第一話 現実異世界
今回が初めての投稿となります。
粗い部分があるところは報告をしていただけると嬉しく思います。
「小説家になろう」でとても人気な異世界転生ですが、
実は私自身はあまり読んでいるジャンルではありません。
この小説は異世界転生モノですが、普通の異世界転生とは全く違います。
普通の異世界転生は主人公が知識やら魔法やらを使って無双するのが爽快で面白いのだと思いますが、この作品では異世界転生モノの当然をそのまま謎にしたサスペンスが強めの物語です。
ちょっと変わった小説が書きたいなと思いこの作品を書かせていただきました。
殺された。
鹿狩勇人は、何者かによって殺害された。
腹部は赤く生温い。意識はどんどん遠のいて行く。
犯人の後ろ姿を最後に、俺の意識は途絶えた。
目が覚めるとそこは広がる野原。
あそこにはRPGで出てくるような村がある。
天国ってこんな素晴らしい場所なんだ、と俺は思う。
しかし、俺は天国に行けるような善人ではなかったはずだ。
ならばここは天国かと思わせてから裏切るタイプの地獄、もしくはどちらでもないなにかなのだろう。
地獄でも天国でもないとすれば、ここは一体どこか。
「―――異世界…?」
自分でもなんと馬鹿なことを言ったと思ってしまった。
だが、やはり勇人はこの光景が異世界にしか見えなかった。
勇人は、巷で話題の転生モノが頭から離れなかったからだ。
勇人自身が転生モノに興味があったわけではない。現実味がなさすぎて逆に毛嫌いしていたほどだ。
しかし流行りのモノは避けようとしても目に入ってくるものだ。
澄んだ空気、心が落ち着く緑の野原、そしてぽつんと一つある村。
信じられないほど、転生モノに出てきた異世界と景色が一致している。
俺は前世に未練なんて一つもない。こんな俺は現実味のない異世界でもいいのではないかとも思う。
「とにかく動いてみないと何もわからないか…」
そう思い、重い腰を上げる。
最初に状況が一番理解しやすそうな村に動くことにした。
西洋な雰囲気だが、木も多く使われており和風と洋風が組み合わされたような不思議な建物が建てられているのが、遠く離れたところでもわかる。
村が目の前だというところまで近づいたときに、やっと村の住民らしき人が村にいるのが見えた。
村の門をくぐって中に入って、話を聞いてみることにした。
村の門はなにか異様な雰囲気を出していて、俺は少し怯んだ。ただの門だというのに。
自らのことを情けないと思いながら村への第一歩を踏み出した。
はずなのだが…?
急に俺の視界は歪み始める。
自分の意識が遠のいて行く感覚がある。
死んだときのことを思い出す。
俺は、いつの間にか倒れていた。
目が覚めるとそこはふかふかなベッド。
さっきのは夢だったのか、と思ったのだがよく考えてみるとこのベッドは俺のベッドではない。
俺は人のベッドに勝手に潜り込んで寝るような破廉恥な男ではないはずだ。
つまり、先程の夢は夢ではない。
れっきとした現実だ。いや、現実とは違うのかもしれないが。
扉から先程見た住民が出てきた。
「起きたか!少年!」
俺を助けてくれたのはこの男性だろう。
「君が俺を助けてくれたのだろう?深く感謝するよ。」
「いやいや、人として当然のことをしたまでさ。」
「僕の名前は風島楓。怪我がなくてよかったよ。」
「俺の名前は鹿狩勇人だ。」
爽やかそうな優しい青年だということがすぐにわかった。
「本当に怪我はないよね?見えないだけで実は記憶喪失だったり…?!」
そんなわけ無いだろう…と言おうとした。が、違和感がある。
本当に俺は記憶喪失じゃない?断言できない。わからない。
記憶喪失ならすぐ気づくだろうに…
「でも記憶喪失なら自分の名前覚えてないかー。」
俺の困惑に気づかずに楓は冗談を言ったつもりだった。
冗談ではなかった。
俺は思い出した。
あるべきはずの記憶がないことを…
名前は覚えている。身長も覚えている。体重も覚えている。殺されてここまで来たことも覚えている。
だが、俺は…前世の記憶が………無い。
なぜ殺された?俺はどういう人物だった?殺されたときの服装は?俺の友達は?俺の親は?俺は何をしていた?
気にしていなかった疑問が一気に湧き出てくる。
ここに来てからのことは全て覚えている。
…よく考えたら俺がここが天国への可能性を排除したのは何故だ?
しかし、俺は天国に行けるような善人ではなかったはずだ。
どういうことだ…?俺は前世で何かをやらかしたのか…?単なる殺人事件の被害者ではなかったのか?
異世界に来てすぐの頃は全て覚えていたはずだ。記憶喪失なんてなかったんだ。
でも、今はもうすっぽりと記憶はなくなってしまっている。
じゃあ記憶がなくなったのはいつだ?
それは恐らく、いや確実に村に入ったときだろう。
今目覚めたときからこの違和感が出てきた。
かなり考え事をしてしまった。
話し相手のことなんて忘れて。
「おーい!ずっと呼んでるのに怖い顔して反応がないな。まさか本当に記憶喪失!?勇人くーん!」
「どうやらそのまさからしい…」
俺は正直に答えた。嘘をつく理由も見当たらなかったからだ。
「ええええ!?どういうこと…?じゃあなんで君は名前を覚えているの?」
「わからない…本当に何もわからないんだ。」
俺は、前世何をした。何故殺されなければいけなかったんだ!?
冷静さなんて置いて、感情が爆発してしまう。
「楓、ありがとう。君のお陰で目的ができたよ。じゃあね!」
逃げるようにすごい勢いで楓の家を飛び出す。
「えぇ!?ちょっと待ってよぉ!」
俺は前世に未練たらたらだ。俺を殺した犯人を突き止めたい。前世のことを知りたい。
目的ができた。進む決意ができた。
転生モノは現実味がない。
だが、ここは小説じゃない。理屈があってそうなっているはずだ。
俺がこの世界に飛ばされたのは意味があるはずだ。
更に、記憶が抜けたのも意味があるはず。
ただの神様のいたずらではないのだろう。
この世界と俺は関係しているはずだ。
この世界の謎は俺の前世の謎とも繋がっているはずだ。
ならば…俺はこの世界の謎を突き止める。
小説じゃない、現実なんだから謎には意味がある。
ここは、小説の異世界じゃない。
ここは、現実異世界なんだ。
キャラクター解説
【鹿狩勇人】
年齢:22歳
出生地:不明
好物:まぐろ
色々と不明なところが多い彼。どこで生まれてどう育ったのか、自分自身にもわからない。
好物がまぐろということは覚えいてる。
ふと、異世界でもまぐろはあるのだろうかと考えただとか。