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236.茶トラのレオさん

 

「ミケネーよ、驚いたぞ・・・」


「そうだろう、そうだろう。可愛い我が子らに驚くのも無理はない。自慢の子供たちだからな」


 子煩悩なミケネーは、我が子が可愛くてしょうがないようだ。気持ちはよく分かる。あの子たちは皆が素直でとても可愛らしい。

 だが、そこではない。確かに予想よりも子だくさんで驚いたが。


 そもそも猫妖精族ケット・シーは生涯で子を産む数は少ない。二人も授かれば良い方で、三人だったら間違いなく多産のうちに入るだろう。それが五人とは・・・。


 先ほどひとしきりその猫妖精族ケット・シーの子供たちに質問攻めにあった後、ようやく落ち着いたのが今である。

「おじちゃんはパパのおともだちにゃの?」とか、「おじさまは、どこにすんでるの?」とか、「おじちゃんは木登り得意?」とか、何とも可愛らしい質問ばかりだったが。


 確かに、ここに猫妖精族ケット・シーの子供がこんなにも勢揃いしているとは思っていなかった。それにケット・シーの中でも幻と言われている翼猫妖精族ウイング・ケット・シーの子まで居たのには目を疑った。


 あの子達は草原で迷子だったのを、たまたま遭遇した愛し子様が保護をしたようだが、何とも幸運な子たちである。

 出来ることなら親元に帰してあげたいところだが、さすがに空の魔穴まけつで飛ばされたのであれば、場所の見当がつかぬ。


「それもそうなんだが・・・この場所にも度肝を抜かれた。この家は女神様の御力で満ちている。だが妖精界とも人間界とも少し違うような・・・」


 二重、三重の意味でも驚いたが、愛し子様が実在していたとしても、こうしてお目にかかるまでは正直言うと信じられなかった。だが魔眼を持つ我々妖精族には、普通では見えない女神様の御力が可視化できる。この御方こそが『女神様の愛し子』なのだと本能で感じることができた。そして、私の本能が「これぞ女神様のお導き」と言っているようだった。


「私も詳しいことは知らないが、確かにこの場所はとても不思議な場所でな・・・。ただここは間違いなく女神様に護られている。愛し子様を害するような輩は入ってくる事はおろか、その存在を見る事も叶わぬ場所なのだ。愛し子様からは故郷の家ごと引っ越してきたのだと聞いているが、正直、詳しいことは私にも分からん」


「そう言うが、お主はここに住んでいるのだろう?」


「いや、我々は食客のようなものだ。本来は末息子のヴィオだけがこちらで世話になっていて、ゾフィはともかく私たち家族は基本的には魔法具を使って妖精界の家と行ったり来たりしている。最近は迷宮に行ったりと一緒に行動させてもらう事が多くなって、私たち家族もここに居ることが多いのだが」


「なんと・・・魔法具を設置してもらっているのか?」


「あぁ。愛し子様のお持ちの希少材料を使って、ガーブ殿が魔法具を作ってくれてな・・・」


 そんな話をにゃぁにゃぁと猫語を使ってミケネーと二人で話していたら、どこからともなく芳しい香りが部屋に満ちてきた。


 どうやら隣の部屋で愛し子様が「コーヒー」なる飲み物を淹れてくれているらしい。

 ミケネーも目に見えてソワソワし始めた。そういう自分もしっぽがゆらゆらと落ち着きが無くなっている。


「コーヒーが入りましたので、レオさんもよかったらどうぞ」


 そんな愛し子様の呼びかけに猫妖精族ケット・シーが一斉に隣の部屋に駆け込んだ。もちろんミケネーと私もそれに続く。


「ええと・・・レオさんはコーヒーは初めてよね? ちょっと苦みがあるのでミルクを入れたりすることも出来るけど・・・」


「いえ、私も是非このままいただきたいと思います」


 なにせ子猫たちも嬉しそうに「コーヒー」という飲み物を飲んでいるのだから。


 それは今まで嗅いだことのない、なんとも芳しい馥郁たる香り・・・私は猫舌のくせに我慢ができず、まだ熱いだろう液体に口をつけた。


「・・・っ!!」


 これは今まで味わったことが無いものだ。何と言えばよいのか・・・意識を持って行かれてしまうような・・・心底うっとりする香りだった。


「こ、この飲み物はすばらしいです! 何と言いますか、頭もすっきりしますが同時に心も高揚するようで・・・! あぁ、これは神の飲み物にちがいありません」


「神様の飲み物は大げさですよ。でもほかの猫妖精族ケット・シーの皆さんもお好きだから、きっと気に入ってもらえると思っていました。でもそこまで喜んでもらえるなんて嬉しいわ」


 そう言って愛し子様が「コーヒー」と一緒に、こういった焼き菓子がとても合うのだと勧めてくれたのを一緒にいただく。これも大変美味であり、飲み物がひたすら進んだ。なんだこれ、どっちも旨すぎるんだが?!


「レオ、この飲み物はな、あの『カフィの木』から取れる実から作っているんだぞ」


「カフィの木から?! どうやればこのような飲み物が出来るのだ?」


 私はしばらく興奮状態でこの「コーヒー」なる飲み物と菓子を味わい、またミケネーから詳しい説明を受けたのだった。


 そして私は、この後に遭遇する思わぬ巡り合わせに女神様に感謝を捧げる事になるとは・・・その時は想像もしていなかった。




 ミケネーさんがコーヒーを美味しそうに飲みながら、ネオさん達がカフィの実を収穫して焙煎までしている事までを説明している。

 あと、いかにネオさんが素敵な妻か、そして子供たちがいかに可愛いかを話しに織り交ぜているのを微笑ましく聞きながら、私はおかわり用のコーヒーを準備していた。

 やはりレオさんも猫妖精族ケット・シーさんらしく、コーヒーには目が無いようだからね。


 部屋中がコーヒーの香りに包まれると、そのコーヒーの香りに誘われたかのように、いや、もう我慢ならんといったようにキラキラとした光と共に精霊様がやってきた。


『ふぉっふぉっふぉ。待ちに待った「こーひーたいむ」じゃな』

『やっぱりいいよねぇ、この香り。猫妖精ケット・シーだけでなく、我々も惹きつけてやまないね』

『コホン。お邪魔する・・・。私は今日、ちょっと渡したいものがあってな・・・』


 うん、今日は三精霊様が揃っていらっしゃいましたねぇ。若干、お一人はコーヒー目当てでは無くていらっしゃったようだけども・・・。


 いきなり三精霊様の登場にレオさんが固まっているけど・・・大丈夫かな? あ、よかった。無事に再起動したみたい。



「カフィの精霊様、私に渡したいものって何ですか?」


 もしやそれは、前に真珠爺様おじいちゃんが予告をしていた「何かの植物」のことかな?


『うむ。これなのだが・・・』


 手渡された物はやはり植物のようで・・・


「ん? これってもしや・・・」


 私が【鑑定】をしてみると、それは苔の一種と出た。


『カフィの木が生えている近くの岩場にあった苔だ。そなた、最近やたら「苔」に縁があるだろう。これもその近縁種かと思ってな』


「ええ、どうやらそのようですね。しかもこの苔はどうやら『ネコケケゴケ』って名前のようです・・・」


 なんだかすごくモフみが強そうな苔の名前だ。お茶にして飲んだら毛深くなっちゃいそうなネーミングだね。

 鑑定結果にも【ネコケケゴケ:猫の被毛のように滑らかな細長い苔】とあるから、間違いなくネコちゃんシリーズの一種だろう。


【詳細鑑定】をした結果、【ネコケケゴケ:お茶にすると美しく豊かな毛並みが手に入る】とあった。

 毛並み・・・被毛だけじゃなく「毛並み」というならば、私の髪の毛にも効果があるだろうか。お茶にするのがちょっと楽しみである。


「また珍しい物をありがとうございます。この苔もお茶にしてみたら効能が高い物になりそうだし、ほかの苔と混ぜてみたら色々と面白い物が出来そうです」


 私が鑑定した内容をお知らせすると、カフィの精霊様も満足そうに「良い茶ができるといいな」と頷いていた。


「ひょっとしたら『毛生え薬』なんていうのも出来ちゃうかもしれませんね」・・・などと思わず独り言ちてしまう。


 いや、そんなのが出来たら喉から手が出るほど欲しがる人が出てきそうだ。

 こちらの世界ではどうだかわからないけど、私がかつて暮らしていた所では、なかなかの需要があったように思う。コマーシャルでもよくやってたしね・・・。

 男女に関係なく、また老いも若きも髪の悩みは多かったものだ。


 そんな私たちの会話が耳に入ったのか、テーブルを挟んだ場所にいるレオさんが「毛が生える・・・?」と敏感に反応していた。


 レオさんも何かお悩みでもあるのだろうか。

 食い入るようにこちらを凝視しているお顔がワナワナと震えているようだ。

 一見フレーメン反応のようにも見えるけど、目をカッと開いて、先ほどまでのにこやかなお顔とはぜんぜん違う様子にちょっと驚く。


 そういえば、レオさんが妖精界ではなく人間界のエステバン工房で猫として飼われているフリをしていた理由もまだお聞きできていなかった。

 この苔が関係あるのかは分からないけど、二杯目のコーヒーを飲みながら、そのあたりのお話しを聞いてみようかしら。


 まずは三精霊様にもコーヒーをお淹れしなければと私は追加のコーヒー豆を新しく取り出すのだった。




久しぶりの投稿です。なかなか更新できずすみません。

それにも関わらず、気長にお待ちくださった方には感謝です<(_ _*)>


お正月明けからどうにも調子が戻らず、長期休暇は嬉しいけれど後が大変だなぁって毎回思います。皆さんは通常モードに戻れましたでしょうか。

私も2026年の目標は、がんばって更新ペースをもう少し一定にしたいです・・・。


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