素敵な殿方を捕まえられるように、恋愛について語りたいと思います。
では今回もいくつか質問してみますので、嘘は言わずに答えてください。
では始めィッ!!!
質問1 あなたは愛を信じますか?
1.はい 2.いいえ
質問2 あなたが男性の特徴で重要視するのは?
1.スペック 2.優しさ
質問3 癒し系は好き?
1.はい 2.いいえ
質問4 運命やソウルメイトを信じる?
1.はい 2.いいえ
質問5 ぶっちゃけ金でしか異性を見ていませんか?
1.はい 2.いいえ
質問1
・はい
馬鹿がっ……愛なんてこの世にねぇんだよ!
あるのは利害……それだけっ!
誰もおまえなんて選ばない……藻掻け……足掻け……自分で立ち上がる努力をしろっ……愚図めがっ……!
・いいえ
愛を信じないを選んだあなたは、とても正直者です。
なので特別に金の斧と銀の斧を両方差し上げます。
きたるべき終末日に向けて、STRのステータスを鍛え、二刀流装備を可能にし、魔王討伐の準備をしておいてください。
愛など必要ない、大抵の問題は暴力で解決する。
あなたのパートナーも実力行使で、すぐ手に入ります。
眼前に立ち塞がる敵を滅ぼし、欲しいものを手中に収める。
それが〝物語の主人公〟なのだから。
質問2
・スペック
女性が惹かれる時速40kmで走れる身体的スペックを持ち、手話で意思疎通ができる知能。
さらには温和な性格で子育てするイクメン。
いざとなれば腕力で問題を解決できる有望株、ゴリラがおすすめ。
B型の人は互いに輸血もできちゃうし、なんかロマンチック♡
・優しさ
相手方の能力や年収にたいして興味がなければ、わざわざ相談せずともオスを選び放題なはず。
冷やかしのつもりか、わざわざ人の手を煩わせるな!
おまえみたいなヤツがいるから地球は温暖化し、海にゴミが廃棄され、砂漠が増え、無数の生物が絶滅していくんだ!
質問3
・はい
人と違って人を裏切らず、いざとなれば厄から護ってくれるLv99の可愛いひな人形、菅原道真くんがおすすめ。
根気強くスキルツリーを伸ばすと最強技の1つである〝怨嗟の雷〟を習得し、なんと政敵を滅ぼしてくれます。
熾烈な性格に思えるけど、実は梅の花や牛など自然や生物を尊び、詩に散文で女の子をトキメかせちゃう、めちゃくちゃ素敵なハイスペだょ☆
ちなみに苗字が藤原だと、公家の家系でなくても殺されるよ!
・いいえ
癒しを決して求めず、野性味溢れる男性が好きなあなたには、パワフルなヒクイドリがおすすめ。
しかしキック力に耐えられるだけの膂力を有していなければ付き合うのはおろか、近づくことすらままなりません。
つまり富裕層と付き合いたいなら、相応に自らのスペックを高めないといけないのと、まったく一緒です。
ヒクイドリにとって〝おもしれぇ女〟になれるよう頑張ってください。
女子たるもの、1度は宇宙最強を目指すもの……では死合開始めぃッ!!!
質問4
・はい
幸運になれる壺あるんだけど、今なら通常価格3000万の壺を特別に、1500円で販売中だから買わない?
・いいえ
運命を信じないあなたの今後を予言します!
……ムムム、ムムム……朝食にごはんかパンを食べていますね?
これがミラーガイマジックです。
信じる気になったら、幸運の壺どうです?
質問5
・はい
お金大好きな、そんなあなたには四大精霊の土を司る精霊ノームを紹介します。
鉱脈に関わる精霊で彼と一緒になれば、あなたを大金持ちにしてくれるでしょう。
え、そんな精霊は実際にいない?
大丈夫。
あなたが資本家を魅了したり、あなた自身が成功を収めて金持ちになる確率よりは、ノームの出現率の方が高いのでまだ希望はあります。
・いいえ
だったら貧乏でスペック低い俺と今まで付き合ってくれる人が、1人くらいいてもよかったのに、なんで俺には恋人がいなかったの?
以上ミラーガイのドキドキ♡ラブラブ♡診断でした。
結局、生まれる時も死ぬ時も人は孤独。
他人で孤独を埋め合わせる前に、自分で自分を労らないといけない。
人生には恋愛よりも大事なものがある―――それはペット。
どうせ森林を徘徊すれば魔物として討伐対象になり、懸賞金がかけられるような、醜悪なクリーチャーのあなたたちを無償で愛してくれるのはペットしかいません。
無機物や自分より小さな動物に愛を与えられない人間が、他者を愛するなんてのは不可能なわけだから。