表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第1話 掃き溜めの街ダンプシティ

創作大賞2025用の投稿作品。

応募条件1万5000文字以上の執筆をするか否かは、漫画雑誌の不人気作品を打ち切るように、株で損切りするように、不評で儲けの少ない商品が店頭から姿を消すように、作品に対する評価と結果次第で判断します。

地図の上ではルミナシティ13番地区と呼ばれる街は、通称がより広く世界に認知されていた。

―――ダンプシティ。

ゴミの投棄場という単語を冠した街に相応しく、ここでは物のみならず、動物や人といった生物までもが、文字通り捨てられていく。

農業、漁業、畜産、工業、製造業などを担う重要地区。

いわばルミナシティの喉元を潤す水であり、胃袋を満たす食糧であり、さらには不用品を捨てる排泄器官でもある区域といえば聞こえはいいが、居住者には地獄でしかない。


ルミナシティに電力を供給する高圧ケーブルがあちこちに張り巡らされ、さらには空には工業の排煙が常に漂い、まともに青空を拝むという、ささやかな願いすら叶わない。

酸性の霧が子供の肺に焼けつくような痛みを残し、呼吸器の弱い人間は咳が止まらずに死亡する。

牧場の家畜に腕や脚が元々ない奇形が生まれるのも、街の人間はさほど関心を寄せなかった。

時折降り注ぐ酸性雨はただでさえ少ない大地の栄養を奪い尽くし、大河に住む魚をことごとく死滅させた。

道端には15歳になって学歴や生きるための資金を餌に、金持ちの利益の徴兵に連れていかれた者の末路が、無残に転がっている。

戦場から帰還した貧乏人は肉体の欠損をするか、はたまたPTSDの発症で路傍に捨てられる。

掃き溜めの街で地を這う彼らに、誰も手など貸さなかった。

ルミナシティの兵として前線で戦った勇敢な彼らは、生きた粗大ゴミなのか。

葉から地面に落ち、あとは鳥に喰われるのを待つだけの芋虫か。

或いは壊れて使えなくなった道具か。

どの表現も、おそらくは正しかった。

だって人として彼らを扱う者は、ほとんどいなかったから。

しかし絶望を誤魔化す娯楽……皮膚を変形させる粗悪なドラッグは子供でも買え、性病への対策がなされていない違法風俗店がそこかしこに乱立している。


住人たちは市民ではなく、機能として存在している。

足りなくなれば、まるで動かない歯車を取り替えるように代替品を連れてくるだけ。

数人が圧政に反旗を翻しても、何も変わりはしないのだ。

この街に住む限り希望に至る道などなく、生きている限り奈落へと舗装された階段を、ひたすらに進むだけである。

個人が自らを律して、ゆるやかに地獄へ下ろうと、病弱な肉体にたまたま生まれたり、ドラッグに手を染めたり、セックスに溺れたり……たった1つ過ちを犯したり、階段を1段でも踏み外せば、すぐ底なしの闇に呑まれていく。

だがそれを理解していても、生きていても明るい兆しは見えない以上―――遅かれ早かれ破滅する宿命なのだ。


粗末なバラック群が雑然と立ち並ぶ街を駆け抜けると、風に乗って薬物の臭気と、塗装の剥がれた古びた工場の鉄の匂いが鼻腔を刺激した。

街の片隅では灰色の髪をした少年が、配給の列に並ぶ。

多国籍企業グリーロスが2週間に1回の頻度で定期的に与える製品―――なにやら褐色の粉末が入ったビンを手にして、食べ盛りで毎日空腹と戦う彼は、満足げに笑みを浮かべた。

しかし背後で大人は浮かない表情で呟き


「……ボウズ、それは人間の食う代物じゃないぞ。家畜の飼料みたいなモン……いや、家畜だってもっとマシなモノを口にするさ。品質やら衛生、副作用なんか誰も調べちゃいない。俺たちゃ、実験モルモット未満の扱いさ」


いったいこれにどのような秘密があるのかと、瞳を細めてビンを睨めつける。

しかしそんなことをしても、腹は膨れない。

少年は言葉の意味を理解できなかったが、このビンについて考える度に、胸の奥がずしりと重くなった。




学校にて




学校もまた、都市の掃き溜めにふさわしい無秩序だった。

アフリカ系、中東系、アジア系、ヨーロッパ系―──様々な国から流れてきた移民の二世、三世、帰還者に難民、そして労働者階級の子供が、狭い教室に押し込まれていた。

言葉も文化もばらばらで、教師の言葉は半数にすら届かない。

この現実に対し、金満の右翼は自分さえよければよく、移民や難民、外国人労働者が文句を言わず働いてくれる……と、妄想を信じ込み、現実逃避をしている。

左翼の富裕層は移民や難民の人権が云々とのたまうも、彼らは移民がいない金のかかる私立高校に子息子女を通わせる。

ようは許容はするが自分の子は関わらせたくはないようで、どこか矛盾している。

どちらもその地獄を経験した人間にとっては、軽蔑の対象だ。


この有り様では、授業がまともに成立する日は稀だ。

教師も無理にまとめようとはしなかった。

この場所では暴力は言語よりも価値があり、どこの世界にもいる体格の大きい先生に好かれる生徒が、当然のように暴君として君臨していた。

授業が終わり、大人が立ち去ると同時。

大柄な少年が取り巻きを引き連れ、痩せ細った少年……しかし授業態度は真面目な、ごく普通な生徒に迫った。

研究結果もあるようだが、どの国でも〝馬鹿が善良な人間にいじめをやりたがる〟のは真理だった。

おそるおそる何か用かと囲まれた彼が告げると、突然に大柄な子供が暴れ、彼の服を引き裂いた。

そして床に叩きつけた机や椅子で、激しく彼を殴りつける。

痛ましい悲鳴と呻きが教室中に響き渡る。

誰も止めようとはせず灰髪の少年も、ただ眺めるしかない。

灰髪の少年は彼が1人きりになったのを見計らって


「……これ」


痣だらけの身体をひきずり、口許から血を流す彼にハンカチを手渡した。

暴行された少年は戸惑って、しばらく悩むも好意を受け入れ


「一緒にいたら、君もやられるから……」


と、離れるよう促す。

流石に看過できないと考え、灰髪の少年は身近な大人である教師に頼ろうと、職員室で担任に


「先生、いつも……くんが暴行の被害にあってます。どうにかしてくれませんか?」


と勇気を振り絞って発言するも、返ってきたのは嘲笑だった。


「ただの馴れ合いだよ。仲がいい証拠じゃないか」

「なら先生は自分の家族や友達を、いつも殴ってるんですか? 俺が先生を殴るのもいいんですか? それが仲がいいってことなんですよね?」


少年の問いにも教師は


「ただの屁理屈だ」


そう切り捨て、担任はテスト用紙に採点をし始める。


(ああ、駄目だ、こいつはまるで役に立たないな)


職員室を退室し、心の中で吐き捨てる。

しかし不思議と動揺はなく、まぁ、教師なんてこんなものか……程度の感想しかでてこなかった。

それよりもどう対策を講じるか、頭はいっぱいだった。

教師は使えないが、他の人間ならば……

自宅にネット環境のない灰髪の少年は、表通りのインターネット利用施設に赴く。

〝人よりも価値のある機器〟を守るべく、配置された警備員に会釈をし


『学校での暴行と傷害への対策』


を求めたのだが……画面越しの他人事に親身になれる人間などいなかった。


「被害者ぶるな」

「弱いヤツが死ぬ、それが自然の摂理」

「ゴミはさっさと殺処分してもらえよ」


罵詈雑言と冷笑が返ってくるだけで、有益な情報は得られない。

誰も助けてはくれない。

それどころか


「よくみたら〝掃き溜め〟からの投稿かよ」

「とっとと消えろ、俺たちの富に群がる不快害虫どもが!」


そうして汚言が投げかけられ、彼の目論見は水泡に帰した。

翌朝。

灰髪の少年が教員に告げた影響か、クラスの集団暴行はいっそう激しさを増した。

授業中だろうとお構いなしに殴る、蹴るの暴力……だがクラスメイトはノートを眺めたり、仲のいい同級生とトランプで遊んだり……まるで傷を負う子供は存在しないように扱われていた。

我慢の限界を迎えた灰髪の少年は、見かねて主犯の子供に体当たりをかまして突き飛ばす。

同級生の学習道具は散らばるも、乱闘を止める者はいなかった。

―――この掃き溜めでは混沌と暴力だけが、生を実感させる唯一の手段だ。

突然の奇襲で一時は優勢になったが徐々に数に押されていき……授業が終わる頃には傷だらけの少年2人が、床に横たわっていた。

初めて暴行を受けた灰髪の少年は手を差し伸べる者もおらず、ましてや同情する者もいないと。

常に傍観者の立場にいた自分では言い知れぬ孤独に打ちひしがれ、頬を一筋の雫が伝った。

そして灰髪の少年は1つの確信に至る。


〝世間の大半は他人を平気で見捨てるが、自分が不利益を被った時だけ被害者ぶる〟


と。

この日を境に、彼の心には冷たい鏡が張られることになった。


暴行の対象が1人から2人に増え、灰髪の少年は自らを守るため決断した。

ネットでもしもの事態を考え、情報収集を欠かさなかった。

時折降る酸性雨を空の洗剤容器に集め、割れたガラス片を布に忍ばせる。

―――ハンカチは授業中に教科書と一緒に並べ、洗剤容器は開けたカバンから常に取り出せるよう、警戒を怠らなかった。

暴力に暴力で応える。

それが唯一、自分を守る手段だと知った。

教師が去った瞬間、試合開始のゴングがどこからともなく鳴ったのを彼は察した。

理解できない言葉をまくしたてるリーダー格の男が胸ぐらを掴むと、すぐさまハンカチを手にし、躊躇いもせず突き刺す。

薄汚れたハンカチは瞬く間に紅が滲み、あっけなくその悪餓鬼は崩れ落ちた。

驚愕した取り巻きは咆哮を上げて殴りかかり、拳を振り上げる。

―――刹那スプレーのレバーを引くと、酸性雨が噴射して取り巻きは目を抑える。

それは我が身を守る銃にも等しかった。

周囲は凍りつき、騒ぎを聞きつけた教師は、彼を問題児として叱責する。

すると少年は叫び


「じゃあ、どうすればよかったんだよ! お前らは何もしなかっただろうが!!!」


手痛い反撃を喰らって、人の痛みを理解したのだろうか。

灰髪の少年に手を出す者はいなくなり、庇った彼も誰からも攻撃をされない環境が形成された。

ただクラスメイトが彼を見る目は変わった。

怯え、恐れ、今までは普通に話していた子も、距離を取るようになった。

代わりに彼は庇った少年や立場の弱かった子に囲まれ、英雄のように尊敬の念を集めた。

集団暴行からは解放され、クラスには平穏が生まれた。

こうして少年は理解した。

正義も、言葉も、何の価値もない。

正しいのは〝理屈ではなく力〟だと。

自己防衛という名の暴力を、悪と蔑む人間がいようと、自分を掃き溜めで生かした。

〝問題児〟が転校を余儀なくされた後、次の学校にたらいまわしになってからも、彼は武器を隠し持った。

ボードに名を書いて明るく挨拶をしつつも、生徒を疑いの目で舐め回すように眺め、平然とした顔で笑っていた。




ルミナシティ4番地区。

入場に制限のある1〜3番地区ほどではないが、中上流の住む地域の住宅街の一軒家。

質素な外見に似合わず、中は要塞そのものだ。

地上は4番地区を守る民間のヒーローが徘徊、空は24時間ドローンが不審者を監視。

門扉には顔認証や指紋スキャンでの防犯。

窓や車庫は防弾シャッターで物理的な進入を阻む。

家の中は一見して普通だが、遊び心のある細工が随所に施され、まさに迷宮の様相を呈する邸宅だ。

―――そしてある階段の先には1つの古びた三面鏡と、彼のみが知る〝宝物庫〟があった。

数多の防犯システムをくぐりぬけた場所には、特注の大型金庫に様々な希少品が眠っている。


常に価値を保証される金塊。

絶版のレアカードにプレミア価格のエラー品の玩具。

世界で数枚しか製造されていない紙幣や硬貨。

さらには株式や優待券といったものまで、厳密に保管されていた。

もちろんリスクの分担を考慮して、各国の紙幣を一定数保有。

日常生活に便利な電子マネーにも、ある程度の利息が見込める金額は入れてある。

きまぐれなヒーロー活動や自らで価値を見定めて大枚はたいたものに、青年は陶酔した表情を浮かべる。

ここにはミラーガイが信じる価値が、静かに積み上げられていた。

鏡に映る自分を見つめ、かつての掃き溜めには戻りまいと―──彼は鉄の誓いを立て、独りごちた。


「もう、あの頃には戻らない」


力で守るのは、正義でも他人でもない。

自分の欲求、財産、誇り──ただそれだけだった。

鏡に映る己の瞳は、自己防衛という生き方を学んだ後の少年時代のように、今も冷たく笑っていた。

・アンチヒーロー・ミラーガイの華麗なる日常(難易度HELL)


00:00〜24:00 


睡眠、起床、食事、他人の鏡に現れて変顔&覗き&ダンス。

何をしてもいい自由時間だが、何もしないというのが実は1番苦しい。

初心者は難易度を少し下げて、起きて寝てを繰り返し


夢占いの診断結果:現人神


この夢を見たということはあなたは神の子であり、主の意志を伝えるべく受肉した存在という証明。

あなたは死後に海神オケアノスの神聖なる海に囲まれた温暖で芳しい島、西の楽園エリュシオンに辿り着き、心穏やかに過ごせるでしょう。


の結果がでるまで、夢ガチャをし続けるのを目標にしてみるといいぞ!




要望があったので、日常生活難易度Lv99のものを掲載したぞ。

良い子も悪い子もこの俺、ミラーガイの生活を真似して健康的で文化的な生活をしてみよう!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ