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237.お久しぶりの薬師ギルド

 

「それで毛がっ・・・! 毛が生える薬ができるのですかっ?!」


 私が二杯目のコーヒーを淹れる間もなく、レオさんが物凄い形相で私の目の前に・・・瞬間移動かな?

 思わず危ないからコーヒーを淹れる器具を横に避けておく。


「いえ、その・・・出来るかな・・・出来たりして・・・? というちょっとした軽口でした。変な期待をさせてしまったのならすみません」


 レオさんの真剣な眼差しに、先ほどの言動を反省する私だった。


 思わずと言った風にガクンと肩を落としたレオさん・・・明らかに気落ちしておられるようだ。

 あまりにも落ち込んだその姿に申し訳なく思ってしまう、が・・・。


「あのレオさん、何か毛のことでお悩みでも・・・?」


「いえ・・・ええ・・・はい。私が探し求めていた物に出会えたのかと、早とちりをしてしまいました・・・お恥ずかしい」


 しばらくして、レオさんがポツリポツリと話してくれたのだけど、それには切実な理由があった。



「・・・被毛が抜けて、肌がむき出しに・・・」


「そうなのです。私の集落では数年前からそのような症状で子猫から老猫までが悩まされておりましてな・・・今では集落のほとんどの者に、多かれ少なかれ症状が出ております。私もここに・・・」


 そう言ってレオさんが脇からお腹にかけて見せてくれたのだけど・・・なるほど、一部が丸く地肌が見えてしまっている。


「私はこの通り、ごく軽い方なのですが・・・」


 こうして近くでよく見せてもらわなければ気づかなかったけど、確かに何ヶ所か毛の抜け落ちている箇所があった。ちょうどお腹のたるんとしている場所だ。


「でもほとんどの毛が抜けてしまった者はちょっとした事でケガをしてしまうのが怖いのです。あとは毒虫にさされたり植物にかぶれたりすると危険ですので、布を巻いたりしております」


「確かに地肌が露出している状態が長く続くのは良くない状況だね。しかも子猫を始め、そこまで多くの者に・・・。それに年頃の女性などが自慢の被毛が抜け落ちたら、どれだけ辛いだろうか」


 話を聞いていたミケネーさんも厳しいお顔をしている。

 どうやら話を聞いていると猫妖精族ケット・シーは皆が己の毛並みをとても誇りに思っているみたいだし、普段からも毛繕いに余念も無く、とても大切にしているのは私にもわかる。

 その大切にしている自慢の被毛が抜け落ちてしまうなんて、確かにどれだけショックだったろう・・・。


 私の知る限りの話だけど、前の世界では脱毛の原因は色々とあると言われていた。

 まずは皮膚疾患・・・アトピーやカビ菌などによるものや、他にも自己免疫疾患やストレス性だったりと、原因は多岐にわたる。

 そのどれかに当てはまるのかは分からないし、もしかしたらそれ以外の原因かもしれないけれど・・・


「私は何か良薬が無いかを探しに人族の国にやって来たのです。あの工房にいたのは、すぐ近くに人族の薬を扱う薬師ギルドの支店があったので、情報を得るのに都合が良かった事もありまして」


「あぁ、確かに同じ通りにポーションや薬草を売っているギルドの小さい支部がありましたね・・・」


 ゾフィさんが王都の町並みを思い出すように頷いていた。


 どうやら王都の薬師ギルドは王都内に支店をいくつか持っているらしい。薬草などの買い付けはしないけれどポーションやお薬を販売しているようだ。いわば街中のドラッグストア的な存在だろうか。


「まさかその工房に愛し子様が足を運ばれるなんて夢にも思いませんでしたが、これも女神様のお導きでしょうか・・・」


「そうだなぁ、私も愛し子様がレオの匂いをさせていなければ、こうして君に再会する事も叶わなかっただろうからね」


 たしかに私はあの時、レオさんを撫でたり抱っこをした匂いをたくさんつけて我が家に戻ったけども・・・ミケネーさんこそ、よくレオさんの匂いを覚えていたものだと感心する。


 それにしたってすごい偶然が重なった感じよね。これも何かのご縁だし、どうにか力になってあげたいけど・・・


「あのね、レオさん。我が家にはポーションとかエリクサーもあるから、それを差し上げることも出来るのだけど・・・でも一時的には治っても、その原因を取り除かなければまた繰り返してしまうかもしれないわ」


「それは確かに。原因不明のままでしたら、その通りでしょう」


 レオさんも視線を落として考え込んでいる。

 脱毛した箇所が一時的にポーションなんかで良くなっても、その後もぶり返しては無意味だものね。なんとか原因を突き止めて排除できれば良いのだけど。その上でポーションなりお薬なりで治せれば一番だ。


 そういえば「毛生え薬」って薬師ギルドにもあるのかしら・・・。もし無くても何かのヒントは貰えたりするかもしれない。

 これは久しぶりに薬師ギルドに顔を出してみるべきかも?




 思い立ったら吉日とばかりに、私はロアとヴィーちゃんを連れてベルナール領にある薬師ギルドにやって来た。ついでにと言ってはなんだけど久しぶりのポーションを納品すべく、けっこうな荷物である。


「それにしたって、久しぶり過ぎやしないか?」


 そう言って私達を迎えてくれたのはこの薬師ギルドの副ギルド長、エランドさんである。ルーカス様の部下といっても実質ここのトップでもある。


 ・・・確かにここに来るのは本当に久しぶりな気がする。


「すみません、ポーションの納品もしばらくぶりですよね・・・」


「まぁそれもあるが・・・元気ならいいが、もうちょっと顔を見せに来い。まぁ、ルーカス様からある程度の近況は聞いていたけどよ。ずいぶん猫妖精族ケット・シーとの交流が増えたんだって?」


「あ、そうなんですよ。大猫妖精族ジャイアント・ケット・シーさん達とか、かわいい翼猫妖精族ウイング・ケット・シーの子猫ちゃん達に、最近は大きい茶トラさんまで・・・」


「え。何だ? そんな色々といるのか?」


 エランドさんは大猫妖精族ジャイアント・ケット・シーや、翼猫妖精族ウイング・ケット・シーという聞きなれない種族名に驚いていた。


「あのね、ぼくのお兄ちゃんやお姉ちゃんたちもいっしょにゃの」


「お、おぅ。そうか、お前さんの家族もか・・・」


 こちらの世界では幻の妖精と言われる猫妖精族ヴィーちゃんに話しかけられて、エランドさんもちょっと面食らっているようだ。

 普通の子猫ちゃんが人間の言葉を話しているように見えるから、ちょっと脳がバグってしまうのは仕方がないね・・・。


 あ、そうだわ。忘れないうちに納品をしてしまおう。


「エランドさん、こちら初級ポーションと中級ポーションです。今回もお鍋ごとですけど構いませんか?」


「おう。いつも通りこちらで瓶に封入するから作業は任せておけ。鍋はどうする?」


「次にここに来るときにでも返していただければ・・・」


 お鍋はポーション用にルーカス様から大きい寸胴鍋を融通してもらっているので余裕がある。最近は我が家も大人数なので自前のお鍋は休む暇もなく使っているので助かっている。


「ところでエランドさん、こちらで扱っているお薬で『毛生え薬』とかってありますか?」


「なんだ、いきなり・・・」


「いえ、ちょっとこちらで扱っているお薬の中にそういうのがあるのか気になって・・・」


 ジト目でエランドさんに見られて、ヴィーちゃんを抱っこしながらもちょっとだけ姿勢を正す私。なんだか今日ここにやって来た本当の目的を見透かされてそうだ


「そうだな『増毛薬』ってぇのがあるな。貴族や平民に関わらず、男だったら皆が欲しがるだろうよ。それこそ目の前にあったら競って金貨を積むだろう。手に入れるために争奪戦になるのは間違いない」


「え、そんなに?」


 ちょっとビックリ。そこまで需要があるんですか・・・? むしろエリクサーの時と変わらないのでは・・・?


「まぁ女だって欲しいやつはいるだろうけど、男の方が切実なんだ・・・」


 エランドさんのジト目が、本当に目が据わっているように見える。妙に凄みが・・・。でもエランドさんにはまだ必要が無さそうに見えますけど・・・あ、あえて深く追及はしませんね?


「・・・という事は、いま薬師ギルドにはお薬は無いという事ですか?」


「そうだな。昔はここでも流通していたが・・・材料が手に入らなくなって、もうかれこれ十年くらいは俺も現物を見てないな」


 そっかぁ。材料が入手しづらいって言う事は、かなり希少な材料を使うのかな・・・・? でもレシピは現存するってこと?


「その『増毛薬』の作り方はどこで調べればわかりますか?」


「そりゃぁ、ここ薬師ギルドには作り方の資料はあるけどよ・・・。まさか、作るのか?」


「もちろん材料があれば作ってみたいですけど・・・まずはその足りない材料を探すところからでしょうね」


 資料を取ってきてやる、とエランドさんはすごい勢いで席を立っていった。

 これはエランドさんもその薬を大いに期待しているって事かな・・・?



 そのエランドさんの個室に残された私たちは、お茶を飲みながら雑談を続ける。


「その材料ってやっぱり『苔』は入っているのかしら」


「手に入りにくい材料というのが苔だとしたら、ありえそうだね。苔は栽培が難しいって聞くから、どこかの群生地で採取するしか無さそうだし」


 確かに普通の薬草と苔では生育条件がかなり違うだろうし、苔は限られた環境でしか育たない難しい植物なのかもしれない。


「あとは他にも希少な素材がいくつも必要なのかもしれないけど」


 確かにロアの推察通りかも。

 ポーションは材料によって効能が違ってくるけど、それは普通のお薬だって同じだ。材料がひとつ足りないだけでお薬として成立しないのだろう。


「じゃぁぼく、そざいをさがすおてつだいをするにゃ!」


 私のお膝の上でヴィーちゃんが、ものすごく張り切ってやる気を見せている。

 あの時一緒にレオさんから話を聞いていて、ヴィーちゃんも毛が無くなっちゃった猫さんに心を痛めていたものね・・・。


「そうね、みんなで探せば材料も遠からず揃うかもしれないわ。迷宮に入れる私たちなら、その珍しい素材にもめぐり会える可能性があるかもしれないし」


 なんだったら精霊様たちに聞いてみようかな。

 あの真珠爺様おじいちゃんだったら色々と知っていそうだし・・・。


 やっぱり困った時は真珠爺様おじいちゃん頼りだなぁと思う私だった。




本日もお読みくださり感謝です。

更新が遅いにも関わらず、ブックマークをありがとうございます。いいね等、いつも大変励みになっております。


今日から2月ですね。受験の皆さまは大変な時期ですが、どうかベストを尽くせますように。体調にも気をつけて参りましょう~(*´ω`)


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